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3 - ♯3「二人きり」

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2025年08月09日

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#3「二人きり」




・青桃


・エセ関西弁


・御本人様とは関係ありません


今回は青さん視点からスタートです






ーーーーー





「…ねぇ、どこに向かってるの?」


「んー?幸せ探しの旅に向かってるんやないの?」


「疑問形で返されても…」


ご主人__ないこが願った『幸せになりたい』という願いを叶えるべく、俺達は歩みを進めている_。


「…これさ、向かってるじゃなくて、歩き回ってるだけだよね?」


「……そう?」


「そんな目逸らさなくても分かるわ!!」


全くもう…、なんて呟きながらも小動物かのように俺に付いてくるないこ。


たしかに歩いているのは神社の周辺だ。周りにあるのは大木ばかり。


「んー…そろそろ場所変わった方がいいかなあ」

「そうしてよ、是非とも」


戻ってこようと思えば、ここは何時だって帰ってこれるし、本当に旅に出るのも悪くはない。


と言っても、いつの間にか空が薄暗くなってきている。今から出発するのもなぁ。


力を使って無理やり朝にしてもいいけど、世界の秩序を乱してしまうのも、お天道様に怒られてしまうかもしれないし。


「…えーいっ」


パチン、と指を鳴らす。





ドタッッ


鈍い音が本殿に響き渡った。


「ご主人大丈夫?」


「大丈夫と思うんなら早くどいてくれないかな」


綺麗に着地する予定だったものの、見事に失敗してしまった。


「馬乗り状態なんだけど…」


「ご主人、馬乗りってこれのこと?」


ないこの上に俺が乗っているのを、『馬乗り』と言った。…人間はこんな些細なことですら名前を付けるのか。


「え、…あぁ、うん」


「ふーん」


「人間って面白いな!」


ずいっ、とご主人に近づいてみる。少し傷んだ桃色の髪。


「…はよどけ」


「んー?」


眉をひそめて嫌そうな顔をするご主人が面白くてついついからかいたくなってしまう。


「ちょ、擽ったいんだけど」


今の状況を楽しんでしまい、左右へと揺れ動く尻尾がご主人の頬に当たっているようで、先程まで嫌そうな顔をしていたのに、今は目を細めてふふ、と微笑む。


「…ひひっ、ほんまに人間はおもろいなぁ」


「そうかなぁ…?」


「というか、いつまで俺の事をご主人って呼ぶの」


「ないこでいいよ」


「え」


「…ええの!?」


今まで見てきた仲間達はご主人が名前で呼ぶように言ってきたことはなかったらしいから、何回も呼ぶものじゃないと思っていた。


「なんだよ…ジロジロ見て…」


「んー?嬉しいなぁって」


ないこの綺麗な瞳をじっと見つめる。…良かった、ちゃんと瞳に生気がある。


生気…幸せ…あ、


「輪くぐり…」


「…輪くぐり?」


「そうや、ないこ、輪くぐりしよ!!」








ーーーー







『輪くぐり』という聞いたことも無い言葉を発したまろ。


せっかく本殿の中に居たのにいきなり腕を掴んで外へ引っ張り出された。

「えーと、どうするんやっけ」


「んー?あ、茅がいるんやった」


…ちがや?又もや聞いた事のない言葉が並んでいく。


「茅…よっと、」


パチン、と指を鳴らしたかと思えば草で作られたしめ縄のようなものが出てきた。


指を鳴らせば神様は何だって出来るのかもしれない、なんて考えさえも生まれてしまう。


ふーっ、と茅に向かって息を軽く吹くまろ。


艶やかな唇と風にあおられ青髪の隙間からたまに見える鮮やかな海のような藍色の瞳に思わず目を奪われた。


何かを言うこともなくただ横からずっと眺めているとやがて茅は光り輝き始めた。


「…..何…これ」


見たこともない景色に理解が追いつかない。


「さっきも言った通りこれは『輪くぐり』っていうんやけど、まぁ…お祓い…厄祓いって思ってくれたらええよ」


「光ってたのは急に取りだしてきたから、一応お呪い込めとったって感じ」


「…じゃ、やろっか」


ガシッと肩を捕まれ雑に運ばれる。


「…やるって何すんの?」


「これ、回って」


にっこりと微笑んで指をさしたのは茅で出来た縄だった。


「…この怪しそうな縄を回る?」


「おん」


「ほな行くでー」


…話聞いてないし。本当にこれが厄祓いなのだろうか、不安でしかないものの「ほら早く」と急かされるのでしょうがなく。


「じゃあ、まずは縄を左側から3回回って」


「あ、縄は踏みつけちゃあかんで」


「…はーい」


左側に3回回ってみる。何ともシュールな画な気がするが。


「次は右に3回」






「最後にもう一回左に3回回って」


「……よっと、終わったよ」


「これで無病息災が保証されるって訳」


「ってそんな事しなくても俺がないこを守るんやけどな」


…じゃあ今のに意味あった?


「あるんやない?少しでも幸せを感じるにはそういうのも無くしていった方がいいと思うし」


「あれ、口に出てた?」


「ガッツリな」


「…まぁ、こういう経験もいいんやないん?」


「楽しかった?幸せになった?」


これで楽しいといえるのかは分からないけど…でも、


「…俺、お前といる時間は楽しいと思うよ…」


「…それが幸せかは、分からないけど」


「ふぅん…そっかぁ」


「…んだよ」


「んーん?嬉しいなぁって」


笑顔でそう言うまろの頬が心做しか紅く染まって見えたのは気のせいかもしれない。


「もっと幸せにしたるからな!!」


俺達の幸せ探しは、きっと計り知れないほど長くて、…何よりも楽しくなる予感がした。






#4「君のままで」













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