静かな夜、誰もいない花畑に、またあの人がやってくる
「……」
「あの…琴サン?」
「……」
「き、聞こえてるよね…?」
さっきから声をかけてくるのは狛枝だった
私に会うために、いつもこの花畑へやってくる
本来はこんな場所なんてなかったはずなのに、私達はここにいる
「む、無視はやめてくれない…?」
「…要件は?」
「あ、やっと喋ってくれた…」
「えっと…なんでいつもここにいるのかなって…」
「なんでって…知ってるでしょ?ここは私の居場所なの」
なぜ、そんな当たり前のことを聞いてくるのか分からなかった
狛枝はいつも意味がわからないことを聞いてくることがあるからあまり聞きたくない
「いや…居場所なんてもっとあるでしょ…?」
「例えば?」
「…ジャバウォック島にある海辺、とか?」
「…行けたら行くよ」
「来ないやつじゃん…」
「…じゃあ行くって言えばいいの?ここから出れないのに?」
「で、でも!もしかしたらもう大丈夫かもしれないし…」
「はぁ…狛枝、あんたには絶望がお似合いだよ」
「…そっかそうだよね…ボクには絶望がお似合いだもんね…」
そんなことを呟きながら、狛枝はここを去っていった
「…ほんっと、あの頃のはどこに行ったのやら」
私はそんなことを呟きながら、花畑に阻まれている
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!