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ゆゆゆゆ
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ゆゆゆゆ
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その日。
FORSAKENは滅びかけていた。
少なくとも。
ノスフェラトゥの中では。
完全に。
終わっていた。
原因は単純だった。
スペクターが。
本当に何気なく。
紅茶でも飲むような軽さで。
とんでもないことを言ったのである。
「おめでとう、ノスフェラトゥ」
優しい声。
穏やかな笑顔。
嫌な予感しかしない。
「君はもう完璧だ」
ノスフェラトゥが顔を上げる。
少し嬉しそうだった。
褒められた。
主に。
褒められた。
だが。
次の瞬間。
世界が終わる。
「だから今日で調教は卒業だよ」
沈黙。
「……」
沈黙。
「……え?」
さらに。
追撃。
「首輪もなし」
「命令もなし」
「好きに生きるといい」
終わった。
完全に終わった。
ノスフェラトゥの魂が。
すぽん。
口から半分ほど抜けた。
「自由だ」
自由。
かつて。
ノスフェラトゥが愛した言葉。
誰にも支配されない。
誰にも縛られない。
王として誇った生き方。
しかし。
今の彼にとって。
それは。
死刑宣告だった。
「じ……自由……?」
声が震える。
「そうだよ」
スペクターは微笑む。
「卒業おめでとう」
優しい。
ものすごく優しい。
だから余計に残酷だった。
ノスフェラトゥは理解した。
もう命令されない。
もう褒められない。
もう叱られない。
もう。
「良い子だね」
が聞けない。
ガタガタガタガタ。
身体が震え始める。
「あ」
「ノスフェラトゥ?」
「ああ」
「あああ」
「ああああああああああ」
崩れ落ちた。
そのまま床へ。
完全敗北。
数時間後。
ノスフェラトゥは自室に引きこもっていた。
アズールが来た。
「自由の身じゃない」
ホスフォラスも来た。
「おめでとー!」
ノスフェラトゥは返事をしない。
死んだ目をしている。
二人は察した。
「あ、重症だこれ」
「重症だね」
だが。
彼らは知らなかった。
この古代吸血鬼が。
静かに。
とんでもない決意を固めていたことを。
夜。
ノスフェラトゥは立ち上がった。
目が据わっている。
危険な目だった。
「自由など認めん」
誰もいない部屋で呟く。
「私を自由にするなど」
拳を握る。
「断じて認めん」
方向性がおかしい。
完全におかしい。
普通は自由を勝ち取る。
だが彼は違った。
自由を拒否する。
全力で。
机に向かう。
羊皮紙を出す。
ペンを握る。
そして。
シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ!!!
書き始めた。
凄まじい速度。
羽ペンが悲鳴を上げる。
内容は。
反逆計画ではない。
革命宣言でもない。
ましてや遺書でもない。
題名。
『私を再び飼うべき理由について』
終わっている。
完全に終わっている。
「第一章」
「私がどれほど主の命令に依存しているか」
書く。
「第二章」
「自由にされた場合の精神崩壊予測」
書く。
「第三章」
「私を放置した場合のFORSAKENへの経済的損失」
書く。
「第四章」
「首輪の適正締付け強度についての提言」
書く。
「第五章」
「撫でられた際の幸福度統計」
書く。
誰も頼んでいない。
本当に誰も頼んでいない。
だが書く。
徹夜。
また徹夜。
さらに徹夜。
三日後。
完成。
三万文字。
狂気だった。
ノスフェラトゥはふらふらになりながら。
スペクターの私室へ向かった。
コンコン。
「入りなさい」
扉が開く。
そして。
ドォン。
巨大な紙束が机に置かれた。
スペクターが固まる。
「……何だいこれは」
ノスフェラトゥは跪いた。
美しく。
完璧に。
そして涙目で言う。
「私の魂です」
重い。
非常に重い。
「お読みください」
「嫌な予感がするね」
「三万文字です」
「長いね」
「私がどれほどお前の犬としてしか生きられないかを証明しました」
「重いね」
「自由撤回申請書です」
「重すぎるね」
スペクターは紙束を見る。
ノスフェラトゥを見る。
紙束を見る。
ノスフェラトゥを見る。
そして。
吹き出した。
「くくっ」
肩が震える。
「ふふっ」
もう駄目だった。
笑いが止まらない。
「本当に君は」
「……」
「面白いね」
ノスフェラトゥの目が潤む。
褒められた。
今。
褒められた。
スペクターは引き出しを開く。
そして。
取り出した。
黒い革の首輪。
見慣れたそれ。
ノスフェラトゥの瞳が見開かれる。
「そこまでして縛られたいなら」
スペクターは笑う。
楽しそうに。
本当に楽しそうに。
「ちゃんとおねだりしなさい」
首輪を揺らす。
「そうしたら」
優しい声。
甘い声。
逃げ場のない声。
「また閉じ込めてあげるよ」
その瞬間。
ノスフェラトゥの顔に。
世界で一番幸せそうな笑顔が咲いた。
「ああ……っ!」
涙が溢れる。
「お願いします……!」
即答だった。
一秒も迷わなかった。
「どうか私に首輪を……!」
自由。
敗北。
完全敗北。
こうして。
世界でたった一人。
自由を勝ち取り。
全力で返却し。
三万文字かけて再就職した古代吸血鬼は。
今日も幸せそうに。
主の足元へ戻っていくのだった。
コメント
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自由を求めてたのに自由が苦になるとはww