不破side
幼い頃
俺たち家族は幸せだった
父、母、俺の3人で仲睦まじく暮らしていた
あの日までは
[ねぇーねぇーぱぱー!]
「ん?どうしたんだ、湊」
[ままがねーさっきかっこいい人と
あそこのお城入っていったのー!]
[だから俺もはいりたーい!]
「…湊、それは本当か、?」
[?うん!]
「そうかぁ゛」
[?]
今考えればわかる
あの大きく綺麗なお城はラブホテルで
母さんは浮気をしていたってことに
でも、当時の俺は馬鹿だから
父さんに言ってしまった
家族を破壊してしまった
何もかもを、壊したんだ
その日から父さんの様子が変わった
「痛い!あなたやめて!」
「やめてじゃねぇよぉ゛この浮気女!」
「痛い!痛い」
母さんに暴力を振るうようになった
当時小学生だった俺には
目の前のショッキングな出来事を
ただ黙って見ていることしかできなかった
数ヶ月後
母さんは家を出ていった
「湊…ごめん、ごめんね」
母さんは出て行く前泣きながら俺に何度も謝った
違うよ、母さん。
謝らなくていいんだよ
俺のせいなんだよ
俺が壊しちゃったんだ
母さんが出ていった後
容姿が母さんそっくりになっていく俺に
苛立ちを覚えて、俺にも暴力を振るうようになった
始めは顔に切り傷とか
目立つとこばっかだったけど
一回学校に疑惑が立ってからは
お腹とか目立たないところをするようになったっけ
ずっと、痛くて苦しくて
それでもこれは俺の自業自得で
どこにも行けなくて
ここにいるしかなかった
高校になって
初めてカフェに行こうなんて
声をかけられた。
話したこともない男の子だったから
びっくりしたし警戒したけど
必死になっている姿がなんだか可愛らしくて
話してみたいって思った。
“午後6時には家に帰ってご飯をつくる”
これが父さんが決めたきまりだった
絶対に守らなきゃ行けなかった
それでも俺は
この日初めて父さんの決まり事を破った
でも、生憎この日は特に父さんの機嫌が悪い日だったみたいで
家に入った瞬間お風呂場に引き摺り込まれて
水に何度も顔を沈められた
調子に乗るな
身分をわきまえろって
その後はリビングでずっと殴られ、蹴られの繰り返し。
タバコを押し付けられたり、カッターで切られたりもしたな
無能で頭のないクズで
約束もろくに守れないガキで
醜くてで汚い俺は
学校に行っちゃいけないって
ずっと狭い部屋に閉じ込められていた
ただ苦痛だった
でも、自業自得だ
俺が約束を破っちゃったから
余計なことをしちゃったから
被害者ぶるなんて、
そんなこと…
俺には許可されてない
だから、
三枝くん
俺のこと何も聞かないで
心配なんてしないで
お願い
『 不破くん、休んでいた時何があったのか教えて』
なにもないよ、
なんにも
『 もしかしてお父さんが何か関係してるの?』
違うよ。別になにも、
[三枝くん、]
ちょっと風邪をひいていただけ、
そう。そう言うことにしておこう
[たす…け、て]