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夜のピザ屋。
閉店後。
店の電気は半分だけ。
カウンターに二人。
エリオットはフォークでケーキを食べている。
にこにこ。
ぱく
チャンスは椅子にもたれている。
指の上でコインを転がしている。
カラン
エリオットが言う。
「チャンス」
「ん」
「またコイン」
チャンスは笑う。
「俺はこれで決める」
エリオットはケーキを飲み込む。
「何でも?」
チャンスが言う。
「大体」
エリオットは楽しそうに聞く。
「例えば?」
チャンスはコインを弾く。
カラン
「仕事」
「逃げるか」
「残るか」
「賭けるか」
パシッ
コインを受ける。
エリオットが身を乗り出す。
「じゃあさ」
チャンス。
「ん?」
エリオットは少し笑う。
そして――
ネクタイ。
ぐい
チャンスが前に引かれる。
「……」
チャンスが言う。
「癖」
エリオットはにこにこ。
「コイントス」
チャンスが聞く。
「何を」
エリオットが言う。
「キスするか」
チャンス。
沈黙。
店の時計の音。
カチ…カチ…
チャンスがゆっくり言う。
「……は?」
エリオットは普通の顔。
「コイントス」
チャンスが笑う。
「お前」
「ん?」
「とんでもない賭けするな」
エリオットはフォークを置く。
「面白い」
チャンスはコインを見る。
少し黙る。
それから言う。
「表」
エリオットが聞く。
「何?」
チャンスが答える。
「キスする」
エリオットの目が少し丸くなる。
「裏は?」
チャンスは肩をすくめる。
「何もしない」
エリオットは少し笑う。
「いいよ」
チャンスが聞く。
「後悔すんなよ」
エリオット。
にこっと。
「しない」
チャンスはコインを親指に乗せる。
店の空気が少し静かになる。
カラン
コインが空に上がる。
回る。
金髪が揺れる。
エリオットの目が追う。
パシッ
チャンスが手で受ける。
数秒。
沈黙。
エリオットが聞く。
「どっち」
チャンスはゆっくり手を開く。
コイン。
表
エリオット。
少し目を丸くする。
それから笑う。
「出た」
チャンスは少し苦笑する。
「出たな」
エリオットが近づく。
そして。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが前に引かれる。
顔が近い。
エリオットはにこにこ。
「ルール」
チャンスが言う。
「分かってる」
数秒。
静かな店。
チャンスが小さく笑う。
「コイントスってのはな」
エリオット。
「うん」
チャンス。
「時々」
少し近づく。
「後悔する」
エリオットが笑う。
「しないよ」
そして――
距離がなくなる。
短いキス。
静かな店。
数秒。
離れる。
エリオット。
少し目を丸くする。
それから。
にこっと笑う。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが言う。
「やめろ」
エリオット。
楽しそう。
「もう一回コイントスする?」
チャンスはコインを見せる。
「二回目は」
エリオット。
「?」
チャンス。
少し笑う。
「危険だぞ」
エリオットは嬉しそうだった。