Vol.2
病みモブ
自傷行為
「霊幻さんは死にたいって思ったこと、ありますか」
まだ数年ぽっちしか生きていない筈の少年は辛そうに問いかけた。
一方目の前でぽりぽりと後頭部を掻く若いとも言えない青年はパソコンのキーボードをカタカタと指で押しながら答えた。
「いきなり何言ってんだお前は。そりゃ20年以上も生きてんだ、1度くらい思ったことあるさ」
少年は俯き、それ以降家に帰るまで1度も口を開かなかった。
(いきなりあんなこと聞くなんて、なんか思い詰めてんのか?)
殺風景な部屋の中でマットレスに座りながら考え込む。
しかしサバサバとした性格の霊幻は案ずるより産むが易しと考え、携帯電話を取り立ちポチポチと文字を紡ぎ始めた。
ピロン。
就寝しようとしていた時、勉強机の上に置いていたスマホが通知を知らせた
(…なんだろう)
暗い部屋に対して明るすぎる画面に顔を顰め、本文を確認する
「おいモブ、お前なんか思い詰めてんじゃねぇか?あんまり深くは聞かないけどさ。なんかあるんなら話ぐらい聞くぞ。恋人だからな」
不器用ながら心配する文章に口許が緩み、ふっと息を零す。
「…好きだなぁ」
呟きながら返信の為に此方も文字を紡ぐ。
「一緒に、死んでくれますか?」
それから数日間、霊幻からの返信はなく、不運にもバイトも入っておらず相談所に行く理由などなかった。
それでも脚は勝手に動いた。
切った腕が服と擦れて痛くても、動悸がして息が荒くなっても、茂夫の脚は動いた。
(嫌われちゃったかな。…そうだよね、一緒に死んでなんて気持ち悪いよね…)
相談所の前に着いた時茂夫は目を見開き、そして路地へ隠れて大声で泣き喚いた。
茂夫の視線の先には霊幻がいた。
霊幻は一人の女性と中睦まじく話していて、腕を組みキスをして抱き締めていた。
茂夫は涙が枯れるほど泣いた頃、いつも持っているカッターと薬をカバンから取り出した。
カチカチ、暗い路地にカッターの音が響く。
少し後に追い掛けるようにぽたぽたと血が地面へ着地する音も主張を始めた。
「好きって…言ってくれた!!キスもしてっ、くれ、たのに…僕が、僕が気持ち悪いこと言ったから、嫌にっ!なったの、かな…」
切り傷だらけになった腕を適当に布で拭ってからラムネのように薬を摘む。
暫くそうしていたが、カラスが鳴き始めたので茂夫は家へ帰ることにした。
「僕はまだ好きです…もう、僕の中の霊幻さんは死んだんですね。」
自室で膝を丸めて座っていたが、やがて茂夫は窓から家を飛び出した。
(僕の心もとっくに死んでる。だから…死んだ僕の中の霊幻さんに会いに行かなきゃね。)
25階ビルの屋上のフェンスを軽々と乗り越え、風を全身で受ける。
「僕の霊幻さん。…今、逝きますね。」
『調味市タワーの屋上から飛び降りた人の身元が判明致しました。
名前は影山茂夫、14歳で男性です。
今警察は事件性がないかについて捜索を…』
コメント
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死ネタほんっっっっっっっっっっとに大好きです!!!!!!!!!!!!😇😇😇やばい叫びそう()