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「それで…結局どうなったんですか…?」
「柚と1晩を過ごした。これで、柚は吸血鬼になるはずだった。」
そこまで言うと劉磨さんは口を閉じてしまった。
「なるはずだった……?」
「俺のDNAを受け継ぎ、順調に吸血鬼になるはずだった。…でもその日から柚の体に異変が起きた。」
「異変…?」
「柚は普通の人間じゃなかったんだ…。柚の身体には吸血鬼のDNAが入っていた…俺らでも気づかないくらいのわずかな量が…。普通の人間にDNAを送るのとはわけが違い、元から吸血鬼のDNAを持っていると、DNAが結び合わず突然変異を起こすことがある。」
「…突然変異…?」
(「日に日に柚は体を吸血鬼として蝕まれていき、最後には…もう自我を失っていた。そこにいたのは柚じゃなく、ただの血に飢えた獣そのものだった。痛みと苦しみに侵された柚は、屋敷で暴れて何人かは怪我を負った。」
心なしか劉磨さんの肩が震えている。
「俺が…奪っちまったんだ…柚の人生を…未来を。」
こんなにも重い過去だなんて思ってもみなかった。柚さんを愛していたからこそ…彼はこんなにも苦しんだ。
そして、きっと皆も…。
「今…柚さんはどちらにいるんですか…?」
「……。」
「わからない…俺にはわからないんだ。」
「え…?」
「そのときの精神的なショックのせいで、そのあとどうなったかは覚えてないんだ…。皆は俺の前であまり話さないようにしてくれている。だから、きっと柚はもう…。」
ギュッ
気づいたら劉磨さんに抱きついていた。彼の背中があまりにも悲しくて寂しくて、いてもたってもいられなかった。
「ど…して…お前。」
「わかりません…でも、劉磨さんの背中が苦しそうだったから…こうでもしないと消えてしまいそうに見えたから…。」
「なんで…お前が泣くんだよ…。」
「劉磨さんが泣かないから…だから…私が劉磨さんの代わりに泣くんです…。」
「お前は不思議な奴だ。家族を…屋敷を失って…絶望の淵に生きているのに……強い…。」
「吸血鬼は今だって怖いです。でも、大切にしてくれる吸血鬼がいることも分かったから……。」
もう…俺は何も失いたくない。だから…今度こそ守りたい。俺がお前を守る。