TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

セイギ

一覧ページ

「セイギ」のメインビジュアル

セイギ

16 - Case 3-1

♥

118

2024年08月28日

シェアするシェアする
報告する

「まずいことになった」

何がまずいのか、5人にはわからない。でも大我の強張った表情に、みんなの顔も引き締まる。

「……前警視総監…、つまり俺の祖父が」

唇を歪め、言葉を絞り出した。

「行方不明になったらしい。しかも、警視庁のトップしか知らない文書がなくなってるって」

水を打ったような静寂が広がった。

「……電話は誰から?」

小さく問うたのは高地だ。

「親父…現警視総監。昨日、じいちゃん家に帰ってきてないと思ったんだよ。どうせ飲みに行ってるんじゃないかって」

そう言った大我は、悔しそうに拳を握りしめた。

「…文書っていうのは」

北斗の声に、ゆっくりと顔を上げる。5人が見たことがないほど苦々しい顔をしていた。

「俺も知らない。でも、数十年前に起きた警察署の横領事件を記録した文章全てって。当時はまだ全部紙ベースだからな」

「え、おうりょー⁉︎」

驚いてジェシーが声を上げる。

「ああ。都内の署にいた巡査長が、警察の金を横領して私的に使ったとか。だけど本庁がもみ消して、不起訴になったって。ずいぶん前に親父から聞いたな」

「でもそれが、なんで前警視総監の失踪と関係があるんですか?」

樹が訊くが、大我は「さあ」と首をひねる。

「とりあえず、この班で捜査を進めてくれって言われたけど…。ひとまず身内の俺と親父でやる。みんなは今の事件に集中して」

京本班は、都内で起きた強盗殺人事件を担当しているのだった。犯人は凶器を持ったまま逃走していて、見つかっていない。

「わかりました。じゃあ、世間に公表はしないんですね」

慎太郎の声にうなずいた。

「なるべく穏便にしなきゃいけねぇな…」

大我がつぶやいたあとは、重苦しい沈黙が部屋を占拠する。それを突然蹴散らしたのは、軽快なメロディーだった。

「だあぁ、すいません。誰だろ、あっマミーだ。……Hello?」

ポケットからスマホを取り出したジェシーが、扉から出て行く。5人は呆れて笑うことしかできなかった。

「…しょうがねーやつだ。さ、聞き込みでも行ってくるわ」

高地が椅子の背に掛けていたジャケットを羽織り、「大我、行こう」と指名。2人が去って行ったドアの向こうでは「あっ俺も行きたいです!」という声のあとに、「仕事中はマナーモード。いい加減覚えて」といさめる声。

「……事の重さわかってんのかな」

樹が苦笑した。北斗も同様。「こっちの上役のことは知らなさそうだしな」

「にしても、なんでジェシーさんってFBIから来たんですか?」

問いかけた慎太郎に、振り返る。

「なんとか研修プロジェクトとかいうのらしい。いわば交換留学って感じじゃないかな」

へえ、とうなずいてもう一つ疑問を呈す。

「…どっちの人なんですか?」

「ハーフなんだって」と樹が笑う。「出身はここで、就職先があっち。来たときに言ってた」

だからか、と慎太郎は妙に納得した。日本語こそ流暢だが、時々アメリカの癖を感じていた。

「まぁ…、たまにはあいつを見習って気楽にいこうぜ。とりあえず今やってる事件を片付けなきゃ」

北斗が言って、3人は同時に部屋を後にした。


続く

この作品はいかがでしたか?

118

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚