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歌をなくした日、優しさに会う
―彼と、癒しの夜
放課後の校舎に、その日も太陽の光が差し込んだ
その中〇〇が好きな歌を歌っていた昼休み
けれど、その声はクラスの中で浮いてしまった
クラスメイトの冷たい笑い声が〇〇の心に突き刺さった
「何その変な歌」
「下手なくせに」
「うるせーな」
全身に重たい痛みが走ったのはその直後だった
突然背中を押され、殴られ、気づけば床に転がされていた、
誰かが蹴った…、?
誰かが手を振り下ろした…
痛い、怖い、そんな気持ちがあって何も言えなかった
叫ぼうとしても、声は喉の奥に消えただけ
その後はなにも覚えていない
気がつけば、ほこりの匂いと冷たい床の上
制服は破れ、腕には大量の擦り傷、膝には大きな青いあざ
何よりもあんなに楽しかった歌が自分の中から黒く染まったような気がした
大好きな歌が…好きなことが全てぐちゃぐちゃにされたんだ、
そんな事を思いながら足を引きずりながら帰る帰り道
何がダメだったのかな、何が悪いのかな、泣きそうな心を必死に押し殺して歩いた
それでも玄関のドアにたどり着いて扉を開いた瞬間
「おかえりなさい」
と優しい声が聞こえた
きつね…さん…、?―
いつもの優しい声、
家に入ろうとした時には、足元がふらついてよろけた
狐さんは倒れそうになった私を支えるように抱きしめた
「大丈夫じゃないですよね、?〇〇さん、
……今日は、ずいぶん辛い日だったのですね、」
狐さんの腕の中で〇〇はやっと声を出して泣くことができた、
涙も、痛みも、悔しさも、全部いっぺんに溢れ出した
狐さんは何も言わずに、ただ背中をやさしくなでつづけてくれた
その時、傷がひりひり、ずきずきと心にも不思議と痛みが伝わった
「泣いていいんですよ、むしろ今日は泣いてください
いっぱい泣いてくださいね、頑張ってひとりでこらえてたんですよね
偉かったですよ」
〇〇が泣き止まないまま狐さんはやさしくぎゅっと抱きしめた
何度も何度も「大丈夫です」「私はあなたの味方です」
その声で、少しずつ心がほぐれていくのがわかった
ひたすら泣いて少し息が落ち着いてきた頃
狐さんは優しい手つきで絆創膏や、消毒、薬
湿布を用意してくれる
「痛みますね、本当に頑張りましたね」
「本当は何も悪くないんです
〇〇さんが歌う歌も、その歌声も、誰かの大切な宝物も
誰かに馬鹿にされたからってなくなりません」
狐さんは静かにでも確かな声でそう呟いた
「でも今日の痛いことや辛かったことは無理に平気なフリしなくていいんですよ
泣いても怒っても、悲しんでもその全てが今の貴方です」
そう言われた頃にはもう〇〇はすーすーと寝息をたてていた
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡50