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未だ現世への未練が断ち切れない僕、唐澤厚史が三途の川の水面を覗き込むと、長距離バスで一路福岡に向かわんとする兄の姿が浮かび上がってきた。

遅刻した兄を睨む乗客達の視線に、かつてあんな目で兄を見ていた親や親戚のことを思い出し胸が痛む。

「俺は弁護士だ、こいつらとは違う」そう毒づく兄の姿に、よく家柄を鼻にかけていた中学時代の面影がちらついた。

兄が乗る長距離バスは4列。とうに物理的な束縛からは解き放たれた僕にも窮屈そうに映る。

マックを頬張る兄の周りの乗客たちの歪んだ表情は、以前垣間見た川の向こうの地獄の囚人たちのそれと似ていた。

しばらくするとバスは海老名SAで休憩につき、兄は目を爛々とさせて買い食いに興じ始めた。

僕が生きていた頃の父は厳格で、買い食いなど到底許すような人ではなかった。

あれから随分経った今、兄は兄なりに少年時代を取り戻そうとしているのだろう。

兄と過ごした少年時代。様々な思い出の中でも何度となく見た、まぶたの裏に焼き付いて離れないあの兄の姿……

「もぉダメェ!!我慢できないナリ!!漏れちゃうナリィィィィィ!!(ブリブリブリドバドビュパッブブブブゥ!!!!!ジョボボボボジョボボボ!!!!!!!ブバッババブッチッパッパッパパ!!!!!!」

懐かしき追憶と寸分違わぬあの光景が、福岡行きのバスの中で今再現された。

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