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「あの古狐、結局どこに消えたんだ?」
帰り道。俺がそう訊ねると、堂河内は首を傾げながら、
「さぁ、どこだろうね?」
あいまいな返事をされて、俺は「は?」と思わず変な声を漏らしていた。
「見てたんだろ? アイツがどっかいっちゃうのを」
すると堂河内は少し困ったように笑みをこぼし、
「見てたけど、瞬きをしてるうちに一瞬で消えちゃったんだ。だから、実は僕もちゃんと見ていたわけじゃなくてさ」
「……そうか」
それは至極残念な話だったけれど、まあ、仕方がない。或いは見えていないだけで、実は今もすぐ近くに隠れて、俺たちのあとを付けて来ているんじゃないか、そう思いもしたのだった。
やがて分かれ道まで二人並んで歩いていたが、その別れ際、俺は「えっと……」と少し言葉に困りつつ、
「今回は、本当にありがとうな」
「うん」
と堂河内は頷いて、
「また何かあったらすぐに教えてよ。僕にできる範囲なら力になるから。もちろん、真帆ねぇや茜さんと一緒にね」
それに対して、俺も頷き返す。
「今日はありがとうな、堂河内」
「ううん、気にしないで。それじゃぁ、また」
堂河内は小さく手を振り、俺に背を向けて。
俺はしばらくその背中を見送っていたが、やはり口に出して言っておきたくて、
「堂河内!」
大きくその背中を呼び止めた。
振り返る堂河内に、俺は「えっと……」と少し口籠もりながら、
「明日からも、よろしくな!」
そう口にすると、堂河内は大きく手を振りながら、
「あぁ。こちらこそ、よろしくな!」
今まで見せたことのない、満面の笑みで言ったのだった。