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「本当に……すみません」
「謝らなくていいよ」
綾井店長の優しい笑顔。
私は、この人にいつも支えてもらっていた。
仕事の時、ミスをしてもフォローしてくれ、すごく大きな心で接してくれた。
龍聖君の事故の時だってそう、店長のおかげで私達は救われた。
そんな店長に、仕事を辞めたいと伝えるのは……とても心苦しかった。
「いつ言われるかと正直ドキドキしてた」
「えっ」
「君は何か覚悟を決めたのかな? ここを辞める理由を聞いてもいい?」
眼鏡、最近新しくしたみたいで……
爽やかなイメージから、少しクールな大人の雰囲気に変わった気がする。もちろん、どちらもすごく似合っていて素敵だけれど。眼鏡は人の印象を左右する大切なアイテムなんだと改めて思った。
「……はい。私、龍聖君と海外で暮らします。彼の仕事に一緒に着いていこうと思ってます」
「そうか………海外に行ってしまうんだね」
「突然決まったことで、本当にすみません」
「謝る必要はないよ。君達は夫婦なんだから」
2人きりの店の中。
みんなが帰ったショールームの明かりはほぼ消えて、一部の照明と外からの明かりがぼんやりと灯っているだけだった。
「でも、君がいなくなるのはやっぱり寂しいね。ずっと近くにいてくれたら……なんて、少し期待してしまってたから。あっ、もちろん、もう琴音ちゃんに言い寄ったりはしないから安心して」
「そ、そんなこと……思ってないです」
「いつまでも未練たらしくて……ごめんね」
私は首を横に振った。
「綾井店長みたいな素敵な男性はなかなかいません。だからどうか、私なんかじゃなく他の女性を………」
「それは……難しいかな。俺は、この先、君以外の女性と仕事以外では関わりたいと思わないから」
急に綾井店長の顔が険しくなった。
どうしたのだろうか?
「そ、それは……どうしてですか? 店長の周りには綺麗な女性がたくさんいるのに」
「……怖いんだ、女性が」
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