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エメラはアディから離れて向かい合うと、礼儀正しく両手を前に揃えて祝辞を述べる。
「ご卒業おめでとうございます、アディ様」
アディはニコニコして再びエメラに歩み寄る。
「僕は、これからは魔獣界で暮らして働くよ。よろしくね、エメ姉」
「はい。よろしくお願い致しますわ」
アディは未来の魔獣王を目指している。その理由は幼い頃からずっと変わらない。自分が玉座に座り、その隣にエメラを座らせたい。
キザなアディだが、ずっと一途にエメラを想い続けているのだ。長寿の魔獣どうしであるからこそ、何百歳もの年の差恋愛も可能なのだ。
そっと、エメラの耳元に唇を近付けてアディは囁く。
「僕が魔獣王になったら結婚しようね」
「え、あ、アディ様っ……」
戸惑うエメラに構わず、アディは彼女の細い腰を抱いて強引に引き寄せる。
エメラはアディの顔を見上げて、いつの間に彼の背はこんなに伸びたのだろうと驚いてしまう。
幼い頃からのアディを見守ってきたエメラにとっては、その驚くべき成長が感慨深くもある。
「ねえ、キスしよ」
「そんな、ま、まだ、いけませんわっ……!」
「高校卒業したから解禁だよね」
「……っ!?」
押し退けようと弱々しく抵抗するエメラの片腕を掴んで拘束すると、あっという間に口付けてしまう。
真っ赤になって茫然自失しているエメラを見てアディは無邪気に笑うと、今度は背中を向ける。
玉座の間から立ち去ろうとする仕草を見せて、顔だけで振り向く。
「エメ姉、愛してる。そのペンダント、似合ってるよ」
それだけを言い残して、アディは玉座の階段を下りると出入り口の扉の方へと歩いていく。
ストレートで甘すぎるアディの愛の言葉。心も意識も奪われたエメラは、完全に放心状態に陥っていた。
アディが玉座の間から立ち去って少しすると、ようやく思考が動きだした。
(ペンダント? 何の事でしょうか)
今日のエメラは、ペンダントは身に着けていないはず。
そっと自分の首回りを手で触れて確認してみると、そこには確かに細いチェーンの感触。それを辿って胸元を確認すると、そこには小さな青い宝石が煌めいていた。
(……いつの間に……)
いつ、アディはエメラの首にペンダントを着けたのだろうか。おそらく先ほど背後から抱きつかれた時だろうと、エメラはようやく気付いた。
魔界と魔獣界では、求婚の際に指輪やペンダントなどの装飾品に自らの魔力を込めて相手に贈るという風習がある。
アディを象徴するかのような、爽やかなブルーの宝石。海のごとく深い愛と魔力が込められた、このペンダントはアディからの婚約の証。
エメラは宝石を両手で包むと目を閉じて、確かなアディの愛を感じ取る。
(アディ様……)
知らぬ間に受け取ったとはいえ、そのペンダントを身に着けたエメラは求婚を受け入れた事になる。
今、この瞬間にエメラとアディは婚約したのだ。
エメラ自身も確かにアディを愛してはいる。だが、アディに愛されれば愛されるほど、幸せよりも罪悪感の胸の痛みを感じてしまう。
見つめ合った瞬間も、キスの瞬間も、その声すらも。
アディの姿に、かつて愛した魔獣王ディアのおもかげを重ねてしまう罪悪感を。
コメント
1件
うわ、アディくん卒業してすぐにプロポーズとかキスとか、めっちゃストレートで甘々やん…!でもエメラがペンダントに気づいてないところとか、アディがこっそり着けてたのがもう愛重すぎて笑ったわ。最後の「罪悪感」で一気に切なくなった。ディア王の面影、これからどうなるんやろ…続きが気になる🔥
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星輝
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桜咲かな
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