斎場へと戻って行く、政宗医師の母親であるはずの人の後ろ姿を見送りながら、
『……父は、私にとっては、唯一の救いでした……ただ一人の、理解者だったのに……』
さっき彼から言われたことを、私はつぶさに思い出していた──。
彼自身にとって、お父様はとても大切な存在だったのに違いなかった。
そしてお母様の方は、それとは反対に、まるで脅威でもあるかのようなそんな存在にも思われた……。
──やがて葬儀が済み、通常の業務が始まると、
政宗医師は、あの涙を流していた顔が嘘だったかのように、また以前と変わらない、冷たい美しさを放つ顔に戻っていた。
取り澄ましたその容貌からは、あんな風に感情的に泣くような姿は微塵も想像できなくて、
あれは、現実ではなかったようにさえ思われた──。
……それは、或いはもうあんな姿は忘れてほしいと願っているようにも感じられて、私は、あの日の出来事を、頭の中から消し去ろうとした……。
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