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🐱side
その日のレッスンは全体的にピリついていた。
原因はわかってる。
自分だ。
ym(ちゃんとしてるのに)
何度も自分に言い聞かせる。
煽ってない。
距離も守ってる。
変なこと、何も言ってない。
……はずだった。
fm「じゃあ、次ここからもう1回!」
音楽が流れる。
フォーメーション移動。
ふみくんが前に出て俺が斜め後ろに着く形。
その距離が妙に遠くに感じて。
ym(前はもっと近かったのに)
考える前に口が動いていた。
ym「……ふみくん、俺の事見てないでしょ」
音楽が止まる。
fm「……え?」
一斉に視線が集まる。
ym「今の振り、もっと見てくれてたらタイミング合わせやすいのに」
いい終わってから気づいた。
あ。
これふみくんに対する仕事の不満に見せかけた個人的な不満だ。
ふみくんの表情が明らかに変わった。
fm「……一回止める」
低い声。
fm「全員水飲んで」
ざわっと空気が動く。
メンバーが散っていく中ふみくんは俺を一度も見ない。
fm「……ゆうま」
名前を呼ばれたのは人がいなくなってからだった。
fm「こっち来て」
逆らえない声。
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楽屋裏。
ドアが閉まる。
fm「……今の何?」
抑えているのがわかる声。
fm「みんなの前でああいう言い方する意味、分かってる?」
ym「ごめん、でも――」
fm「”でも”じゃない」
ふみくんが初めて声を荒らげた。
fm「俺がどれだけ気をつけてると思ってる」
一歩、距離が詰まる。
fm「見てないんじゃない。
見すぎないようにしてるんだよ」
その言葉に胸を締め付けられる。
ym「……そんなの知らない」
ぽつりと口から零れた。
ym「急に距離取られて、急に冷たくなって」
視線が揺れる。
ym「それで何も言うなって、無理だよ」
沈黙。
ふみくんの肩がゆっくり上下する。
fm「……分かった」
低い声。
fm「じゃあはっきり言う」
顔を上げた その目は真剣だった。
fm「外では俺から近づかない」
「でも」
一拍。
fm「ゆうまから来ないで」
「――来たらその時は俺が責任取る 」
意味がすぐには分からなかった。
ym「……責任?」
ふみくんは目を逸らしたまま言う。
fm「抑えられなくなった時の、ね」
無意識に喉が鳴る。
ym「……それ、ずるい」
fm「そうかもね」
否定しない。
fm「だから最後の警告」
静かに。でもはっきり。
fm「これ以上俺を試さないで」
ドアが開く。
fm「戻ろ」
それだけ言ってふみくんは先に歩き出した。
その背中を見つめながら胸の奥がざわつくのを止められなかった。
ym(……今の)
(警告、だよね)
なのに。
心のどこかで。
ym(でも、もし――)
そんな考えが浮かんでしまった自分がいちばん怖かった。
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