テラーノベル
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竜牙さんは、自嘲気味に口角を上げた。
でも、その瞳は全然笑っていない。
「……昔、一度だけ本気で付き合ってた男がいたんだ。でもそいつに、“もっと細くて、可愛い感じの奴がいいわ”って……そう言われて振られた」
その瞬間
胸の奥を、冷たい刃でザクリと抉られたような衝撃が走った。
……そんなこと。
そんな残酷な否定を、この人は受けてきたんだ。
「だから……慧斗が俺に告白してくれた時、天にも昇るくらい嬉しかったんだよ」
竜牙さんの、膝の上に置かれた大きな手が少し震える。
「でも、それと同時に……心の底から怖かった。いつ、お前に幻滅されるかって」
「……!」
「慧斗は、自分でも言ってる通り『可愛いもの』が大好きだろ。お前自身も綺麗だし、お前の理想は、もっと中性的で美しい奴なんだって思ってた」
「……だから、俺のこの剥き出しのガタイを見て、いつか萎えられるんじゃないかって、そればっかり考えてたんだ」
竜牙さんは、そこで耐えかねたように唇を噛んだ。
「夜に電気を消すのも、一緒に風呂に入るのを拒んだのも……着替えを見せたくなかったのも」
「全部、見られたら、お前が俺を『男すぎて気持ち悪い』って思うんじゃないかって、怖くて仕方がなかったんだよ」
俺は、何も言い返せなかった。
だって───
そんなこと、これっぽっちも考えたことがなかったから。
俺にとって、竜牙さんはいつだって、世界で一番「かっこいい男」だった。
隣にいれば安心できて、優しくて、頼りがいがあって、広い背中に抱きつくと幸せになれる。
唯一無二の、愛おしい恋人。
なのに、本人は。
俺の隣にいる間、ずっとそんな恐怖に怯えていたんだ。
完璧なスパダリを演じることでしか、俺を繋ぎ止めておけないと思い込んでいたんだ。
「だから、あの日…店で……」
竜牙さんが、泣き出しそうな声で続ける。
「お前に、“図体だけ無駄にデカいくせに”って言われた時……ああ、やっぱり、俺の体は慧斗にとって、不快なだけの塊なんだって…そう思ったら、ショックで、何も言えなくなっちまった……」
その瞬間
俺の心臓が、ドクン、と最悪な音を立てた。
あ、俺。
……本当に、最低だ。
竜牙さんが人生で一番傷ついて、一番気にして
必死に隠して守ろうとしていたコンプレックスを。
俺は、自分の不満をぶつけるための「武器」として、無意識に、だけど正確に突き刺していた。
一番言っちゃいけない言葉を、怒りに任せて、あんな酷い言い方で。
「……っ、!ごめん」
気づいたら、声が漏れていた。
視界が急激に滲んで、足元が歪んで見える。
「俺…マジで最低じゃん……」
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#ざまぁ