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気持ちを切り替え、元気を出して、みんな揃って八階! 最上階に待つ大魔王、魔神アスタロトに立ち向かう事になった『聖女と愉快な仲間たち With 魔狼×3』であった。
モラクスが心配そうな顔をしながら、一番心配なコユキに告げた。
「コユキ様、今から対峙(たいじ)する大魔王、魔神アスタロトは大いなる海と大地の支配者にして、爆炎に君臨せし者、と呼ばれています、その巨大な力は、我等スプラタ・マンユを遥かに凌駕(りょうが)する物でしょう…… 常で無い御注意、警戒を心掛けて下さいませ…… あとひとつ、まことにろうばしんながらいわせていただきたきことが…… えっと…… あの……」
何やら言いあぐねている様子のモラクスに、イライラしたのかコユキが口を挟む。
「何よ! ハッキリ言ってくんなきゃ分かんないわよ! モラクス君!」
モラクスがギック、っとしながらも即座に答える。
「申し訳ありません、ハッキリ言います! えっと、魔神アスタロトは、大変美しく…… 正直に言えば『超男前』です! その上『魅了(チャーム)』も使ってくると思いますので、あの、その、気を付けて下さいね………… 免疫無いと思うので……(ボソッ)」
最後の辺りは良く聞き取れ無かったコユキであったが、自信満々で答えるのであった。
「ああ、ありがとね、モラクス君! 心配掛けちゃって! でも、大丈夫よ、今のアタシに魅了とか効かないから! 家族の魂を奪った憎い憎っい敵なんだからねっ! 全然大丈夫だよ! んじゃあ、行こっか? 皆! おけい?」
「「「「「「「「「「おけい!」」」」」」」」」」
「行くでござるよ、コユキ殿」
「うん、行こう! 善悪」
そう頷き合う二人と七柱、三匹の魔狼達は、恐れもせず、恥の城、ボシェット城の主、魔神アスタロトの謁見(えっけん)の間に足を踏み入れて行くのであった。
お洒落な宝石塗れ(まみれ)の扉を左右に分かれたコユキと善悪がウンショウンショ押しすすめて入った室内は、殊の外(ことのほか)質素な設え(しつらえ)である。
奥に見える玉座こそ豪奢(ごうしゃ)な拵え(こしらえ)であったが、今は誰も座る者無く空席に見える。
代わりに、玉座と扉を越えたばかりの一行の丁度中間に佇む巨体の姿があった。
全身を赤を纏(まと)った漆黒に染めたその巨体は、三つの顔が同時に笑っている様に見えた、
老人の顔、嫉妬深い女の顔、戦闘狂の顔……
そして手にしているのは、三叉(さんさ)の槍。
だが、よく見ると槍の先は三匹の蛇だ。
それぞれが各個の意思を持っているかのように蠢き(うごめき)捲り(まくり)気持ち悪い事この上ない。
さらに、異形の巨体が騎乗しているのは、なんとも気味の悪い、毛が抜けた巨大なケダモノだ、溝鼠(ドブネズミ)のように見える。
「なんか、善悪~、キモイんだけど…… ねぇモラクス君? どこが男前なのん? アンタ目大丈夫?」
コユキの言葉にモラクスが答える。
「勿論目に異常はございませんので御安心を、これらは魔神アスタロトを守護するアフラ・マズダ、所謂(いわゆる)『七大徳』です。 魔神の核を守る為に擬似的な体を形成しているに過ぎません。 これらもここまでコユキ様が対峙してきた大罪たちと同様魔力も物理攻撃も通用しません。 知恵と言葉、精神で戦うしかないのです。 しかし、善悪様のみならず、我々スプラタ・マンユも微力ながら御協力いたします。 見事、試練を乗り越えご家族の魂を奪還いたしましょう」
モラクスの言葉に鼻息荒くふんすっと気合を入れるコユキ。
「おやおや、可愛らしいお人形かと思いきや、誰かと思えばアムシャ・スプンタじゃないかい、その話し方は強襲のモラクスだね? なんだいアンタ等? 聖女や聖戦士に雇われてるのかい? 惨めだねぇ、主を失った元魔王種のなれの果て、か…… 嫌だ嫌だ」
嫉妬深そうな女の顔が突然話しかけて来たが、シヴァが即座に言い返した。
「黙れレヴィアタン! 我等をアムシャと呼ぶのはやめろ! 我等はスプラタ・マンユ、撒かれ(スプラタ)後を任された、魂魄(マンユ)である!」
シヴァの言葉に合わせるようにスプラタ・マンユ全員がオーラを高め威嚇(いかく)するように一列に並んだまま一歩踏み出すのであった。
一切の動揺も見せずに老人の顔が口を開いた。
「白いオーラって事はオルクスか? まさかのう、グリゴリとまで言われ、三魔神に匹敵する実力者と呼ばれた者が、見よラグエル! 弟達にまで劣る魔力しかない訳があろう筈もない、恐らくそこらのレッサーデーモンでも代わりに連れ歩いて居るんじゃろう? な、な?」
「クッ、コノ、ジジイ!」
「おいおいレミエル、止めてやれよ、聞いたろ片言だが喋れるんだぞ、レッサーにしては賢いじゃないか、立派、立派、はははは」
オルクスの口惜しそうな声に続けて、戦闘狂っぽい顔が、馬鹿にするように言い放った。
「なにがラグエルにレミエルよ、薄汚いベリアルの爺(ジジイ)と、脳筋戦闘馬鹿のベルフェゴールの癖に! 兄様にそんな口を聞いて! 許せませんわ!」
ラマシュトゥがオルクスを庇うように前に立ち塞がり、ピンクのオーラを一際大きくさせる。
コユキがラマシュトゥに声を掛けた。
「ねえラマシュトゥちゃん! このごつい奴? 奴等(やつら)知ってるのん?」
「はい、残念ながら、昔から我等兄弟にうるさく絡んできた馬鹿共です」
「知り合いみたいね? あ、あれか、前にオルクス君が言ってたウルサイやつらってコイツ達なのね!」