今日は少し不快に感じるような蒸し暑い日だった。
園庭で子ども達がみず遊びをしてる間も、私はタオルで吹き出す首の汗を拭った。
「この水鉄砲私のだよ~」
「順番だよ、あみちゃん。次はたいちゃんに貸してあげないと」
真斗君が、まるで保育士の先生みたいに言う。
「え~まだやりたい」
「じゃあ、あと1分だよ。そしたらたいちゃんに交代」
「わかった~」
可愛いやり取り、暑くても元気な子ども達を見てるとこっちまで癒される。
「今日はビールだね、絶対ビール」
保育園での仕事もそろそろ終わりに近づいた頃、仕事帰りに弥生が飲みにいこうって誘ってくれた。
たまには息抜きしなきゃって。
お父さんがいつでも雪都を連れてきなさいって言ってくれてたし、雪都もおじいちゃんに会いたがってたから……今日は甘えようかな。
いろいろ話が進み、結局、雪都をお父さんに預け、弥生と理久先生と3人で久しぶりにミニ飲み会をすることになった。
「ここのお店、すごくいいね」
「でしょ? 私の友達が働いてるから個室にしてもらえたし~」
結構広め、和風テイストの掘りごたつ席。
ゆっくりと落ち着いて話ができそうな雰囲気だ。
「僕も誘ってもらえて嬉しいです」
「当たり前じゃない~理久先生がいないとね。女だけだと寂しいし。いないよりはマシでしょ?」
「それ、ひどくないですか?」
みんなで笑う。
早速、ビールで乾杯して乾いた喉を潤した。
「あ~美味しい! 疲れが一気に吹っ飛ぶ~」
「うん、本当に美味しい。子ども達もいっぱい汗かいてたし暑かっただろうね」
「だろうね。早く涼しくなんないかな〜って、ちょっと理久先生! もう半分以上空けちゃってる! そんなに喉乾いてたの?」
「あ、まあ。久しぶりにこうしてみんなで飲めて嬉しくてつい」
「ねえねえ、理久先生はさ、世間的にはイケメンと呼ばれる部類に入るみたいだし、モデルとか俳優とかスカウトとかなかったの~? ありそうだけど」
「うん、そうだよね。理久先生ならモデルでも俳優さんでも人気出ると思う」
「彩葉先生まで止めてください。僕はそういう華々しい世界には向かないですから。まあ、スカウトはありましたけど……」
理久先生がちょっと恥ずかしそうに言った。
「嘘! 本当に?! えー、マジですごいんだけど」
弥生の驚き方って、子どもみたいで可愛い。
いつもこんな感じで、ものすごく喜怒哀楽がハッキリしてる人なんだと思う。
ちょっと……うらやましい。
「たいしたことないですよ。べつに」
「聞きたい聞きたい! 今までどんなスカウトがあった?」
弥生は、向かい側に座る理久先生の目の前まで体を乗り出した。
「ちょっ、ちょっと近いです。えと、たぶんアイドル系が7回くらいと俳優が5回だったかな? あとモデルが……何回かわからないです」
「えー!」
2人で口を揃えて叫んだ。
正直、かなりの衝撃。
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