「ごめんね、恵ちゃん。……今日はもうやめたほうがいい?」
尋ねられ、私は俯いたまま黙る。
自分の都合でエッチを途中でやめて、ぶち壊しにしたまま寝るなんてできない。
だから、小さく首を横に振った。
「ありがとう。……じゃあ、恵ちゃんのしたいやり方でエッチをしようか」
提案され、私はスリップが暑くなってモソモソと脱ぎ始め、すぐ気づいた涼さんは、それを手伝ってくれた。
「……前からがいい。……後ろからは……、嫌じゃないけど恥ずかしい」
「ん、分かった」
微笑んだ涼さんはチュッと私にキスをし、頭を撫でてくれる。
そして私を優しく押し倒し、甘く笑って尋ねてきた。
「どうされるのが好き? 恵ちゃんの好きな事を全部する、スペシャルコースだよ」
尋ねられ、セックスにおいて自分の〝好き〟を言うなんて恥ずかしいけれど、おずおずと望みを口にした。
「……優しいキスして、『可愛い』って言われるの……、好き」
「うん、恵ちゃんは可愛いから、何度でも言っちゃうね」
涼さんは微笑み、ちゅ、ちゅ、と顔にキスの雨を降らせてくる。
「胸を触られるのは?」
彼は尋ねながらやわやわと乳房を揉み始め、私の反応を窺ってくる。
「……強くしないなら好き」
「うん、分かった。舐めるのは?」
そう言って、涼さんは乳房にチュッチュッとキスをし、胸の先端にしゃぶりついてきた。
「ん……っ、ん……。なんか……、変な気持ちになるけど、……嫌じゃない」
「ん、好きになっていけたらいいね。可愛いよ、恵ちゃんの胸」
本当は「可愛い」と言われるのも恥ずかしいけれど、…………恥ずかしいけど、多分私は嬉しいんだと思う。
「……前と同じ事を言ってもいい?」
「何回でも聞くよ」
涼さんは私の頭を撫でては、色んなところにキスをしてくる。
その優しい唇の感触にフワフワとした心地よさを得ながら、私はポーッとしつつ話していく。
「……私、自分の事を『可愛い』なんて思った事がなくて。……でも、涼さんがこうやって『可愛い』って繰り返してくれると、少なくとも涼さんにとっては『可愛い』でいいのかな? って思えてきて。……まだ自分を肯定できずにいるけど、まだ、全然照れちゃうけど、……少しずつ向き合っていくから、……我慢強く付き合ってもらえたら……って思います」
「分かってるよ。大丈夫。俺はこう見えて根気強いほうだから」
涼さんは優しく目を細め、「可愛いね」と私の頭を撫でてくる。
「……子供でごめんなさい。……きっと、涼さんが今まで付き合った女性なら、どんなプレイをしても、どんな体位でも楽しめたと思うのに……。私、ちょっと慣れない事があったら、すぐ心が一杯一杯になって、パンクしそうで……。心のキャパが狭くて嫌になる」
謝ると、涼さんは窘めるようにキスをしてきた。
「そこで他の人と比べる必要はないし、恵ちゃんは恵ちゃんでいいんだよ。……俺はそのままの君が好きで、他の人と同じようになってほしいなんて、一ミリも思っていない」
彼は私の髪を撫でつけ、優しいけれど真剣な目で見つめてくる。
「……未熟でごめんなさい」
「最初から完璧な人なんていないよ。……考えてもみて? 男に恐怖心があって処女だった恵ちゃんが、いきなりセックスして、最初からガンガン感じられてどんな事をされても悦べると思う? そんな人いたら、逆に俺のほうがびっくりしちゃうけど」
「……っ、確かに」
プッ、と噴き出すと、涼さんも笑う。
「むしろ、羞恥心やセックスへの抵抗、多少の恐怖心があるほうが、健全な証拠だと思うよ。だから、恵ちゃんは今のままで大丈夫。俺はまったく負担に思っていないから、少しずつ一緒に慣れていこう? 俺も、上級者向けっぽい事はしないように気をつける」
「……涼さんはもうすでに免許皆伝してるのに、初心者に合わせさせてしまって、すみません……」
「……あのね、人を百人斬りのヤリチンみたいに言うの、やめてくれないかな……。恵ちゃんが思っているほど、大勢とは付き合ってないよ」
「……こんなに格好いいのに……」
呟くと、涼さんは横を向いてニヤつく。
「……ホント恵ちゃんって特別な子だよね。俺、女性にそう言われて喜んだ事なんてないのに、恵ちゃんに言われると、アホみたいにニヤついちゃう」
言ったあと、涼さんはキラキラとした目で尋ねてきた。
「俺、格好いい? 惚れる?」
「んっ、ん~~~~……。…………かっ、……格好いいですよ……。顔面偏差値でオックスフォード入れます」
「あはは!」
涼さんは明るく笑い、ギューッと私を抱き締めてきた。
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