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俺がいつものように切っていると誰かが俺の部屋をノックした
「悠斗〜、開けてもいい?」
どうやらノックしたのは親友だったようだ
「あー…ちょっと待っててくれ」
とりあえずティッシュとかカッターとか隠さないとな……………これでよしっと
「入ってきていいぞ」
「お邪魔します〜」
「とりあえず悠斗」
「腕、出して?」
「え?」
部屋入って速攻でバレた…あいつマジでなんで俺が切ったって分かるんだ?ちゃんと隠したのに…
「はぁ…お前に隠すのは無理だな」
「ほらよ」
「わぁ…ずいぶんと沢山切ったね」
「まあ…」
「とりあえず手当てするからそのままでいて」
「うん」
亮太は俺がこうやって切る度に手当てをしてくれる
からなんだか申し訳ない気持ちになる
「ごめんな、いつも」
「いいんだよ、俺がやりたくてやってる事だから」
「そうか…」
───
「よし、とりあえずはこれでOKかな」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「ねぇ悠斗、今回はどうして切っちゃったの?」
「ん…嫌な事…あったから」
「我慢できなかった」
「嫌な事?誰かに何か言われたの?」
「〇〇先輩っているだろ?…そいつに言われた」
「ああ…あの先輩ね」
「何言われたか話せそう?」
「…………ごめん」
「わわっ、謝らないで」
「無理しなくて言わなくていいからね」
「……」
〇〇先輩、そいつは…いや、思い出すのは止めておこう
また切りたくなるから
「おいで悠斗」
「ん…」
亮太は何かあった時俺を抱きしめてくる、この瞬間が好きだ
「あったかいな、お前は」
「悠斗が冷たすぎるだけだよ、こんなに身体冷えちゃって…」
「寒い…」
「ホットミルク作ろうか?」
「うん…」
「じゃあ作ってるまでの間身体これ以上冷やさないようにベッドの中にいるんだよ」
「うん」
──────
「うーん…悠斗が切らなくなる方法はないのかな…」
俺はホットミルクを作りながら考えていた
無理矢理辞めさせるなんて絶対にやってはいけないことだし、かと言ってあのまま切らせておくのも心配だ…どうにか方法はないものか、もちろん話を聞いたり抱きしめてみたりできることはやるつもりだ
え?なんで抱きしめるのかって?それは…まあいいじゃないか、抱きしめても
──────
「悠斗、おまたせ」
「……悠斗?」
この短時間で寝てる…眠かったのかな
………寝顔も可愛いなぁ…
キスしても……ってダメダメ、一体何を考えてるんだ俺は
「うぅ…ん」
「亮…太?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「寝ててもいいんだよ」
「飲みたいから起きる…」
「ふふ…ちょっと熱いから気をつけるんだよ」
「うん」
──────────
「じゃあ悠斗、俺そろそろ帰るからね」
「もう帰るのか?」
「うん、一緒にいたいのは山々なんだけど塾あるから…」
「それならしょうがないか…」
「わかった、またな亮太」
「うん、またね」
塾休んで俺といてほしい…………なんてな
──────
「はぁー、亮太も帰ったしする事ねぇな」
「うーん………」
「暇だし切るか」
「結局これが一番の暇つぶしだからな」
暇だから切る、馬鹿な事をしている自覚はあるが一度癖がつくとやめられない
昔は辛いことがあった時にしか切っていなかったが最近暇つぶしにもするようになった
切るのが楽しくてついやりすぎてしまうこともある
「カッターどこ置いたっけな…」
「あ、あった」
「そろそろ刃変えないとな…錆びてきてる」
「でも替刃切らしてるんだよなぁ…」
「……まあいっか、買いに行くのめんどくさいし」
「そのまま切っちゃお」
───
刃を押し当ててそのまま引くとプツプツと血が出てきた
「うーん…」
なんだか物足りなかったので更に押し当てて引いてみた
「…あっ、これヤバいかも」
少しばかり深く切りすぎてしまったがまあ物足りなさはなくなったのでよしとしよう
「ほんとはもうちょっと切りたいけどこのまま放置してたら貧血なりそうだし止血するか…」
はじめは暇つぶしに切ってたはずなんだが…いつの間にか物足りなさを解消するために切っていたらしい
「あー、とりあえずティッシュ…いや、タオルの方がいいか?」
ティッシュだと大量に使う羽目になると考えた俺はタオルを選択した
「こういう時に限って汚れたタオルしかないな…まあいいか」
───
「よーし…なんとか止まったな」
「なんかフラフラするな…少し横になるか」
「包帯巻いてないけどまあ血止まってるし別にいいか…」
──────
「あー…今何時だ」
少しだけ横になるつもりが寝てしまっていたようだ
「19時…結構寝たな」
「……ん?あいつからLINEきてる…」
塾終わったよ〜
まだ夜ご飯食べてないならどっか食べに行かない?
「夜ご飯…腹減ってないけどあいつに会いたいしOKしとくか…」
行く
「…っと、これでよし」
「うわっ、もう返信返ってきた」
やったー!今から迎えに行くね!
「文面でも元気だなこいつ…」
うん
「ふぅ…準備するか」
「そうだ…傷…」
「まあいっか、このままで」
「どうせバレないし」
───
ピンポーン
「来たみたいだな」
ガチャ
「悠斗!会いたかったよ〜!」
「はいはい」
俺も会いたかった…なんて直接言えないけど会いたかったよ
「じゃあ行こっか、おすすめの所あるんだ!」
「うん」
よかった…バレてないみたいだ
───
「夜はやっぱ落ち着くねぇ」
「そうだな…」
うーん…まずいな
血が止まってるから包帯は巻かなかったけど…歩く度に傷が服に擦れてすごく痛い
てかこんなに擦れるもんじゃないだろ
手で押さえようと思ったけど押さえたら何かあるの丸わかりだからな…仕方ない、我慢するか
「悠斗?どうしたの?」
「ん?なんでもないけど…」
「そう?それならいいけど…」
「あっ、そろそろ着くよ」
「結構近いんだな」
「うん」
───
「いらっしゃませ〜」
「2名様でよろしいですか?」
「はい」
「こちらのお席へどうぞ〜」
とりあえずは座れるから擦れる事も少ないだろう…
───
「へぇ〜、結構色んなメニューがあるんだな」
思っていたより多いな…正直びっくりだ
「でしょ?」
「塾帰りに結構行く事多いんだ〜」
「へぇ〜」
「失礼します、こちらお冷になります」
「あっ、ありがとうございます」
ちょうど喉乾いてたんだよな…
ゴクゴク…
はぁ〜…生き返る〜
「悠斗、何にするか決めた?」
「ん?え、ああ…」
「お前は決めたのか?」
「うん、僕はいつも頼んでるやつにするよ」
「どれ?」
「これ」
「ふーん…じゃあ俺もそれにしようかな」
「わかった、じゃあ店員さん呼ぶね」
「すいませーん」
「はーい、少々お待ち下さい」
ここは呼び鈴ないタイプの店なのか…俺一人じゃ行けなさそうだな
「おまたせいたしました、ご注文をどうぞ」
「これ2つで」
「かしこまりました、以上でよろしいですか?」
「はい」
亮太は普通に店員さんとも話せててすごいよな…それに比べて俺は………ああダメだ、切りたくなってきた
「悠斗…大丈夫?暗い顔してるけど…」
「え?ああ…うん、大丈夫」
「その顔は大丈夫じゃない顔でしょ?どうしたの?話してみて」
「しょうもないことだからどうせ笑うだろ…」
「笑わないよ、大丈夫だからさ…ね?」
「そこまでいうなら…」
「いやほんとにしょうもないんだけどさ…」
「お前が店員さんと普通に会話できるのがすごいなと思って…俺は怖くてできないから」
「そう考えてたらだんだん気分が沈んできてさ…」
「…あっ!いや別にお前のせいとかじゃないぞ!俺が悪いのはわかってるから…」
「悠斗は悪くないよ」
「店員さんと会話できない人は世の中にいっぱいいるんだからさ、そこまで心配しなくて大丈夫だよ」
「それに…店に行くときは遠慮なく僕を呼んでよ」
「代わりに僕が話すからさ…ね?安心してよ」
「うん…」
まあ確かに俺だけじゃないもんな…店員さんと話せない人は
──────
「おまたせいたしました、こちらご注文の商品になります」
「ありがとうございます」
結構美味しそうだな…
「いただきまーす」
「いただきます…」
───
「ごちそうさまでした〜」
「どうだった?」
「美味しかったよ」
「でしょ!また一緒に来ようね!」
「うん」
───
「じゃあ、僕はここで」
「うん、ありがとう」
「また明日」
「また明日〜」
早く家帰って切ろ…
───
「ただいま」
「…っていても誰もいないけどね」
「はぁ〜…とりあえず風呂入るか」
「傷口…しみるだろうな」
「まあ自業自得か」
───
「あ〜……しみる」
「痛ぇー…」
「…ん?こんなところにカミソリが…兄さんが戻し忘れたのかな」
「そういや…今までカッターばっかりでカミソリで切ったことなかったな…」
「せっかくの機会だし…やってみるか、カミソリ」
「最初だし力は弱めでいくか…」
「もし良さそうだったらこれからもやろう」
「よし…」
スー…
「………お〜、こんな感じなのか」
「中々良いな」
そういやカミソリってカッターより痛み強いって聞いたことあるけどあれほんとだったんだな…
…癖になりそうだ
「……もう少しだけ切ったら風呂あがろ…」
───
「ふぅ〜…すっきりしたぁ」
「あ、血…どうしようかな」
「水で洗い流すか…?」
しみるけどまあしょうがないな…
「………よしっと」
「風呂あがるか」
───
ん?何か物音が…兄さんが帰ってきたのかな
今日は早いな…あっ、そういえばバイトないって言ってたな
まあいっか、部屋行こっと
───
ガチャ
バタン
「………ふぅ」
「あー…しにた」
部屋に一人になるとなんか気分沈んでくんだよな…なんでだろ
「……寝よ」
───
「……寝れない」
「ODするか…」
ODした後だと眠気が出てきてよく眠れるんだよな…ただその眠気は翌日の夕方くらいまで続くけど
「薬は…処方箋でいいか」
病院の先生にもらった精神薬でODをしている
…こんな事絶対言えないな
「…やるか」
「まあ寝るだけだし…ワンシートでいいよな」
本当は睡眠薬をもらった方が良いのはわかっているんだが…なんせ先生が少し怖い人で…自分から言うのが怖いんだ
「あっ、水入れてこなきゃ」
───
「ふぅ…飲んだし後は眠気くるの待つか」
「今のうちに歯とか磨いておこう」
───
「ようやく眠くなってきたな…」
「おやすみ」
「……このまま明日なんて来なければいいのに」