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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第88話 〚二つの敵意が交差した瞬間を、見逃さない〛
― 海翔視点 ―
朝ごはんの席。
カレーの匂い。
食器の音。
修学旅行三日目の、
一見すると普通の朝。
でも。
(……おかしい)
澪の隣に座りながら、
俺はずっと周囲を見ていた。
視線。
一つじゃない。
右斜め前。
真壁恒一。
左奥。
西園寺恒一。
二人とも、
同じ方向を見ている。
——澪。
(……重なってる)
それぞれ別の人間なのに、
向いている感情が
まったく同じ形をしている。
妬み。
苛立ち。
そして——
俺への敵意。
西園寺は、
露骨だ。
感情を隠さない。
睨むような目。
でも、
真壁は違う。
一見すると、
ただ拗ねているだけ。
でも。
(あの目……)
視線の“温度”が、
昨日より上がっている。
しかも。
真壁が一瞬、
西園寺の方を見た。
西園寺も、
気づいたように
視線を返す。
ほんの一瞬。
でも、
確かに交差した。
言葉はない。
合図もない。
なのに。
(……通じたな)
俺は、
背中に冷たいものが走るのを感じた。
二人は、
仲良くなったわけじゃない。
協力したわけでもない。
ただ、
“同じ敵”を認識しただけ。
——俺。
澪の隣にいる存在。
守る位置にいる存在。
(まずい)
この形は、
一番危ない。
それぞれが勝手に動く。
でも、
向かう先は同じ。
澪は、
気づいていない。
えまも、
玲央も、
湊も。
誰も、
この“視線の交差”を
事件として捉えていない。
でも、
俺は見た。
(もう、偶然じゃない)
これは、
警戒すべき段階に入った。
俺は、
何も言わずに
少しだけ澪に近づいた。
距離を、
詰める。
さりげなく。
でも、
はっきりと。
その瞬間、
二つの視線が
同時に俺に向いた。
——確信。
(……絶対に、近づけさせない)
この修学旅行が終わるまで。
いや、
終わったあとも。
俺は、
見張る。
誰にも言わない。
澪も、
不安にさせない。
ただ、
守る。
二つの敵意が
一つの線になる前に。