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#2 「逃避行」
・注意は1話をご覧下さい
・青さんは天神爛漫夢宴をイメージしてみて下さい!!
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「俺だけの…天神様?」
…天神様って、こんな……
「こんな可愛いの???」
「え、俺可愛いんや」
そっかぁ、俺って可愛いんやなぁ、と言いケラケラと笑う天神様とやら。
いきなり目の前に現れたと思ったら神様??誰がそんなもん信じるんだよ。
「あの、君さ天神様って知ってる?」
「知ってるも何も、俺だもん」
「いやいや…俺の知ってる天神様ってのは、菅原道真で、学問の神様で……」
「んー、それは違うなぁ」
「俺そんな名前やなくていふって言うもん」
新情報、この猫耳はいふと言うらしい。
「やからまろって呼んでな!」
「……何がどうしてそうなった…?」
いふから何故にまろ??1文字も合ってないし、なんなら母音さえもあってない。
取り敢えず呼ぶことにしてみる。
「…まろね、分かった」
「俺はないこ、この通り普通の人間」
「そうやろなぁ」
「んで、ご主人はどうしてこんなとこに来たん?」
「ご主人ってのは…?」
「さっきも言ったやん、『君だけの天神様』って、俺のご主人はないこって決まっとるんよ」
「そうなんだ、…どうしてここに来たって言われても……」
ただ放心状態で歩き進めたらこんな所に着いてしまったし、そもそもこんな場所、初めて来たから理由なんて分からないし。
「あ、聞き方悪かったか」
「ご主人…ないこは、何を諦めてきたん?」
「…何を諦めてきた?」
言い直されたものの、意味がよく分からない。諦める?俺が諦めたもの、なんて聞かれてもぱっと思いつかないのだが…。
「…ここはな、」
神社に視線を変え、目を細めたと思えばまた、まろは口を開いた。
「ないこが生きていく中で窮地に立たされたり、大切なものを捨てたり、諦めてしまった時に来るところなんよ」
「1人じゃ、人間だけじゃ、どうしようも出来ない時に現れるようになっとる。それこそ、無意識的にな」
だから俺はいつの間にかここに辿り着いてしまっていたのか。知らず知らずのうちに。
「人間一人一人についてるのが、俺ら天神様って呼ばれる存在で、普通は目にせんまま一生を終えるはずなんよ」
「俺が見てしまってるのは普通じゃないってこと…?」
「そう、大抵の選択はその人の人生やからあんまり関わらんようになっとるんやけど…」
「ないこさ…」
改まってこちらを真剣に見てくるまろ。
「…生きるの…というか全てを諦めようとした?」
「…」
「無理に言わんでもええよ、」
「それに死ぬことが悪いって訳でもないし、」
「でも、…願ったやろ?」
「『幸せになりたい』って。」
「…それは、…うん、」
「なら、俺が幸せにしたるから」
そう言って優しく両腕で頬を包んでくる。
頭を撫でて『大丈夫だよ』って、…いつの間にか視界が歪んできた。
「…んふ、よしよーし、」
「…ぅ、…びぅ…っ」
「こんな…っ、優しくされたの…ッ、久しぶりだから……だからっ…」
「そーやね、ずーっと見てたから分かるよ」
ぎゅっ、とこんな歳して抱きつくなんて可笑しいかもしれないが、泣き止むまで、…泣き止んでもまろはそっと抱きしめてくれた。
「ないこはさ、今までの環境がいややったんやろ?」
「…たぶん、」
「…ならさ、……俺と逃避行せん?」
「逃避行…」
「嫌なとこから逃げ出して、自由に生きてこってこと、」
「勿論、今までの当たり前が変わってしまうけど…」
「でも、ここから幸せ探しをするのも悪くないと思うんよ」
「……」
出会って数時間だけど、何となく分かる。こいつは俺のことをずっと見守ってくれてたんだ。だから、俺が決められて動くのが好きじゃないことも知ってる。俺に選択を選ばせてくれてる。
「…いいよ、逃避行しよう」
「まろとなら、何処までも行けそうだから」
「…ふふ、それなら行こっか」
幸せ探しの旅に___。
差し伸べられた俺より一回り大きなその手を強く握り返した。
#3「二人きり」
コメント
15件
1話〜2話見ました!! ものすごく刺さりました(泣) 青さん優しすぎますね...こんなイケメソに会ったらやばいよ(?) 菅原道真...なんか聞いたこと...小学校の近くにあったような...
この連載超刺さるんだけど😭😭 最初に書いてあったからそうかもしれないけど多分、天真爛漫夢宴の曲パロみたいな感じだよね…?所々天真爛漫夢宴ぽいなってところがあって好き👍🏻👍🏻