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4 - 第4話 『愛してるよ、お兄ちゃん。でも、君を壊すのは多分僕。』🇨🇦×🇺🇸 BL 後半

♥

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2025年07月21日

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ギリセーフやね


前回の続きです😉















部屋の空気は、ひどく澱んでいた。

薬の匂いと、冷めた紅茶と、そして何より、“何もない空間”に向かって喋るカナダの声が、それをさらに重たくする。


「だめだよ、それは言っちゃ。お兄ちゃんは悪くないから……うん、そう……でも、もしまた言うなら――」


それを見ているだけで、胸が痛んだ。

アメリカは、何度目かの限界を迎えていた。


「なあ、それ、やめろよ」


声に、感情がにじんだ。

それでもカナダは、まるで子どもみたいな顔でこちらを振り返る。


「やめろって何を?」


「“あの人”の話。存在しないヤツと喋るの、やめろ。

いないんだよ、最初から。お前の妄想なんだよ全部!!」


カナダの目がわずかに揺れた。けれど、すぐにまた笑った。

その笑顔が、ひどく無垢で、痛々しくて、アメリカは目を逸らしそうになった。


「……妄想、って。どうして?」


「お前が壊れていくの、見てればわかるだろ……!

薬も増えて、眠れてない、ずっと幻覚と喋ってる。……それで“普通”なわけがないだろ!」


アメリカの拳が震える。

怒ってるのか、怖がってるのか、自分でもわからない。


「俺は……ただ、お前を戻したいだけなんだよ……ッ」


思いは本当だった。

助けたい。救いたい。大事な弟を。

それでも、その手が届くたびに、カナダは遠ざかる。



「じゃあ、お兄ちゃんも妄想なのかもしれないね」


小さな呟きに、背筋が凍った。


「僕がずっと愛してるって言ってた“お兄ちゃん”も、実は存在しないただの幻だった。

そういう可能性も、あるよね?」


「……お前、何言って――」


「でも違うよね。お兄ちゃんは確かにいる。今も僕の前にいて、

さっきからずっと“あの人”よりも僕のことを壊そうとしてる。お兄ちゃんの方が、怖いよ」


「怖い……?」


その言葉が、アメリカの胸に深く刺さった。

自分が、弟を“怖がらせている”。

それは、兄として、何よりも惨めだった。


「……だったら、どうすればいいんだよ。

もう、俺には……どうすればいいのかわからない……」


言葉は涙に濡れていた。

カナダはそっと立ち上がり、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

斧には触れない。ただ、やさしい足取りで。


「“いない”って言わないで。“見えない”って言ってよ。

そうすれば僕も、お兄ちゃんの言葉を『嘘』だと処理できるから。

お兄ちゃんが僕の世界を壊すのは、苦しいから」


そして、アメリカの胸元にそっと額を寄せてくる。


「お兄ちゃんが現実に引き戻そうとするたび、僕は息ができなくなる。

だから、ね。いっそ――」


「やめろ……」


「いっそ、ふたりで全部やめちゃえばいいんじゃない?」


「……やめてくれ、カナダ……」


「愛してるよ、お兄ちゃん」


静かに笑った。

やさしくて、冷たくて、そして……どこまでも取り返しがつかない目をしていた。




「でも君を壊すのは、多分僕なんだ」


その瞬間、アメリカは知ってしまった。

このままでは、“ふたり”とも戻れない。

それでも、手を離すことができなかった。


壁の隅で、“誰か”が嗤った気がした。

天使のような笑顔を浮かべた、化け物だった。


そして、カナダが囁く。


「大丈夫。次は、お兄ちゃんの番だよ」


闇の底へと引きずり込まれるように、静かに視界が落ちていく。

逃げる時間は、もう残されていなかった。


……あと少しで、世界はふたりきりになる。

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