テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
かーりん
209
シャケ握り
13,346
#我々だ
紅茶@推し多
46
ぴくと さん 「」
その他 『』
第1章 1話「だめだ」
「ん〜〜……、はぁ…..」
授業を受けながら、やっぱり朝のことが気になってしょうがない。
なにも盗られてなかった上、鍵もしっかり閉まっていた。
「いたずらにしちゃあ…なぁ……」
ぶつぶつひとりごとをいう。
『おい、目の前に座っておいて授業に関係のない考え事とは、さぞこの範囲は余裕なんだろうな?』
「っあ、す、すみません…。」
やべ、今日は、というよりほとんどいつも最後らへんに来るせいで、前の席、しかも今日は教授に1番近い席しか空いてなかったのに……。
後ろからクスクスと聞こえる。教授もふんっと小さくいいながら授業に戻った。
「はぁ…」
『どうしたんだよぴくと。今日やけにため息多いわ落ち込んでるわ、なんかあった?』
授業が終わり、大学の友達がいつものように俺に話しかけてくれた。
「あ、あぁ…まぁ、ちょっとな。調子悪くて。」
いっても良かったけど、信じてくれないだろうからなぁ。なんて思い、はぐらかす。
『そうか、それよか今日一緒にゲームしね?』
「お、いい…あ、ちょっと待って、今日バイトだわ。わりw」
嘘。ほんとはバイトなんてないが、花弁の片付けと、ついでに行きたいところがあったので、それらしい理由で断った。
あ、あと今日配信しようとも思ってたな。
『あーそうか、どうせ夜までなんだろ?じゃあまた今度やろうぜ。じゃ、俺あと1限あるから行くわ。』
「悪いな、また明日。授業がんばれよ〜〜」
そういって背を向けて歩いてく友達に手を振った。
まだ配信始めたこととか、どこでバイトしてるかとかあいつは知らないし、嘘もバレないだろ。
といっても、少し罪悪感がある。人間だしな。しょうがない。そんなことを思いながら、教室を出た。
電車に乗りながら、携帯であることを調べていた。
あの花弁は、なんの花だろうか。
赤い花弁の花、と調べてはいるが、そんなものいっぱいあって正直、見分けがつかない。
画像の欄のスワイプを続けていると、
「あ、これ……?」
見覚えを感じた、少しオレンジがかった赤色の花弁を見つけた。
と同時に、到着駅に着いた。
一旦画面を閉じ、あんな形だった気がするんだよなと考えながら、帰路に着く。
…の前に、あそこ寄らないとな。
向かったのは、お花屋さん。もちろんプレゼントのためでも部屋に飾るためでもない。
あの花弁の正体を突き止めるためだ。
さっきの画像をちらっと確認し、多分これだと思いながら、コミュ障ながらに店員さんに話しかける。
「あの、あの〜〜…、この花置いてますカ?」
ちょっと裏声が出てしまった、恥ずかしい。
『はいはい、えーと、これは…なんだろう、名前、分かりませんか?』
「は、はい!え、えっと、祖母から画像だけ送られてきて…なんの花だと聞いても返信がなかったので、その…」
『あーなるほど。分かりました。店長を呼んでくるので少々お待ちください。』
また嘘をついてしまった…というか、店員さんが分からないんじゃあここに置いてないんじゃないか?店長さんも知っているとは限らないだろうな…
なんてもんもんと考えていると、
『あー、はいはい、これ多分柘榴じゃないかな。』
「ざ、ざくろ…?」
『うん、調べてみたら一致するんじゃないですかね。』
……ほんとだ。さっきの花弁とほぼ同じように見える。
『すみませんねぇ、柘榴はうち、置いてないんですよ。取り寄せできますけど、どうしますか?』
「あっ、いや……まだ入用になるかわからないので大丈夫です!すみません、ありがとうございました!」
逃げるようにその場を去った。今度あの前を通るとき少し恥ずかしいな…。
店長と店員さんが、ありがとうございました〜と俺に向かっていってくれている。少し会釈して俺はまた帰路に着いた。
「ザクロ、ザクロかぁ…」
なんだろう、すごくピンと来ない。まぁ家に帰ってからにしよう。
「ただいま〜」
なんて誰もいるわけのない部屋に向かっていう。
靴を脱ぎ、荷物を置いて掃除機を手に取る。
さて、確かめて掃除しようか。
「……え、えっ??!」
寝室のドアを開けると、なんということでしょう。今朝方部屋中に散らばっていた花弁が、ないではありませんか。
「あ、えっ、誰か片付け…っ?いや、ゆ、夢だったか?やっぱり?」
なんだか、恥ずかしい。でも掃除しなくていいのは嬉しい。
ポジティブに考えよう!
せっかく友達に嘘ついて、花屋にまで寄って確かめようとしたのに、残念だ。
いや!掃除の時間を返上してゲームできんじゃん!ヤッタネ!
でも少し疲れた。気が張ってたんだろう。慣れないこともしたし、罪悪感もあった。
「……ねるか。すこし。」
そのまま掃除機を壁に立てかけてベッドに倒れ込む。おやすみ、と心で思いながら、目を閉じ、眠りにつく。案外すぐ眠れた。
「……、…、、て………」
「………き…、…」
「……き、…て……、…」
目を覚ました。さっきまで…なにか夢を見てた気がする。…まぁいいか!所詮夢だしな。
と思い、少しの疲れも取れた所で、時計を見る。17時だった。
「えっ!ゆ、夕方?!」
かんっぜんに寝すぎた!お腹もすごい減ってるし、なによりゲーム!出来なかった!!
「あ〜ぁ~~…」
少しがっかりしながら、寝室を出た。
ふと、何かを忘れている気がした。
振り返る。
なにもない。ただの、いつも通りの質素な寝室だ。
でも、なんだろうか。この…、この、
寝室だけ、異質な感じがする、違和感は…。
…ん?あれ、なんで掃除機、あるんだ?
寝室に置いた記憶のない掃除機を手に取って、元の場所に戻す。
違和感の正体、これか?まぁいいや。ご飯食べて配信しよう!
ー配信中ー
「〜〜でさw、僕いっつも前にいるから教授に目をつけられてるみたいでさw」
他愛のない雑談配信。まだ数人しかいないし、傍から見れば画面に向かってる変な男だ。
「そういえば今日、教授に授業中怒られたんだよね〜、なに他のかんがえご、と、してるんだって……」
…あれ?あの時、なんの考え事してたんだっけ…?そもそも…怒られたりした、か?
「……あ、待ってもうこんな時間か〜!明日も授業あるから寝るわ!じゃねばい!」
少し苦し紛れに配信を終了する。なんだ、また違和感だ。俺、いったい何を…
《だめだ》
…え?
《考えたらだめだ》
俺の声だ。
《考えるな。》
俺の理性が、考えるなと、告げていた。
恐怖を感じた。
だから、なにも、考えないことにした。
「は、はやく寝よう…」
昼から夕方まで寝てたというのに、お風呂に入り歯を磨き、ベッドまで行くのにそこそこの眠気を帯びていた。
怖かった。自分が、自分じゃないような錯覚にまで陥った。
ベッドに入り目を瞑ると、傍から見れば気絶したんじゃないかと思うくらい凄く早く眠れた。
夢は、見なかった。
ー1年後ー
特になにもなく、大学生活を満喫していた。
あの違和感は、思い出さないようにしていた。
そしてそのうち、忘れていた。
少しずつだが、YouTubeの再生伸びてくるようにもなった。……気が、する。
留年もせず3回生になり、また寒い時期。
それは、なんの前触れなく現れた。
「……ふぁあ〜、…、え、なんだこれ。」
赤い花弁だった。
Next ⇒ 10月下旬…?
コメント
1件
読み終えました…! 花弁の謎を追いかけるぴくとのもどかしい日常、すごく引き込まれました。「考えたらだめだ」って自分自身の理性が警告してくるシーン、すごく不穏でゾクっとしましたね…。あの赤い花弁、ザクロだったみたいだけど、なんで消えたんだろう?それに1年後また現れて…これからどうなるのか気になりすぎます。 ぴくとのぼんやりした優しさと、どこか影のある感じがいいです。こういう不穏さをゆっくり育てていく文体、すごく好きです🖤