テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#不定期
れな ♪
50
42
柚華-유화@受験生低浮上
101
───
ルカスは皆に話をするため、手を止めてもらい集まってもらった。そして、診察の結果を執事達に話し始めた。
「っ、ルカス様は…主様が何の病気か分かったんですか?」
「…うん。おそらく免疫系の病気ではないかと思っているよ。普段の主様の体の不調は全て記録して、日記にも付けているんだけど全ての共通点が免疫力の低下によるものだったんだ。
今の段階ではここまでが限界かな…
診察結果なんだけど…主様は心の重い病気に罹患してたんだ。」
アモンとボスキは、何となく気付いていたもののルカスの口から聞かされると、現実を突き付けられたような感覚になった。
ラムリとナックはやはりといった顔付きをしていた。
「トラウマからのPTSD、反応性愛着障害不安型、不安障害、不安障害に伴った双極症 …今の段階では分かるのはこの程度でしょう。
後、妊娠する事は可能ではあるとは思うよ。結果だけ言うと、分かりづらいから詳しく言うと…
トラウマとは〈命の危険や強い恐怖を伴う出来事で負った心の傷〉そのものを指し、PTSDは〈その傷が原因で日常生活に支障をきたすほど長引いている状態(疾患)〉を指すんです。
トラウマ自体は誰でも経験し得る正常な反応ですが、悪夢やフラッシュバックが1ヶ月以上続くとPTSDと診断されるんですよ。
…主様は、彼が亡くなったその日からトラウマを負い、ずっとPTSDに悩まされていたようです。
それに加えて、愛着障害はお父様からの過度なプレッシャーや幼少期からの家庭環境から来てそうですね…
皮肉な事に、私達執事皆に体を許して頂けるのはおそらく不安型だからこそだと思っています。
不安障害になりやすい性格には、真面目で責任感が強い、完璧主義、他人の評価を気にしやすい、といった特徴があるんですが
主様は元々不安障害になりやすい特性があったようですね。気を付けないといけないのはここからです。
双極症の方は自●を試みたり、実際に自●したりすることがあります。…生涯全体で見ると、一般の人と比べて少なくとも15倍、自●で●亡する可能性が高くなります。
主様は未遂ではありますが、幾度か試みた経験があると仰っていました。…必ず誰か1人以上ついて主様の側から離れないように心掛けましょう。」
その場に居た執事達はルカスの言葉に息を呑んだ。
自身達と同じように絶望という苦しみを体験した主の事を思うと、胸が張り裂けそうなくらい耐え難いものだった。
「…◯◯さん、言ってたんすよ。誰かが傷付くのは嫌だって。…自分の周りの人が居なくなるのが怖いって。」
アモンが泣きそうな顔をしながら、口を開いた。それに続けてボスキも話し始めた。
「そういや◯◯はいつも俺の目と義手の事を心配してくれてたな…義手の付け根が痛んだ時はいつも気付いて擦ってくれてた。」
「…僕が嫌な夢を見た時に主様に会いに行ったら、主様はいつも何も言わずに頭を撫でて抱き締めてくれてた。」
ナックはラムリがたまに主の部屋に行く事を気にしていたが、そんな事をしていたとは思っていなかった。
そしてナックも…いつも主に睡眠は大切だよ!と体の心配をしてくれた事を思い出した。
皆それぞれ主に助けられていた。
だからこそ、主のために命を賭けて守りたいといつも以上にその時は皆強く思ったのだった。
主の仕事が終わり鍵を開けると─
「おかえり【なさいませ 】主様/○○【さん】」
執事達は玄関口の左側に3階の執事達、右側にはアモンとボスキが立ち、姿勢を正し丁寧に挨拶をした。
「ただいま、皆。いつもありがとう。」
後輩は人数が増えるとまるで映画のワンシーンを見ているようで、圧倒された。
ラムリはまた来たと言わんばかりの顔で後輩の方を見た。それに気付いた主はラムリの頭を撫で、優しい声で言った。
「ラムリ、この人は私の大切な後輩なの。よろしくね?ラムリの事、頼りにしてるよ?」
ラムリは主の言葉1つで喜び、主の事をギューっと抱き締めた。それを見たナックは注意したが、なかなか主から離れる事はなく結局離れたのは、主がお風呂に入る時だった。
主が部屋に居ない間、後輩にルカスの話を共有した。主が仕事で執事達が側に居られない時、頼れるのは後輩だけだったからだ。後輩は主の過去は聞いたがここまで主が頑張ってきていた事に涙した。
「…ですから、私達が居ない間の事は貴方に頼みたいと思いまして、いかがでしょうか?…主様に想いを寄せている貴方にとっても、けして悪い相談ではないかと思います。」
またもや後輩は、アモンとボスキに続きルカスにまで自身の気持ちを見透かされ動揺してしまった。
「…あの、俺は男なんで◯◯さんといつも一緒に居られる訳ではないんですけど、それでも良いんですか?」
「はい♪私が潜入しても良いのですが…少々目立ってしまいますから。だったら…最初から居る貴方に頼むのが1番です。
もし…私達の主様を傷付ける事があれば、命はないと思って頂ければ幸いです。」
ルカスの顔は笑っているように見えるが、目は笑っておらず、殺気に満ち溢れていた。
「そ、そんな事はしないです!◯◯さんの事は俺にとっても…大切な人ですから。」
ルカスと後輩が話している時─
「私がどうかした?」
お風呂から上がった主が、後輩に後ろから声を掛けた。お風呂から上がりたてで髪が多少濡れていて、蒸気で頬が赤くなっていた主が色っぽくて後輩は視線を逸らした。
「あ…いえ、前の事もあって職場に居る時は◯◯さんの事をよろしくと言われてたところなんです。」
当たり障りのないよう、不自然さを出さずに後輩は言葉を選んで話した。すると主はありがとうと言い、アモンに髪を乾かしてもらいに行った。
そして、3階の執事達は溜まっている仕事と他の執事達にも共有をするため、1度屋敷に戻る事になった。
ラムリは駄々をこねていたが、また主の世界に連れてくると約束をし屋敷に帰した。
後輩は編集、最終確認も終わり、診療部長へ音声データを告発文と一緒に送信しアモンとボスキの前で、スマホやPCに残ったデータを消し、全ての作業はこれで終わった。
(…これで終わり。これで、◯◯さんとはもう必要以上にこうして会える事はない。もう…)
主は後輩から元気がない事に気付き、どうかした?と問い掛けた。
「…少し、お時間よろしいですか?アモンさんとボスキさんも、少しの間だけ…席を外してくれると嬉しいです。」
アモンとボスキは執事として、主の言葉を待った。
「…アモン、ボスキ、少しだけで良いから席を外してくれるかな?…大丈夫。心配要らないから。」
アモンとボスキは隣の部屋に行き、いつでも何かあった時の対応が出来るように待機していた。
主と後輩は2人きりになり、いつもとは違い少しの緊張感と少しの甘い雰囲気が漂っていた。その雰囲気を切るように主は後輩に声を掛けた。
「どしたの?何かあった?」
主の優しい声が後輩の耳をくすぶる。主の声が心地良くて、心を奪われるような感覚があり後輩の心臓の鼓動が早くなった。
「○○さん、俺は○○さんの事が好きです。俺はアモンさんみたいに器用じゃないし、ボスキさんみたいな強さもない、他の執事さん達みたいに出来る事はないかもしれません。
それでも、…俺は俺なりの愛し方でずっと○○さんの事を好きで居たいです。俺の事も…見てくれませんか?
あ、安心して下さい。振られてもルカスさんとの約束はちゃんと果たします。 ○○さんには傷付いて欲しくないですから。俺も○○さんにしてあげられる事が出来て、嬉しいんです。」
主は後輩がどれだけ自身の事を好きで居てくれているのかを、実感した。後輩の少しだけ震える声と手がどれだけ勇気を出して告白してくれているのかを物語っていたからだ。
後輩は、伝えたい想いをなかなか言葉に出来ない事にやきもきしていた。そんな中、主は後輩の震える手を取って話し掛けた。
「…そんなに私の事、好きで居てくれるの?私は皆に守られてばかりで何も出来ないのに…」
「それは違いますよ!…アモンさんもボスキさんも○○さんの優しさにたくさん救われてます。この数日一緒に居て分かったんです。
アモンさんもボスキさんも◯◯さんには何も見返りなんて求めてなくて、ただ◯◯さんの心優しさが人の心を救っているんだって!
◯◯さんの優しさは誰もが魅了させられてしまうくらいに、心の傷を優しく包んでくれるんです。
…俺も◯◯さんに救われた身ですから、分かるんです。◯◯さんからしたらどうでもない事でも、俺は確実に救われたんです。」
(俺は…貴女の優しさと力強さを知ってます。そして、ちょっと頑固だけどその頑固なところに芯があってちゃんと筋が通ってる。そんな貴女の事が大好きなんです…)
後輩は主に握り締められた手を握り返し、両手で包み込んだ。 主は後輩のごつごつした男らしい手を感じ、少し鼓動が早くなった。
「◯◯さん、好きです。」
主は後輩の顔から目を離す事が出来ず、手から伝わる後輩の温かさを感じた。後輩の優しい声が耳をくすぶった。
「俺は…執事じゃないから駄目ですか?」
主は初めて知った後輩の気持ちを胸が痛くなる程に感じ取った。勇気を振り絞って頑張って言ってくれたんだと、執事達の事を知ってもそれでもひたすらに好きで居てくれる後輩の事を、無下には出来ないと思ってしまった。
(…アモン、ボスキ、私は…)
「執事じゃないから駄目だとは言わないよ。そんなの不公平だもんね。私はちゃんと皆1人1人見てるよ。」
空気感が少しだけ変わった。まるでナイフで甘い空間を刺したような…
「でも…私ね、まだ誰にも話していない事があるの。 病気なの。2つの自己免疫疾患。1つは膠原病…△△君なら何が言いたいのか分かるよね?
どちらも寛解の状態ではあるけど、どちらも妊娠と相性はあまり良くない。」
後輩は主が何を言い出しているのか分からなかった。なんでその話を今、しているのか分からなかったが、身を引いて欲しくて話し始めたのが、バレバレだった。
「◯◯さん、俺は引きません。内分泌と膠原病どちらの病気も俺の専門分野です。 だったら、全て俺に任せてもらえませんか?◯◯さんには…ずっと笑っていて欲しいんです。
◯◯さんの事が大好きなんです…」
後輩はそう言って、主の事を抱き締めた。
後輩の真っ直ぐな気持ちが主の心を少しずつ動かしていく。心が少しずつ温かくなっていくのを感じた。それは執事達と同じくらいの熱量を後輩には感じるものがあった。
主は少しだけ迷ったが、後輩の背中に腕を回し、抱き締め返し後輩の鼓動に耳を傾けた。
「…物好きね。」
コメント
1件
第15話、読み終えました。ルカスが皆に診断結果を伝える場面、一つ一つの病名と症状の説明に重みがあって、心臓がぎゅっとなりました。それでも、後輩の「俺は引きません」という真っ直ぐな告白…あの場面の空気感がとても好きです。最後の「物好きね」という主の台詞に、優しさと少しの切なさが滲んでいて、何度も読み返しました。