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月曜日の朝。
晴れた空とは裏腹に、真理亜の心には重たい影が落ちていた。
昨日の夜、道枝駿佑の気持ちに“今は答えられない”と伝えた。
彼の笑顔が震えたあの瞬間が、まだ頭から離れない。
真理亜:(私は――何をしてるんやろ)
それでも、前に進むしかなかった。
学校の帰り道。
シェアハウスの最寄り駅に着いた時、ふいに声をかけられた。
丈一郎:「……真理亜ちゃん、一緒に帰らへん?」
振り返ると、そこにいたのは――藤原丈一郎だった。
真理亜:「あっ、丈一郎くん……うん」
無言のまま二人で歩く帰り道。
けれど、丈一郎は何かを決意したように、口を開いた。
丈一郎:「……昨日、みっちーと会ってたんやろ」
真理亜:「えっ……なんで、知って……?」
丈一郎:「みっちー、泣いてた。俺、偶然見かけてん」
真理亜の足が止まる。
丈一郎は続けた。
丈一郎:「真理亜ちゃんが“誰かを選ぶ”ってことは、“誰かを選ばない”ってことになる。その重さを、俺たちはわかってるつもりや。でもな――わかってても、割り切れへん感情もある。俺も……怖いねん。真理亜ちゃんが、俺以外の誰かを“好き”って思ってるんやないかって」
彼は、自分の拳を握りしめながら続けた。
丈一郎:「でも……そんな自分が、君の笑顔を曇らせる原因になるんやったら、俺は、身を引くべきなんかもしれんって、最近考えてる」
真理亜:「丈一郎くん……」
丈一郎:「だけど、それでも――やっぱり俺は、君が好きやねん。支えたい。守りたい。……でも、苦しませたくはない」
その言葉に、真理亜は涙をこらえきれなかった。
真理亜:(どうして、こんなにも優しい人ばかりなんやろ。私は誰かを好きになればなるほど、誰かを泣かせてしまう。“正しい答え”なんて、どこにもないのに)
その夜、真理亜は自室の机に向かって、日記を開いた。
「私の心は、きっともう誰かに傾き始めている。ぬくもりが恋しくて、安心する“その人”の側にいたいと思ってる。でも、それを口にした瞬間――他の誰かの心を、確実に傷つけてしまう」
「“答え”に近づくたびに、誰かの傷も深くなる。 こんな結末を、誰も望んでないのに」
「……でも私は、それでも――答えを出したい」
自分の気持ちに蓋をせず、まっすぐ向き合おうとする決意。
それは同時に、“誰か”を選び、
“誰か”を選ばないという、静かな宣戦布告でもあった。
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