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それから、世界は少しずつ壊れ始めた。
大きな破綻じゃない。
誰も騒がない。
ただ、ズレる。
黒板の文字が、
一時間前と違う。
クラスの人数が、
合わない。
ユウの席は、
空いているのに、
最初から無かったみたいに扱われる。
誰も、
不思議がらない。
俺だけが、
覚えている。
⸻
ミオは、
変わらない。
ミオ「今日さ、数学の小テストあったよね?」
「……あったっけ」
ミオ「え?
あったよ」
ミオ「だって、
あなた、
最初に終わってたじゃん」
俺は、
答えられない。
その時間、
俺はまだ――
“起きていなかった”。
⸻
昼休み。
スマホが震える。
通知は、
来ていない。
でも、
アプリを開くと、
既読がついている。
【アリウム】
まだ、信じないか。
まあいい。
君はいつも、
自分が壊れるまで
信じない。
ユウは、
もう次の段階に行った。
冤罪は、
「失敗」じゃない。
正解だ。
胸が、
締め付けられる。
「正解……?」
君が戻るたび、
彼は
“社会に不要な存在”として
固定されていく。
それが、
世界の帳尻合わせだ。
代わりに、
ミオは残る。
君のために。
_________
スマホを、
伏せる。
吐き気がした。
放課後。
ミオが、
鞄を持って立っている。
ミオ「一緒に帰ろ」
その言葉が、
胸に刺さる。
帰る?
どこへ?
この世界は、
俺のものじゃない。
それでも、
頷いてしまう。
歩いている途中、
ガラスに映る自分の顔。
知らない。
目が、
少し濁っている。
ミオ「ねえ」
ミオ「最近、
私のこと、
ちゃんと見てる?」
「……見てる」
ミオ「嘘」
ミオ「あなた、
私の“向こう”を
見てる」
俺は、
足を止める。
ミオも、
止まる。
ミオ「ねえ」
ミオ「私、
あなたに
何かされた?」
空気が、
凍る。
「……してない」
ミオ「そっか」
その返事が、
一番、
胸糞悪かった。
疑っているのに、
信じることを
選ばされている声。
_________
夜。
夢を見る。
でも、
夢じゃない。
何度も戻った、
“あの朝”。
チャイム。
教室。
窓際の席。
今度は、
ミオがいない。
代わりに、
知らない女子が座っている。
「ミオは?」
誰も、
答えない。
黒板には、
紫色の花が
描かれている。
アリウム。
_________
目が覚める。
スマホが震える。
【アリウム】
次は、
彼女の番だ。
君が選ばなければ、
世界が選ぶ。
もう、
巻き戻しは
“救済”じゃない。
ただの、
消費だ。
_________
俺は、
スマホを握り潰しそうになる。
……ああ。
分かっている。
俺はもう、
「戻りたい」んじゃない。
失うのが、
怖いだけだ。
それが、
どれだけの人生を
踏み潰すことか、
分かっているのに。