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もな
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宇津Q
2,059
数日後の平日の午後遅く、塾の講義がない日だった晶子は学校から真っすぐ、秋葉原の、カンナがアルバイトをしているメイド喫茶へ行った。
学校の制服を着たまま店に入るのはちょっと勇気が要ったが、客が少なかったので何とか席に就き、ケーキセットを頼んだ。
カンナがその日は出勤でない事は、あらかじめ本人からさりげなく聞き出してあった。飲み物とケーキを運んで来たのは、店長格の女性だった。
テーブルに置いて去ろうとする彼女に、晶子は思い切って声をかけた。
「あの、すみません。ちょっといいですか?」
「はい? どうかなさいましたか?」
戸惑った表情でそう訊く彼女に晶子は、汗を額に浮かべながら必死で告げた。
「ここで働いている山室さんの事でお願いがあるんです」
「ああ、あなたいつかの、カンナさんのお友達ね。それでお願いって?」
晶子はテーブルに額を押し付けんばかりに深々と頭を下げて彼女に告げた。
「お願いです。カンナを修学旅行に行かせてあげて下さい」
彼女は一瞬ポカンとしたが、顔を上げた晶子の真剣な表情を見て、小さくうなずいた。そして晶子に小声で言った。
「複雑な話みたいだから、閉店後にゆっくり聞かせてくれる? あと30分ほどで閉店するから、このままここで待っててくれる?」
「はい、お願いします」
やがて閉店時間になり、メイド服姿の従業員たちが店の扉を閉め、さっきの店長格の女性と3人の女性従業員が晶子のテーブルに集まって来た。
店長格の女性が晶子の向かい側に座り、他の3人もそれぞれ椅子を近づけて腰を下ろす。店長格の女性が改めて晶子に質問した。
「ええと、カンナさんの修学旅行がどうとか、だったわよね。詳しく聞かせてもらえる?」
晶子はカンナから聞いた話を彼女たちに告げた。店長格の女性は、ああ、なるほど、という表情になった。
「確かに予定してた人数が確保できなかったから、カンナさんには無理させちゃってたかもね。でもそ、それならそうと言ってくれればよかったのに」
別の女性が口をはさんだ。
「あの子、そういうとこ律儀って言うか真面目だからね。いいよ、その週末ならあたしが代わりにシフト入るからさ」
店長格の女性がいぶかし気に訊く。
「あれ? あなた友達とディズニーランド行くって言ってなかった?」
「いいよ、付き合いで誘われて断り切れなかっただけで、実はあんまり気が進まないんだ。自分のカレシ自慢されんのがうざくてさ。断るいい口実になるよ」
「じゃあ、頼むわね」
そう言って店長格の女性は晶子の方に向き直った。
「分かりました。カンナさんが修学旅行に行けるように、私がシフトを調整しますから、安心して」
晶子は思わず大声で礼を口にした。
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
カバンを持って席を立ち、晶子はあわてて彼女たちに言う。
「あ、あたしがここに来て、今の話した事は、カンナには内緒にして下さい。カンナって、結構そういうの嫌がるところあるんで」
従業員たち全員が思わず笑い顔になった。店長格の女性が笑い顔で晶子に言った。
「オーケー。私たちだけの秘密ね。みんなもそれでよろしく!」
店を出る直前、ドアの前で晶子はもう一度、彼女たちに深々と頭を下げた。
コメント
1件
ああ、このエピソードめっちゃ良かった…!晶子が制服のままメイド喫茶に乗り込んで、カンナの修学旅行のために頭下げるところ、もうグッときたわ。友達のためって分かってても、ああいう行動って勇気いるもん。しかも「カンナには内緒にして」ってオチも、晶子の気遣いが滲んでてすごく好き。こういう地味だけど確かな優しさの積み重ね、この作品の魅力だと思う。次も楽しみにしてる🔥