テラーノベル
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祐希を見つけたのは、練習が終わったあとだった。
達宣は、少し離れた場所から祐希を見ていた。
声をかける。
それだけのことが、今日はやけに難しい。
でも、もう決めていた。
「……祐希さん」
祐希が振り返る。
「大塚。どうした?」
いつも通りの声。
それだけで、少し安心した。
「ちょっと、話したいことがあって」
「うん。いいよ」
二人で、静かな場所に移動した。
達宣は、何度か息を吸ってから口を開いた。
「この前のこと……ずっと考えてました」
祐希の表情が、ほんの少しだけ真剣になる。
「うん」
「俺、最初はよくわかんなくて。祐希さんのこと、すごく好きだけど……それが祐希さんの言ってくれた好きと同じなのか、わかんなかったんです」
正直に話す。
うまく言えているかはわからない。
でも、ちゃんと伝えたかった。
「でも、祐希さんと話せない日があると、なんか物足りなくて。話せたらすごくうれしくて。……隣にいるのが、自分の中で、当たり前になってたんです」
達宣は一度、視線を落とした。
「それで、祐希さんが俺のこと好きだって言ってくれて。もし、今までみたいに一緒にいられなくなったらって考えたら……嫌だなって思って」
言葉にすると、少しずつ気持ちが形になっていく。
「俺、祐希さんの隣にいたいです」
顔を上げる。
「これからも、ずっと」
祐希は黙って聞いていた。
達宣は緊張で手を握りしめながら、最後の言葉を口にした。
「……俺も、祐希さんが好きです」
一瞬、音が消えたような気がした。
祐希は、すぐには返事をしなかった。
いつも落ち着いているその人が、ほんの少しだけ目を見開いていた。
「……本当に?」
思わず、そんな言葉が出た。
達宣は恥ずかしそうに笑った。
「……はい。も、もう言いませんからね……」
「…うん」
祐希は笑った。
いつも通りの、穏やかな笑顔。
けれど、その目元は少しだけ緩んでいた。
本当は、抱きしめたいくらいうれしかった。
ずっと欲しかった言葉だった。
けれど、達宣が勇気を出して伝えてくれた気持ちを、驚かせるような形で受け止めたくなかった。
だから、祐希はゆっくりと尋ねた。
「……じゃあ、俺と付き合ってくれる?」
達宣は、頬を赤くしたまま頷いた。
「……はい」
「ありがとう、大塚」
その声があまりにも優しくて、達宣はますます顔を上げられなくなった。
「……なんか、恥ずかしいです」
「うん」
「祐希さん、普通すぎません?」
「普通にしてるつもりなだけなんだけど」
「絶対うそ……!」
祐希は小さく笑った。
「……すごくうれしいよ」
その一言に、達宣は黙り込んだ。
祐希の声は落ち着いていた。
でも、今まで聞いてきたどの「うれしい」よりも、心に残った。
「……俺も、うれしいです」
達宣は、少しだけ祐希のほうへ近づいた。
今まで何度も自然にしてきたことなのに、今日は少しだけ勇気が必要だった。
祐希は、その距離をそのまま受け入れた。
触れるか触れないかの距離で、二人は並んで立っていた。
恋人になったからといって、急に何かが変わるわけではない。
でも、もうひとつだけ、確かなことがあった。
今までずっと隣にいたかった相手が。
これからも隣にいてほしいと、同じように願ってくれている。
それが、たまらなくうれしかった。
コメント
2件
ほんとに書き方だいすきです💓💓
憂海歌
1,727
Haru
740
心
745