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軍団長で人魚パロです。色々詰め込みすぎました。
最近海へ散歩している。特に夜に歩くのが静かで心地良い。人もいないし。
海から音が聞こえた。ただの強い波だと思い、無視していたが、水滴が頬に付きそちらを見た。
そしたらどうだ。そこには青い鱗を持った人魚がいた。
深い海を思わせる瞳と髪が月の光で照らされ美しい。
「人魚….?」
その人魚は首を傾げている。
私達の国では、人魚を神の使いとして崇め称えている。
昔は今よりも人魚がいたそうで、人々は飢餓のときには人魚を食べて飢えをしのんでいた。
逆に人魚は与えてくれる存在なのだ。
だから人魚は人間に要求を出す。利害関係だ。
私達はそれを献上しなければいけない。
そうしないと嵐がやってきては国を荒らすと言われている。
近頃は人魚からの要求はなく、ご老人たちは怯えている。重い要求が来ると身構えている。
今も何十年に一度、人魚を食べる。
人魚祭という。
人魚を食べるとその年は健康に生きられ、お金が入
るという言い伝えがある。だから国民みんなが人魚
の肉やら粉末にした鱗などを食べる。それはまるで
久しぶりに餌を得た鯉のぼりようで少々薄気味悪
い。だから私はその行事には参加しないことにして
いる。
キュキュと甲高い声が耳に入る。青い瞳でこちらをこちらを見つめる。
行事のことを思い出し、少し気持ち悪くなる。一
度、国民に食べられる人魚と目があった。助けてと
言っているような、見殺したような罪悪感が生ま
れ、それ以来目を合わせることも怖くなった。
まわりに誰もいないことを確認する。
「ごめんなさい、人魚さん。何もあげられないんです。」
そう弁明し、その場を去ろうとする。人魚は海に潜
った。わかってくれたかと安心したのもつかの間、
人魚は魚を咥え私のもとにやってきた。
キュイキュイとまた甲高い声を出す。
そういえば、こんなおとぎ話があった。
人魚は気に入った相手に魚や貝殻、真珠などを取ってくると。つまり私はこの人魚に気に入られたということだ。
「まっじか….。」
ありがとうというより、恐ろしいが勝った。
人魚は好きな相手に執着するし、逃さないと聞く。人魚と結婚した相手もいたが、自分はそこまで尽くせないと思う。
その魚は受け取り、表面上は笑った。
それで人魚は満足したように海に帰っていった。
持っていた魚は死んでいるようだった。
海に返す。これがあの人魚に渡っても渡らなくてもいい。
明夜も私は海に言った。
あの人魚も気がかりだが、月がよく映え、美しかったからだ。恋人と来たいと思っている。そのためならば、下見はしなければ。
キュキュと昨日と同じ声が聞こえた。
背中がぞわっとしてしまった。
海を見ると、昨日と同じ深海の瞳。
砂浜に人魚は這い上がってきた。
人魚は苦しくないのかと思いながらも見守っていた。
私の方にやってきては、足の方に座った。
私も立っているのは無礼だと思い、座る。
人魚は下を見ては、砂いじりをしている。
人魚は何やら文字を書いていた。
拙く書かれていた文字はこうだった。
うつ
「うつ?」
何がうつなのか考えていた。人魚は自分を指差す。なるほど、自分はうつだと言っているのか。
私も名乗らなくてはと思い、砂浜に名前を書く。
「○○っていいます。○○。」
うつはつっかえながらも私の名前を言う。
「○、○○?」
人魚はつっかえた部分を補うように笑いながら言った。
それに可愛らしさを覚えたが、可愛らしさを覚えた自分に困惑した。
自分は人魚が嫌いなはずなのに、なんでかわいいとおもった?
…いや、どうでもいいかそんなこと。
明夜、恋人とその海に来た。
「どう?結構綺麗だよね。こっちにさ、もっと綺麗に月が見える場所があるんだよ。」
恋人をリードしながら話す。
うつとの初々しい会話を頭がよぎる。
何故今なのか、自分でも分からず頭を振る。
「月、綺麗だね。…君には及ばないけど。」
甘い言葉が私に降り注ぐ。
「ありがとう。嬉しい。」
本音を話す。恋人は頭を撫でてくれた。その日のデートは完璧だったと思う。
次の日、また夜に海に訪れた。昨日のことをうつに話したかった。
いや、うつにあいたかった。
予想通り、うつは来た。
「うつ、昨日ね恋人と一緒にここに来たんだ。月がいつもより綺麗でめっちゃ楽しかったんだよ。」
「へえ、そっか。」
彼はこんなにもスラスラと話す。
「うつ!?話すの上手になったんだね?すごい。」
「まあ、色々あってな。ありがとな。」
「なあ、俺な、人魚祭に出てまうかもしれん。」
「えっ。…それはなんとかして止められないの?」
うつがいなくなるのは嫌だ。みんなに食べられてしまううつを想像し、嫌悪感が走る。
うつがいなくなるならわたしは…。
私は?何を言いかけた?
「止められへんねん。だから、お願い聞いてくれへん?」
「…いいよ。なんでもきく。」
口が勝手に動く。何で。
「じゃあ、海に来て。」
行きたくない。
海に行くというのは死ぬということだ。だが、体が動かない。何で、なんで。
「いいよ。」
うつに手を取られ、海に入る。
少し冷たい。
嫌だ、私は生きたい。
海の中に入る。
うつに抱きしめられ、深い海へと潜る。
最後に聞こえたのは、複数人の人魚の歌声と、彼の甘い声だった。
「月、綺麗やな○○ちゃん。」
「死んでも離さんから。」