テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#不定期
れな ♪
50
42
柚華-유화@受験生低浮上
101
皆は主の車が停めてある駐車場に向かって行った。 主は運転席に乗り込んだのだが、誰が主の隣に座るのか執事達は争っていた。
結局、ボスキが助手席に乗る事になりアモンとハウレス、フェネスは後部座席に乗る事になった。
「主様は、 意外と格好良いものにお乗りになるんですね!これは主様の世界では、何というものなんですか?」
フェネスは興味津々に車の事を聞いてきた。
「これは車って言うんだよ!皆シートベルトしてね。アモン、ハウレスとフェネスに教えてあげて。 」
アモンは、ハウレスとフェネスにどうするのか教えてシートベルトを締める事が出来たのだがボスキが手間取っていたので、主はボスキの方に体をやり体を密着させるようなかたちを取った。
ボスキの顔の目の前に主の顔が来たり、主の髪の香りがボスキの鼻腔をくすぐりボスキは堪らなく愛おしく思えて抱きしめたい衝動に駆られてしまっていた。
(○○ってすげぇ良い香りがするんだな…)
ボスキは少しだけ顔を赤くしたが、主が車を運転し始めると外の景色を見てやり過ごした。他の執事達も外の景色を見たりして主の世界を楽しんだ。
家具屋さんに着き、空いている駐車場に停めた。そして、お店の中に入りボスキは沢山の家具やインテリアに興味津々だった。
ハウレスもフェネスも、屋敷での生活に役立ちそうな物が探せるかもと思いボスキに続いて色々と見始めた。
アモンは主の側から離れる事はなく、ずっと主の側に居て一緒にソファーに座ったりしていた。
そんな2人の関係をボスキ、ハウレス、フェネスは見ていた。今までとは何処か違うような雰囲気に、3人は心の中に黒いモヤがかかったような感じがしたのだった。そんな中、 ボスキは主に話し掛けた。
「主様。ちょっと良いか?俺らはこっちの世界の金は持ってないから主様に頼らなきゃなんねぇ。大丈夫か?」
「大丈夫だよ!何か良さそうなのあった?後、こっちに居る時は名前で呼んでくれた方が助かるかも…」
主は周りの目を気にして、執事達に名前で呼んでもらうように頼んだ。ハウレスとフェネスは戸惑いながらも“○○さん”と呼んだ。すると主は笑顔で答えた。
「うん♪」
ハウレスとフェネスは、顔を赤らめながら胸の高鳴りを抑えた。すると、ボスキは主の前に花瓶を差し出した。
「じゃぁ○○、これはどうしたら良い?」
主はボスキが持っていた花瓶を受け取り、会計に持って行った。主がカードを取り出し、会計を済ませようとしている時、少し離れた場所に居る執事達に視線が集まっているのを察した。
『あの人達、皆格好良い〜♡』
『身長高っ!モデルさんかな?』
『仮面付けてる人すごい私の好み♡』
『小悪魔っぽい感じの子が私は好み♡』
『逆ナンしちゃう?』
『え〜…でも、誰か待ってるっぽいよ?』
主は執事達が格好良い、という事を改めて実感した。そして、自身には何も出来ない、何もないというコンプレックスがあるため劣等感を少しだけ抱いた。
主が少ししょんぼりしているのを察したのかアモンは、主の元に駆け寄って来た。
「どうしたんすか?買えたなら帰りましょ!帰るのが遅くなっちゃうっすよ?…気にする事ないっす。俺はいつだって、◯◯さんが好きなんすから。」
アモンは主が持っている花瓶を持つと、主の手を引いて歩き出す。その時、主の心の傷が少しだけ癒えたような感覚になり、主はアモンの手を握り返した。
アモンは主が握り返して来た事が嬉しくて、ふと笑みがこぼれた。他の執事達には何かあったとしか思えないくらいに甘い空気感だった。
†††
帰りの車では、ハウレスが助手席に乗る事になった。またハウレスもシートベルトを締めようとしていたのだが、勢いよく引っ張ったりしてなかなか締める事が出来ずに居た。
主はくすりと笑い、ハウレスの方に体を寄せシートベルトを締めてあげた。その時も、ボスキの時と同じようにハウレスの顔の近くに主の顔があり、髪の香りがハウレスの鼻腔をくすぐりハウレスは顔を赤くした。
「あ、主様のお手を煩わせてしまい申し訳ございません。なかなか慣れないですね…」
「良いよ。じゃぁ帰ろっか!」
そう言って主は車を運転しだした。そして、しばらくしてボスキが口を開いた。
「…アモン。説明してもらおうか。」
アモンは何を聞かれているのかすぐに分かったが、主が居る手前下手な事は言えず何の事っすか?と誤魔化すがそうはいかなかった。
「○○とアモン、なんかあっただろ?」
ボスキがそう言うと主はハンドルを変にきりそうになり、運転に集中しようと頑張った。そして、ちょうど信号待ちの時に主は口を開いた。
「…ボスキ。説明は後でも良いかな?」
ボスキも主にそう言われると何も言えなくなり、主の部屋に着くまでは皆黙ったままで空気感が耐えられなくなり、主は音楽をかけ始めた。
クラシック音楽で主の好きな曲だった。フェネスはまた興味津々にオーディオ関係の事を聞いたりして、その場はなんとか乗り切る事が出来た。
†††
主の部屋に着いた後─
「…アモン。多分、もう無理だよ。誤魔化し切れない…皆に言わないと…っ私…」
主は自身のトラウマも一緒に思い出して、声が上手く出なくなり息切れが激しくなってきて胸を抱えその場に座り込んでしまった。
アモンはすぐに主の背中を摩り、ゆっくり呼吸をするように言ったが主の頭の中ではトラウマに支配されていた。
父親の顔が浮かんでくる。怖い。言う事を聞かないと。感情は殺さなきゃ。そして主の頭の中で父親の今までの言動が響いてきて、心拍数が上がり耳を塞ぎ込んでしまった。
『お前には医者の道しかないだろ。』
『医学部以外は学費を出さない。』
『口答えをするな!1人前の医者にでもなったつもりか!…お前はまだまだ半人前にもなってない。』
『感情は捨てろとずっと言ってきてるだろ。この出来損ないが…』
『…お前はこんな事も出来ないのか?』
『本当に何も出来ない奴だな…』
『ちっ…俺の顔に泥を塗る気か!』
『外科医じゃないと許さん!』
『俺がお前にどれだけの金を使ったと思う?それを無駄にする気か?…お前は俺の言う事を聞いていれば良いんだ。』
『何やってんだ?…そんな事したって無意味だ!どうしてもと言うなら、俺の腕を越えてみせろ。出来損ないが口答えをするな。』
「…いや…もう止めて…」
『何も出来ない出来損ないが!』
「○○さん!!」
何度もアモンは主を呼んでも反応せずに居たが、主の耳にやっとアモンの声が届き呼吸もままならない状態で、アモンの方を向いた。
「俺の事真っ直ぐ見て下さいっす!…大丈夫、大丈夫っすよ。○○さんの事を傷付ける人なんて居ないっす。ゆっくり落ち着いて呼吸するっすよ。」
アモンが主の両肩に手を乗せて落ち着くように説得していると、主は涙をボロボロと溢しながら、主は呼吸を整え始めた。
その光景を見た他の執事達は、驚きが隠せずに居た。主が取り乱して居る所など見た事がなかったため当然の事だった。
ボスキはただ知りたかっただけだったが、これ以上は聞く気にもならなかった。そして後悔の念に苛まれ、 主の目の前に行き、主の前でしゃがみ込んだ。
「…すまねぇ。俺が余計な事を聞いたせいだな。もう聞かねぇから安心してくれ。…許してくれるか?」
主はボスキの方に顔を向けた。
「…うん。ボスキは、何も悪くない。私が…全部悪い…から。私が…出来損ないだから、何も出来ない…から。私が…」
主はまたパニックを起こしそうになっている時に、居ても立ってもいられなくなってアモンは主を抱き締めた。
「そんな事ないっすよ!…◯◯さんは、俺ら執事達のために、命をはってくれてるじゃないっすか?なかなか出来る事じゃぁないっす。大丈夫っすよ。俺が守るって言ったじゃないっすか。」
主はもう、心が限界にまで擦り減ってしまっていた。高い場所にある細い平均台を渡らなきゃいけないような感覚になり、これ以上、何も出来なくなってしまうほどに…
「…アモン。っ私、もうどうしたら良いのか分からないよ…私は…何をどう頑張れば良いの?何をしたら…」
どうしたら主の心の傷を癒やしてあげられるだろうか、どうしたら守れるのだろうかと思案していたが、アモンは咄嗟に主にキスをした。
「…んっ。」
主がそっとゆっくりと目を閉じると目から涙がこぼれ落ち、アモンとの触れ合うだけのキスで少しだけ主の枯れた心の傷に染み渡るような感覚になった。
執事達は驚きを露わにし、余計に状況把握が難しくなり、側に居たボスキも主とアモンとのキスに何が起きているのか分からない状態になり引き離す事も出来なかった。
コメント
1件
うわあ、第6話、めっちゃ胸にきた……。主がトラウマのフラッシュバックでパニックになるところ、描写がリアルで読んでてこっちまで息が苦しくなった。アモンが咄嗟にキスで落ち着かせようとするの、アリなのかって一瞬戸惑ったけど、あの場面では「触れるだけのキス」って行為が主の心の傷に染み渡る感覚、すごく理解できたよ。他の執事たちの困惑と、ボスキが「もう聞かねぇ」と引いたのもキャラに合ってる。この伏線、次どうなるんだろう?