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美雪ちゃんの身体は、赤い蜘蛛の糸のようなものにからめとられていた。
きっとそれは、メイの執着が現れたものなのだろう。
なんとなく、そう直感で分かった。
目の前には、ヴァジュラの眼(まなこ)が第三の目として開いたメイがたたずんでいる。
私の身体も、メイが操るヴァジュラから流れ込んでくる”何か”に、身体が染まっていくのを感じた。
この後どうなるのか、分からない。
いや、それ以前に、メイが何をしたいのか、私はまったく分からなかった。どうして――?
「メイ、どうしてメイが、美雪ちゃんにこだわるの?」
思えばずっと疑問だった。
気持ちが通じ合っている双子の姉妹だ。
だから最初は、私の代わりに美雪ちゃんに意地悪しているのだと、そう思った。
だが今思えばあの美雪ちゃんへの執着は、メイ本人のこだわりだったように思えてくる。
妹の気持ちは、他の誰よりも分かっていると、私はそう思っていた。
だが今は全然分からない。もしかして、最初から私は妹の気持ちなんか分かってなかったのだろうか?
「知りたい?」
メイはそう言って、私に近づいてくる。
そして私の額に、ヴァジュラの眼をあてがった。
その瞬間に流れてくるビジョン――。
それは、当時小学五年生だったころのメイ、そして――
「はい! これあげる!」
黒いウサギのマスコット。
それをメイに渡したのは、美雪ちゃんだった。
美雪ちゃんは黒いウサギのマスコットをメイに渡すと、元気いっぱいに手を振った。
「また会おうね! バイバイ!」
そういって、立ち去る美雪。
そんな美雪ちゃんの事をメイは愛おしそうに、いつまでもずっと見続けていた。
「――っ! そうだったんだ……」
なんで今まで気づかなかったんだろうね。
メイが言う通り、私って本当にバカだ。
「メイは私よりもずっと前から、美雪ちゃんが好きだったんだね」