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芙月みひろ
92
#王子
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「さ、……寒すぎる……」
全身の震えが止まらず、歯の根が合わずにカチカチと音を立てている。カーテンが揺れる。白石さんが救出に来てくれたのだと確信し、僕は安堵の涙が出そうになった。
(……やっと、やっと帰ってくれたんだ。これで僕は、温かい文明(部屋)に戻れる……っ!)
――だが、現れたのは、白石さんの優しい笑顔ではなかった。
「ひっ、ひえー」
カーテンの隙間から覗いたのは、「魔王の瞳」。
大地さんは――僕の目線とぴったり合う位置で、この世の終わりを告げるような「魔王の笑み」を浮かべていた。窓越しにゆっくりと、しかし確実に唇を動かしてこう告げたのだ。
(『明・日・朝・九・時・デッ・ド・リ・フ・ト・百・回・追・加』)
「…………っ!!(100回!?)」
僕は声にならない叫びを上げ、あまりの絶望に白目を剥きそうになった。大地さんはニヤリと満足げに笑うと、何食わぬ顔でカーテンを閉じた。
ガラッ。ベランダの窓が開いた。
「……陽一さん! 陽一さんっ!! 生きてますか!?」
白石さんは、半裸でガタガタと震え、唇が紫色になった僕を抱きしめた。僕の体は、まるで冷凍マグロのように芯まで冷え切っていた。
「しっかりしてください! 今すぐ蘇生措置(お風呂)を行いますよ!」
白石さんは半泣きになりながら、僕を引きずり、すでにお湯が張られた浴室へと直行する。
湯気が充満する浴室。熱いお湯に浸かった瞬間、冷え切った手足の先がジンジンと痺れ、僕はようやく生きた心地を取り戻した。
「……ふぅ、生き返った……」
しかし、安堵したのも束の間。
「……失礼します。お背中流しに来ました♡」
ドアが開いた。 そこにいたのは──。