コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
こんな誰だかわかんないようなの、あたしなんかじゃない。
全然信じられない。七瀬リオが。
七瀬リオである、あたしが。
自分自身が──。
あたしはもう、七瀬リオでなんか、いたくなかった。
自分の中にいるリオが、気もちが悪くて悪くてしょうがなかった。
七瀬リオがいる限り、本当のあたしはなんにもまともにできない。
リオなんて、捨てたいよ。
何をするにも、リオが付きまとって。
あたしは、自分の歌いたい歌さえ、歌えない。
この歌が、七瀬リオのイメージには合ってるからって。
歌いたくもない歌を、ステージで何曲も歌わされてるあたしは、
ただインプットされた歌を垂れ流すだけの、マシンにしか過ぎないようにさえ思えた。
いつだってこんな精神状態だから、ツアーが近づくと、あたしはよけいに憂うつになる。
ステージでなんて、歌いたくない。
何時間も、ファンの前で七瀬リオであり続けることが、たまらなく嫌になる。
ツアーの日程が決まりスケジュールが上がってくると、見なくちゃいけないという義務感から、あたしはそれを壁に貼って、
だけど貼って眺めてるうちに、無性にイライラしてきて……。
あたしは取り出したカッターで、
スケジュール表を、めちゃくちゃに切り刻んだ。