テラーノベル
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「……っっっ!! 嘘だろ、不老不死になっても『熱い』のは変わらねえええ!!」
俺は叫びました。地霊殿のさらに奥、灼熱地獄跡の空気はもはや気体というより「凶器」です。 吸い込む空気が肺を焼き、高校生の瑞々しい肌は一瞬で真っ赤に茹で上がりました。不老不死だから死なない、ただそれだけが救いですが、熱痛いものは熱痛い!
「霊夢……! お前、よくこんなところで平気な顔して……!」 「平気なわけないでしょ! 霊力でバリアを張ってなきゃ、今ごろ巫女服ごと消し炭よ!」
魔理沙も箒に掴まりながら、「あつい……キノコが焼ける前に私が焼きキノコになっちまうぜ……」と息絶え絶えです。
そんな灼熱の中心で、お空(霊烏路空)がケラケラと笑いながら右腕の核融合制御棒を突き出しました。
「うにゅ? 料理人さん、そんなところで震えてたら火が通らないよ! もっと近くに来て! 私の太陽の熱で、その『白だし』とかいうのを沸騰させてあげる!」
「無茶言うな! 近づいたら鍋ごと蒸発しちまう!!」
俺は震える手で、地底特産の「地獄牛のすじ肉」と、丸ごと一本の巨大大根を巨大な土鍋にぶち込みました。そして、命より大事な白だしをドボドボと注ぎ込みます。
「お空、いいか! 火力は『八咫烏』の力……じゃなくて、**『ガスコンロの中火』**くらいまで落とせ! 1億度なんていらない、100度でいいんだ!」
「ちゅうび? なにそれ美味しいの? ……えーい、これくらいかな! 『地獄の極小太陽(プチ・サン)』!!」
お空が指先から放ったのは、極小とはいえ核融合のエネルギー体。それが土鍋の底に触れた瞬間、地底の空間がキィィィィィンと鳴動しました。
ドォォォォォン!!
「ぎゃあああ! 鍋が光ってる!!」
土鍋の中の白だしが、沸騰というレベルを超えて、プラズマ状の黄金色の光を放ち始めました。普通なら一瞬で水分が飛び、鍋が溶け落ちるところですが……。
「……あら。面白いわね」 背後で涼しい顔をしていたさとりが、サードアイを瞬かせました。
「あなたの思考が見えるわ。……『不老不死になった俺の血液(だし成分)が少し混ざったことで、白だしが超高熱に耐える特殊な結界を作っている』……。理屈は不明だけど、その鍋の中、今、数万気圧の超高圧調理状態になっているわよ」
「マジかよ!? 科学が死んでるぞ!!」
だが、光り輝く鍋の隙間から漏れ出してきたのは、これまで嗅いだことのない、脳を直接揺さぶるような「肉と出汁」の究極の香りでした。 それは、地獄の業火でさえも「美味そうな匂い」に変えてしまう、禁断の薫香。
「……クンクン。お姉様、これ、すっごくいい匂い! お腹の太陽が暴れちゃうよ!」
「……不覚だわ。心を読まなくても分かる。これ、絶対に美味しいやつじゃない……」
さとりの冷静な仮面が、食欲という名の地熱によって、じわじわと溶け始めていました。
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