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セイギ

15 - Case 3-0

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2024年08月23日

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報告する

バサバサ、という音で4人が一斉に振り向いた。発する元は、樹が左腕に抱えていた書類が床に落ちたことだった。

「大丈夫ですか、田中さん」

慎太郎が拾い上げ、渡す。

「サンキュ、慎太郎」

北斗より一足先に退院した樹は、仕事に復帰したが報告書の作成に追われていた。まだギプスのままの右手は使えないので、パソコンで作業している。

「ったく、印刷するのとかめんどいんだけど。俺利き手封印されてんだぜ?」

「パソコン使えるだけマシだろ」と高地に言いくるめられ、「さーせん」と首を引っ込める。

「そういえば、摘発はできるんですか? ほかの構成員の罪状も調べりゃ山ほど出てくるでしょ」

ジェシーが訊いて、大我が答える。

「それは四課に任せるしかない。俺らはなんも聞いてない」

「せっかく花形のー課が協力してやったっていうのに、手柄全部ぶんどっていきやがった…」

再びつぶやいたのは樹だ。

「まあまあ、事務所割ったっていうのはすごいだろ。ね、俺らは俺らの仕事に集中するだけ」

高地がまたなだめる。

「早くもっと面白い事件起きないかなぁ」

大我の一言で、口の減らなかった3人が静まり返る。

「……何てったってここは警視庁なんですから、すぐ来ますよ」

慎太郎だけがいつものようにニコニコと笑っていた。

そのときはまだ、あんな事件が降りかかってくるなんて思いもしなかった——。




ー週間後。

北斗も無事退院し、ようやく京本班は全員のメンバーが揃った。しかしあるのは事務作業のみ。

現場作業派のジェシーや樹、大我はずっと文句を言っている。

「今日ずっと調書なんだけど。ほんっとに飽きてきた」

主任の愚痴に取り合う班員は、今のところ誰もいなかった。

「…やっぱり事件があったほうが張り合いがあるな」

そこで、やっと高地が口を開く。「大我うるさい。集中できない」

上司と言えど毒舌な彼に、黙々と手を動かす北斗と慎太郎も笑みをこぼす。

「あと事件起きたあとは絶対調書作んないといけないから。何年警察やってんの」

「そうだった…」

がっくりと項垂れたところで、大我の卓上に置いてあるスマホが鳴った。反射的に腕を伸ばして取る。

「はい、ー課の京本です。……え、総監? …ああ、前の総監が。……はあ⁉」

普段の大我からは聞かない声を聞き、5人が一斉に振り向く。そのとき、北斗が「いっ…!」と声を上げてコルセットをつけた胸を押さえた。

しかし当の主任は気づくことなく、ただでさえ白い顔を青白くさせて電話を握りしめている。

「……わかりました。それをうちが担当…。それは僕個人ではできないんですか。……当たり前ですよね。はい。じゃああすの捜査会議で。…はい」

スマホを耳から離すと、脱力したように椅子に座り込んだ。

「何があったんですか」

ジェシーが訊くが、すぐに口を開かない。やがて意を決したように5人を見据える。

「まずいことになった」


続く

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