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二人は、未来の奨が残した唯一の手がかりである、写真の裏に書かれたメッセージを解読しようとした。
そこには、日付と場所が、暗号のように記されていた。
「2023.11.24. K」
「Kって…もしかして、京セラドーム?」
蓮がそう言うと、奨はハッとした。
未来の記憶では、JO1が京セラドームでライブを行うのは、まだ先のことだ。
だが、この世界では、その日付に、何か特別な意味があるのかもしれない。
二人は、メンバーに嘘をついて、こっそりと大阪へ向かった。
人目につかないように、変装をして。
京セラドームの周辺を歩き回るが、未来の奨の姿は見当たらない。
すると、蓮が、ドームの近くにある小さなカフェの前で立ち止まった。
「…奨くん、このカフェ、見覚えある?」
蓮の言葉に、奨は未来の記憶をたどった。
そこは、デビュー後、二人がこっそりデートをしていた、思い出の場所だった。
二人がカフェに入ると、店内は静かだった。
窓際の席に座り、メニューを広げる。
すると、メニューの裏に、小さなメモが挟まれていた。
「未来を変える鍵は、過去にある。君たちの始まりの場所へ行け」
それは、やはり未来の奨が残したメッセージだった。
そして、それは、二人のタイムスリップの原因が、彼らの「始まり」にあることを示唆していた。
「俺たちの始まり…?」
奨と蓮は、顔を見合わせた。
それは、オーディション番組で出会った日か。
それとも、二人が愛を誓い合った、非常階段なのか。
未来の奨は、二人を試しているようだった。
愛を、そして運命を、自らの手で掴み取れるかどうか。
「…非常階段」
奨の口から、無意識に言葉が漏れた。
蓮が、驚いたように奨を見つめる。
「俺たちの、本当の始まりは、あそこだった。未来では、俺たちがあの非常階段で、二人だけで歌って、愛を育んでいったんだ」
奨は、カフェの窓から見える京セラドームを見つめていた。
そして、そのドームから、何キロも離れた、懐かしい場所を思い出す。
それは、彼らが、デビュー前に練習していた、あのビルの非常階段だった。
未来の奨は、二人を試している。
物理的な場所ではなく、二人の「愛の始まり」に戻ることを、求めている。
「行こう、蓮。俺たちの始まりの場所へ」
奨は、立ち上がると、蓮の手を強く握りしめた。
それは、未来を変えるための、そして、失いかけた愛を取り戻すための、最初の一歩だった。
二人は、再び新幹線に乗り、東京へ向かった。
夜の帳が降りた、あのビルの非常階段。
そこには、未来の奨が残した、もう一つのメッセージが、二人を待っていた。