テラーノベル
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「……なぁ、ほんまに帰らへん?」
廃校の入り口で、太智はすでに半分泣きそうな顔をしていた。
「大丈夫だって」
勇斗が隣で笑う。
「絶対なんか出るやん、ここ……」
「出ないって」
二人は薄暗い廊下を進んでいく。
今回の仕掛けは、太智を廃校へ連れてきて、幽霊役のスタッフを見せ、驚いて逃げ込んだ掃除用ロッカーに閉じ込めるというシンプルなドッキリだった。
「……勇斗」
「ん?」
「なんか音せえへん?」
「気のせいじゃない?」
「いや、今……」
――ガタンッ。ザッ、ザッ、ザッ
「っ!」
幽霊役が走って向かってくる、太智が飛び上がる。
「うわぁああ!!!で、でたわぁ!!!」
「太智、こっち!」
勇斗が掃除用ロッカーを指差す。
「ここ隠れな!」
「どこ!?」
「早く!」
「怖い怖い怖い!」
太智は勇斗の腕を掴み、そのまま引っ張った。
「勇斗も来てや!」
「え、俺も?」
「一人無理!」
「分かった、分かった!」
二人が狭いロッカーへ滑り込んだ直後、外から扉が閉まる。
ガチャン。
鍵のかかる音が、狭い空間の中でやけに大きく響いた。太智がゆっくり振り返る。
「……うそやん、えっ、えぇ!?勇斗っ」
「うん」
「開かへん」
「……みたいだな」
太智が扉に手をつき押す。金属がかすかに軋むだけで、扉はびくともしない。もう一度、今度は両手で押す。
「……やばいでな…」
ロッカーの中は、二人の向きが変えられないほど狭かった。背中は冷たい金属板に押しつけられ、膝と膝が触れ合っている。少し身じろぎするだけで、肩や腕がぶつかった。太智が扉を見つめたまま、浅く息を吸う。
「さっきのあれ……幽霊やんな?」
「……たぶん」
「うぅ、こわい…出れやんし…なんでや…」
「……誰か開けにきてくれるだろ」
太智の呼吸が少しずつ速くなる。
「はぁっ……はぁっ……どうしよ」
「太智」
「こわい、勇斗……」
勇斗は太智の手を探し、指先に触れた。太智はすぐにその手を掴み、包み込むように握った。太智の指に力がこもる。
もともとリアクションが面白いから『太智を怖がらせて30分ほど閉じ込めてみよう』というスタッフからのひねりも何もない企画だった。しかし二人で入ったことで企画が変わってしまった。それでも勇斗はこんな怖がる太智を一人にしなくて良かったと本当に思った。あまりにも可哀想すぎる。
「……怖い、無理や。…無理…っ」
「じゃあ、俺の声だけ聞いて」
「……うん」
「ゆっくり息して」
太智は勇斗の言葉に合わせて、少しずつ呼吸を整えていく。けれど、外で何かが擦れる音がすると、身体がびくっと跳ねた。
「ひっ、今の何!?」
太智の肩が勇斗の胸にぶつかる。
「風の音だろ」
「……もっと近くきてくれん?」
「これ以上、近づけるかな」
太智が勇斗の服を掴み、身体を寄せる。逃げ場のない姿勢のまま、互いの呼吸だけが近くで聞こえる。
「……はぁっ…はぁ…勇斗、」
「ん?」
「もう怖いの嫌や…っ」
「うん」
「…なぁ…キスしやん?」
勇斗は一瞬、太智の顔を見つめた。
「怖さ、紛らわせたい?」
「…っ…うん……」
「分かった」
勇斗が空いた手を太智の頬へ添える。わずかに震えている。指先が触れると、太智は目を閉じた。唇が、そっと重なる。ほんの短いキスだった。
離れたあとも、太智は目を開けなかった。勇斗の服を掴んだまま、呼吸だけが少しずつ落ち着いていく。
「……もう一回」
「いいよ」
今度は、触れてすぐに離れるのではなく、互いの唇が重なったまま、ゆっくり数秒を過ごす。太智の肩から力が抜けた。離れると、太智はぼんやりと勇斗を見上げる。
「……なんか、ほんまに怖くなくなってきたかも」
「よかった」
「もう一回して」
「ははっ。太智、かわいいねー」
勇斗が小さく笑う。太智の頬を親指で撫で、額を軽く合わせる。近すぎる距離で目を合わせると、太智はとろけるように目を細めた。
「……勇斗」
「ん?」
太智が自分から少し顔を上げる。今度は太智のほうから唇を重ねた。触れて、離れて、また触れる。狭いロッカーの中では大きく動けないから、キスのたびに鼻先や額が触れ、息がかかる距離で何度も目が合った。
太智は最初こそ緊張していたが、次第に身体を預けることに慣れていった。勇斗の胸に頬を寄せ、手を握ったまま、唇が近づくのを待つ。勇斗が頬に口づける。太智が小さく息を漏らす。
「……っ、そこも、ええけど」
「けど?」
「唇がいい」
「分かった」
勇斗は太智の顎をそっと持ち上げ、また唇を重ねた。短く触れては離れ、太智が追いかけるように顔を寄せる。
「……もうちょっと」
「うん」
勇斗が舌を差し入れる。太智が舌で絡み返し、くちゅくちゅと音を立てる。太智の指が勇斗の服を掴み直す。背中が金属板に当たっているのに、もう冷たさは気にならなかった。勇斗の腕が腰を支えてくれていることだけが分かる。唇が離れると、太智はすぐには目を開けなかった。
「……はぁっ…ふわふわする」
「大丈夫?」
「うん……なんか、力抜ける」
「みんなが、絶対来てくれるからな」
「…ん…勇斗、もう一回……」
勇斗は太智の後頭部に手を添え、ゆっくり引き寄せた。キスをするたび、太智の表情は柔らかくなっていった。眉間の緊張は消え、頬は赤く、目元は潤んでいる。怖がっていたはずなのに、今では勇斗の肩に身体を預け、唇が離れると名残惜しそうに追いかける。
「……はぁっ…勇斗」
「ん?」
「みんな来ないなぁ……」
「そうだな」
「いつ出られるんやろ……」
勇斗は答えなかった。太智はそのことに気づかないまま、また勇斗の胸元へ顔を埋める。
「……でも、勇斗と一緒やったらええか」
太智はふわりと笑った。勇斗がその表情を見つめ、また唇を重ねる。ふたりは指を絡め、握ったまま離さない。外から物音がしても、今度はすぐには怯えなかった。
「……今の、聞こえた?」
「うん」
「怖い?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、もう一回する?」
「……する」
太智が目を閉じる。勇斗は急がず、太智の呼吸が落ち着くのを待ってから、ゆっくり唇を重ねた。
何度も、何度も。キスを交わす。もう自分が怖いのか、酸欠なのか、気持ちいのかもわからない。時間の感覚はとうに失われていた。太智はすっかり蕩けてしまって、勇斗の肩に頭を預けたまま、時々小さく「もう一回」と呟く。
そのたびに勇斗は、頬に触れ、手を握り、長く優しく口の中を全て確かめるようにキスをする。やがて、外で誰かが鍵を回す音がした。太智には、その音も聞こえていなかった。勇斗が顔を上げる。
「太智」
「……んー…」
「扉、開くかも」
太智は眠たそうに目を細め、勇斗の服を掴んだ。
「よかったわ……」
「うん」
扉の向こうで、舜太が声をかける。
「太ちゃん!大丈夫――」
太智には、その声も届いていない。
ガチャ。
扉が開いた。
「うわっ!」
舜太が勢いよく扉を開ける。狭いロッカーの中で、勇斗は太智の腰を支え、太智は勇斗の胸に寄りかかったまま、目を閉じていた。
「太ちゃん?」
舜太が心配そうに覗き込む。勇斗が先に身体を出し、太智の腕を支えながら外へ出そうとする。しかし、太智の足は床についた途端、ふにゃりと崩れた。
「太智!」
勇斗がすぐに腰を抱える。
「大丈夫?」
「……ん……」
太智は焦点の合わない目で勇斗を見上げた。頬は赤く、唇も少し赤い。目元は潤んだままで、表情はすっかりとろけている。
「…腰抜けた?」
「……たぶん」
太智は力なく勇斗の胸元へ寄りかかった。
舜太がすぐに駆け寄る。
「太ちゃん、大丈夫?」
「……うん」
舜太は本気で心配そうに、太智の顔を覗き込む。
「もう大丈夫やからな。出られたし」
「ありがと、舜ちゃん」
「立てる?」
「……分からへん」
太智が足に力を入れようとする。けれど、膝が震え、身体がまた勇斗へ沈み込んだ。
「無理しなくていいよ」
勇斗が背中を優しく撫でる。
「……うん……」
太智はぼんやりと頷く。その様子を見て、仁人がゆっくり勇斗へ近づいた。
「……勇斗」
「ん?」
「お前、やったな?」
「……何が?」
「何がじゃねぇよ」
柔太朗も腕を組み、太智と勇斗を交互に見る。
「勇ちゃん、やってるね」
「だから何もしてないって」
「いやいや」
仁人が太智を指差す。
「太智、腰抜けてんだけど」
「怖かったんだろ」
「それにしてもだよ」
「本当に怖がってたから、支えてただけ」
柔太朗がじっと勇斗を見る。
「じゃあ、なんで太ちゃん、あんなにとろーんとした顔してんの?」
「……知らない」
太智はその会話も半分しか聞いていないようだった。勇斗の胸元に頬を寄せたまま、目を細めている。
「……勇斗」
「ん?」
「帰りたい……」
「わかった」
勇斗が太智の膝裏に腕を入れる。
「え?」
太智の身体が、ひょいと持ち上がった。
「……勇斗?」
「歩けないんだろ」
「……うん」
「じゃあ俺が持ってく」
太智は驚く様子もほとんどなく、反射的に勇斗の首へ腕を回した。
「……重くない?」
「重い。まぁタクシーまでなら運べるよ」
太智は勇斗の肩に頬を預ける。
「……じゃあ、お願い」
「任せろ。太智と先帰るわ、締め頼む」
仁人が呆れたように見送る。
「……しれっと持って帰るんだな」
「…ほんとだよ。てか、今日のやつお蔵入りだね。太ちゃん顔、えろすぎて見せれないもん」
柔太朗も呆れて笑う。舜太は太智の背中を心配そうに見ながら、手を振った。
「太ちゃん、帰ったらゆっくり休むんやで〜」
「……ありがとなー…」
太智は勇斗の腕の中で、戻らないふわふわ顔のまま頷いた。勇斗は何事もなかったかのように、太智を抱っこして歩き出す。そして、ドッキリとは誰にも説明されないまま、太智はしれっと勇斗の家へ連れられていった。
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ミリオン祝いのインライで五人全員特大笑顔で終了してみんなかわいくて沼。
プレミルと💙のキラリしか入ってないんですが、他の人のも気になってきました。
コメント
6件
はあんもう雰囲気がぁ‼️‼️‼️🥹🥹🥹まじでだいすき‼️‼️‼️えろし‼️‼️‼️最高すぎるもう神🤩🤩🌟🌟
キスでトロけちゃう💙かわいいです💓いっぱい🩷に可愛がってもらって欲しいです😂 昨日のインライすごく良かったですよね…多分💙オタクは大量に釣れてます…笑
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#そのさの
うさぎ💗
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