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くっそ好きなんすけどなんだこれぇぇぇ
こんにちは主です!
今回の小説、超長いので注意(?)です。
あと少し死ネタもあるので、地雷さん注意です…。
今回の小説、物語、分量など色々凝ったり頑張ったので是非呼んでくれると嬉しいです…!
では!
本編
▼▼▼
「ペニガキ君、将来の夢を発表してくれる?」
「はい!」
「僕の将来の夢は…」
「のじゃもサッカー部入んの?」
「まだ仮入部だから、決まってない」
「俺はもう入るつもり。」
「へー」
いつもみたいに意味の無い会話をしながら、先輩達に目をやった。
沢山の先輩が、ボールを蹴ったり、走ったりしている。
俺は、その中の1人の先輩に目がいった。
「うみにゃー!パス!」
「うみにゃ」と呼ばれたその先輩は、ドリブルが上手くて、足が速くて、なにより
イケメンだった。
「あの先輩、イケメンだね」
「え、あ、たしかにね」
思ってた事をそのまま言われたので、少しびっくりした。
「1年3組、ペニガキです」
「よろしくお願いします…」
俺は、のじゃじゃと一緒にサッカー部に入部した。
「あの、ペニガキ…くん?」
「?、はい」
「俺うみにゃって言うんだけど、」
「よろしくね!!」
うみにゃ先輩は元気よくそう言って、眩しい笑顔を見せてくれた。
「は、はい!」
「よろしくお願いします!」
入部して3週間ほど経った
いつの間にか俺は、うみにゃ先輩の弟みたいな存在になっていた。
のじゃから聞かされる噂話は、俺にとって嬉しいものばかりだ。
「のじゃー!」
「ん、何」
「日曜会いてる?一緒にゲーセンでも」
「…ごめん無理」
「え、そう…」
日曜日
のじゃじゃが行けないのは悲しかったけど、できおことゲームセンターに来た。楽しい。
「できおこ取るの下手ww」
「うるせぇ」
「次俺やる………」
「ん、どうした?」
「いや…」
のじゃ……?
見失ってしまったが、確かに見た。ひとりで歩くのじゃじゃを。まぁ、気の所為だろ。遊べないって言ってたし、
ある日、部活で。
ある先輩とボールを磨きながら話していた。
「え、ペニガキくん外部チーム入ってんの」
「はい、本気でサッカー選手目指してて」
「どこのチーム?」
「△○チーム…」
「え!?あそこむっちゃ強いとこじゃん!ペニガキくんすご…」
「いやいや、全然すごくないですよ、w」
少し照れる。
空っぽの水筒を持って、水道に行っていた。
そしたら、
「なぁペニガキ、」
「え、のじゃ……何?」
久しぶりに話したな…
「今日一緒に帰らない?」
「、!帰ろ、」
久しぶりに話せて、嬉しかった。でも少し緊張して素っ気ない返事を返した。
帰り
「ペニガキさ、覚えてない?」
「何を?」
「…小学校のとき、俺が起こした事件?」
「は?何それ」
事件?そんなのあったっけ、と昔を頭の中で振り返る。いや、無い。のじゃや他の友達と遊びまくった記憶しか俺の頭には入ってなかった。
「まぁ、そうだよな、うん。」
「覚えてなさそうだし、今の話忘れて」
「……?わ、かったけど」
なんだろ…やっぱり気になる。
「ペニガキくーん!」
「う、うみにゃ先輩!?」
「家の方向こっちなんだね」
「は、い…家があっちの方で」
「同じ!、あのさ」
「?」
「一緒に、帰らない…?」
先輩の少し緊張した顔、声。それに一緒に帰ろうと誘われて嬉しくて、顔が熱くなる。
あ、でものじゃじゃは…
左隣を確認した。けど
居ない……?
……
「お、俺も帰りたいですっ」
2時間目が終わって。
サッカーボールを持って階段を飛び降りる。近くの女子がポニーテールを揺らしながら怒る。
聞きなれた声が俺に近付いてきた。
「ねーねーペニガキくん!」
「なにー?」
「今日、ペニガキくん家行っていい?」
「うん!いいよっ!」
放課後。彼と一緒に自分の部屋に入る。
「わぁ、トロフィーとかいっぱい、これなんのトロフィーなの?」
「これ全部サッカーの!すごいでしょー!」
「がんばったんだー、ふふ、」
「へぇ……俺もサッカーやってるんだー」
「そうなの!?」
「毎日、放課後、土日…ずっと練習してるんだ、」
「だからいつも遊べなかったんだ…でも、今日は?」
「…今日はとくべつ。」
彼は優しく微笑んだ。
「ふぅん…たいへんだね」
「……ペニガキくん、」
「なに?」
「…俺さ、毎日頑張ってるのに」
「うん、」
「トロフィーも賞状もいっこももらったことないの」
「どうして、毎日あそんでるペニガキくんがいっぱい貰ってるの…?」
「…たしかに俺は…毎日練習はしてないけど、でも……」
「…おれだって、頑張ってるよ!」
「ずるいっ」
「ずるい!」
そう言って、——– はトロフィーを掴んだ。
「え、やめてっ!!」
そして、そのままトロフィーで
ガバッ
息を切らして、陸に打ち上げられた魚のような勢いで俺は飛び起きる。
びっしょりと汗が染み込んだシーツをぎゅっと掴んで、
夢……にしては、リアルだな。
寝ぼけた頭でそんな事を思った。
でも、そんな夢のことも
うみにゃ先輩の事を考えると、どこかへ飛んで行った。
俺は、うみにゃ先輩の弟役じゃ嫌なんだ。
彼氏…がいいんだ。
アホみたいな考えが、頭に浮かんだ。
また、先輩と話してた。
「ペニガキくん、うみにゃとよく話してるよね」
「たしかに…そうですね、」
「理由とか、あるの?」
「へへ、大好きだから!」
「可愛いなーw」
勿論、「大好き」を本気の大好きだとは思わないだろう。
だって…俺とうみにゃ先輩は、男同士だから。
ある日の昼休み、うみにゃ先輩が教室に来た。
「ペニガキくんっていますかー?」
「!?うみにゃ先輩、なんで教室に、」
「部活のプリント渡しに来た〜!」
「というか…ペニガキくんに会いたかったから?w」
照れたような笑みを浮かべて言った。
「へ……へ!?」
「冗談はよしてください!w」
赤くなったであろう顔をプリントで隠して、お礼を言って教室に入る。
心臓がうるさい。
「ペニ……」
「おま、体調悪い?大丈夫?」
「うん、大丈夫。大丈夫、」
ホントのことを言うと、ダメだった。
でも、言えるわけないから。
「いや、うみにゃ先輩のことはわかる。」
「は、」
何でわかんの…
小さな声で呟いて、自分の薄汚れた上履きに目をやる。
「ふつーに顔色悪いけど、」
「え?」
少し勢い付いて上、のじゃの方を見た。
めまいがした。
ん……ここ、は
「お前バカ」
目を開けると、のじゃがベット…のそばに居た。真っ白いシーツとベージュのカーテンで囲まれた空間。どうやらここは保健室らしい。
「へ?な、なんだよ」
「ちゃんと休みはとれ。」
「う、ん?」
体を起こそうとすると、だるさと頭痛に襲われる。
「はぁ……そんな疲れ溜まってたのかな」
「そりゃ、ほぼ毎日の部活に、外部チームの練習…あったんだろ。疲労が溜まんないわけが無い、ちゃんと休め、心配だから」
「…うん、ありがと」
のじゃが心配してくれる嬉しさと、部活に行けない悲しさが混ざって、余計に頭が痛くなった。
ある日、部活にある先輩が来た。
ゴリゴリの関西弁の先輩と、大柄で黄色いパーカーを来た先輩。
でっかい(大柄な)先輩を見た時、あんなパーカー着ていいんだな、なんて思った。でも先輩に聞いてみると、あれは校則違反と言っていた。
2人とも帰宅部で、暇だからと言う理由で見学に来たらしい。
「どひゃー!1年可愛い子ばっかやないか!!」
「うるさいwこっちは部活してんの」
「へぇ……だるそー。部活入んなくてよかったあ」
「はぁ……w、あ!ペニガキくん」
うみにゃ先輩が手招きしていたので、小走りでうみにゃ先輩のとこに行った。
「こいつむっちゃ可愛くない!?」
小声で言ったつもりなのだろうが、全部聞こえている。耳から顔…どんどん熱くなっていくのを感じた。
「えぐい、くそかわええな」
「そんな可愛いかよ、」
「…ん……?」
関西弁の先輩が、おかしな声を出す。
「あ、厨二病発症した?保健室連れてこか?」
「うぜ、黙れや」
?
何を言っているんだ、とぽかんとしていた
「あー、ひまじんね、霊感あるらしいのよ」
「ほんとかはわかんないけどw」
うみにゃ先輩はそう言った。
関西弁…ひまじん先輩は、じっと…のじゃの方を見ていた。
「…じゅば……いや、守護霊やなあれは」
2人はうみにゃ先輩とゲームの約束をして帰って行った。
ひまじん先輩は最後まで、のじゃの事を見ていた。
のじゃ、守護霊ついてんだ。いいな。
日曜日の夜
俺は寝転がりゲームをしていた。
「よしっよしよしよし!っしゃ!!」
「ez!!!」
時計を見ると、まだ11時。ゲームを再開しようとした、その時
「ペニガキ」
俺を呼ぶ声が聞こえた。
「はっ?!」
「ペニガキ!おい、こっち」
背中を叩かれ、後ろを振り向くと
のじゃじゃが俺の背中にまたがっていた。
「のじゃ…?なんで、いつの間に」
俺の言葉をさえぎってのじゃが話し出す。
「お前……うみにゃ先輩の事、好きだろ?あの人…いるよ」
「何が」
「…………」
「恋人。」
「は?」
「認めろ。そして、諦めろ。」
「いや、信じないし!!」
「まずさぁ!何でのじゃが知ってるの、」
「嘘…でしょ!」
「ほんとだよ。」
「うみにゃ先輩と、その人が手繋いでるのも見たし」
「一緒に弁当を食べてるとこも」
「休みの日にふたりで出かけてるところも…見たことある」
「……なんで?」
絶望した。
やっぱり、俺はただの後輩なんだ。弟なだけなんだ。
男同士なんて……
「誰か教えてあげよっか。」
「…知りたい」
「…………………」
長い沈黙が続いた。
しばらくして、のじゃじゃが口を開いた。
「できおこ」
「え?」
「先輩の、恋人は」
「できおこ」
なんで?
なんで、できおこが先輩と
なんで
男同士は…無理なんじゃないの?
なんで
なんで
なんで…
「諦めて?」
のじゃは冷たく言った。
「やだ、やだよ…!」
「俺が」
「俺がいるだろ……?」
か細い声でのじゃが言った。
「え…………?」
「うみにゃ先輩じゃなくて、俺がいる」
「俺じゃ、だめなの?」
そう言うのじゃを突き飛ばして、電気を消して布団に潜った。
それ以上のじゃは話しかけてこなかった。
月曜日
のじゃじゃは学校に来なかった。
部活のとき、うみにゃ先輩とふたりでボールに空気を入れていたとき
さり気なく聞いてみた。
「うみにゃ先輩って…恋人いるんですか?」
先輩の返事は
「ま、まぁ…いるけど、」
……………………
なんで、だよ
「な、なんか照れるなあ」
顔を赤らめて言う先輩が、美しくて
空気入れを動かす先輩の手を取って…
「えど、どし…」
口付けをしてみせた。
先輩には恋人がいる。けど
性格が悪い俺は、
取ってしまおうって、思った。
その恋人から先輩を、奪ってしまおうって。
「えっ、え?えええ、え」
「どど、どうしたの………?」
混乱した様子で俺の目を見てきた
青く透き通った美しい目だった。
「…俺にしませんか」
「好きなんです、先輩が」
気付けばそんな事を口走っていた。
「え……え?」
「…………………俺は」
目が覚めた。
俺は何をしてるんだ
先輩には恋人がいるのに。
困らせてんじゃん、
「…ちがっ、」
「っ……ごめんなさっ、!」
声を振り絞って何とか謝り、そのままボールを持って走り出した。
そのあとはしばらく先輩と話していない。
俺が避けてたから、ね。
いつの間にか、俺は2年生になっていた。
うみにゃ先輩とは、まあ普通に話してる。
でも、あの日以来2人で話してはいない。
そういえば、あの夜からのじゃがいないんだ。
なんでだろう。ちなみに
そんな今日はのじゃの誕生日なんだ。もし学校にのじゃが来た時のために、プレゼントは今も持っている。
「…いないよな、」
「なんでいないんだろ…」
「誰が?」
独り言を呟くと、できおこが話しかけてきた。
「あ、のじゃだよ。最近来てないから…」
「え?のじゃ?何を……」
できおこは何かを言いかけて、
やめた。
「そっか、ペニガキ入院してたんだ。」
「そりゃ知らないよなぁ…ごめんな」
できおこは少し困ったように言った。
「は?入院…?」
入院したことなんて無かったから、何の事…と聞こうとした。
何の、と言いかけた時丁度チャイムが鳴ってしまったので、仕方なく席に着く。
ふと何席か前のできおこを見ると、彼はウインクをした。は?と声を漏らして、隣の女子に怪訝な顔で見られた。
授業の途中、うとうとしている時、前の席の男子が俺に紙を回してきた。プリントかと思ったが違う。小さくて、折り畳まれていた。
男子は
「できおこから」
と言った。
何…と、目を擦りながら紙を開くと文字が書かれていた。
“ペニガキ、お前の入院中の記憶が無いのは今初めて知った。のじゃは、お前が入院しているときに___
「ペニガキー?何読んでんだぁ?」
「わっ、あ…」
「Kun、せんせ…はは」
「なんだそれ、手紙?授業に集中しとけよー」
「は、い…」
くそ…読めない、と心の中で愚痴った。
家に帰ってから読もう、と思ってたのに。
家、に着いた。
紙が…無くなっていた。
「は、??」
「え、どっかで落とした…?そんな、」
気になってたのに…と、ガックリと首を落としていると、インターフォンが鳴った。
モニターを覗いてみると、見覚えのある歳上の女性がいた。
「この姉ちゃんっ!」
俺は急いでサンダルを履いて、外に飛び出した。
「お、ペニガキじゃん!久しぶり!元気ー?」
彼女は、小さい頃沢山遊んでくれた近所の子。俺にサッカーを教えてくれたのも、彼女だ。
彼女は引っ越してしまって中々会えないが、たまにこうして会いに来てくれる。
今日は、2年ぶりほどの再開だった。
「うん!むっちゃ元気!!てかこの姉ちゃん、むっちゃ美人になってる!!!」
「そうー?ありがと、ペニガキはまだ可愛いままだねw」
「…黙れ、」
流石に照れてしまって、顔を隠すように下を向く。
「ふふ、」
「そんでさ、ペニガキのお母さんから聞いたけど…本気でサッカー選手目指してんの?ペニガキって」
「うん!」
「この姉ちゃんは?姉ちゃんも本気で目指してるって言ってたし」
「あー私ね…」
少し黙って彼女は遠くを見た。
「…諦めちゃった。」
え、と声が漏れた。
あんなに頑張っていたのに?
毎日毎日、家の裏の広場で練習していたのに?
疑問が次々と出てきた。
「…引っ越し先でさ、女がサッカーするなんておかしいって言われて、ね。
ちょっと…嫌がらせ?も受けてさ、サッカーするのが怖くなって…。なんか、情けないね」
言葉が出なかった。
こんなに悲しそうな姉ちゃん見た事無かった。
「あ、なんか変な話してごめん」
「…大丈夫」
「そーいや今、お母さんいないの?」
「仕事」
「そっか…、会いたかったけどな。残念」
「じゃ、これ渡しといて!前好きって言ってたお菓子!」
「え!ありがと!」
「じゃ、また!元気でね!」
「うん!姉ちゃんも元気で!またね!」
「うん!サッカー頑張れよ!!」
彼女をニカッと笑った。笑顔が眩しくて、少し目を細めた。
昼休み。Kun先生に頼まれて理科室に行く。
なんで俺が…とぼやきながら扉を開けると、りんごを食べる校則違反の緑のパーカーを見つけた。
「…またりんご食ってる、かめすた」
「やっほ〜」
「やほ。ひで先生は?俺Kun先生に頼まれてさ」
「準備室にいるよ〜。呼んでこよっか?」
「どうした」
「あ!ひで先生〜!丁度いい!」
「ペニガキどうした?」
事情を話して、先生に頼まれた荷物を持つ。
ひで先生が準備室に戻ったタイミングで、かめすたに話しかけた。
「お前、何してんの?」
「ひで先生のお手伝い〜」
「…?何もしてないじゃん」
「あちゃ〜!ばれたか〜…」
「本当は、ひで先生と話したくて。でも無理そう」
「ふぅん…かめすたってさ、ひで先生のこと好きだったり?ww」
からかうように言ってみた。
ドジでバカで約束も破る。そんなかめすたがあんな厳しいひで先生を好きになるわけないだろう、と思って。
「…すごいな〜、大当たりだよ。そうだよ、かめすたはひで先生が好き」
「えぇ!?」
「そうなんだ…付き合ってたりは?」
「……してない」
「えぇ〜?告っちゃえよーww」
「…かめすたね、」
地雷を踏んでしまったか?と少し不安になる。
「……諦めちゃったんだ。ひで先生のこと。」
「え?」
「かめすただって頑張ったよ。ひで先生に好きになって貰えるように、怒られないように……」
「怒鳴らないで、優しく笑ってくれるように」
「…でも、ダメだったな〜」
どこか悲しそうで寂しそうな笑顔で、またりんごをかじる。
「……そう」
その後は気まずくなってしまったから、そそくさと教室に帰った。
のじゃがいた。
のじゃは、今より少し幼い顔で俺と話してた。
俺の家で。
もしかしたら、これは夢かもしれない。
何となく、何となくそう感じた。
俺は自分の、トロフィーや賞状を自慢した。
褒めてもらいたかった、だけだが。
のじゃは怒って、今まで見た事も聞いた事も無いほど取り乱していた。
そして、そのまま俺のトロフィーを掴んで…
俺の頭を殴った。
目の前がチカチカして、力が抜けて…
立てなかった。倒れた。声が出なくて
動こうとしても、体が言うことを聞かない。
真っ赤な液体が床に流れて…そこで俺の意識は途絶えた。
また、のじゃがいた。
今もまだ、少し幼い顔をして、俺を見つめていた。
今は…病院の一室で。
これも夢だと、信じた、い。
お願い、お願いしますと、いるかも分からない神に願う。
俺はのじゃに歩み寄ろうとした。
でも、体が動かない。
のじゃが…ゆっくりと、歩み寄って来てくれた。
「…大丈夫か」
「…だめだよ。」
「体がっ、動か…ない、こんな事してる間も、みんなは…練習してんだよ」
「…すまん」
「すまんじゃないって!俺の体を、時間を返せよ!!」
「……」
「最低っ!!くそが!!!……っ」
「ばか、」
「…一生……話したくない」
自然に、口からこぼれてしまった。
自然に出てきた言葉は、あまりにも棘が多くて
「……」
のじゃは何も言わず、病室を出て行った。何秒かして、段々と冷静さを取り戻した。
俺は今頃気付いた。
なんてことを言ってしまったんだ、と。
でも俺の熱はまだ冷めなかった。
それどころかどんどん暴走していってしまった。
退院して初めての学校では、沢山の人にのじゃの事を言った。
本当に、今気付いた。
言う必要なんてないのに、俺だって酷いこと言ったのに。
「ごめんね」
もっと早く、早く、早く…俺から言いたかった。
「ごめんなさいだろ!」
それと同時に聞こえた、ゴンっと言う音に肩を跳ねらせた。
「…ごめんなさい」
俺は何も言えなかった。
俺も悪かったとも、やめろよとも、何も。
「…まだ、謝罪足りなくね?」
「だよね」
「ペニガキくんに酷いことしたのに、謝っただけですまされるかな」
「俺だって、酷いことしたから!のじゃばっかり責めないで!」
喉に引っかかって、出てこない。
この言葉さえいえれば…
良かった。
それからの日々、俺は孤独で。
でも、無視されてるとかじゃないよ。
親友…が、居なくなっただけ。
“親友”に話しかけたら、他の人が言うんだ。
「あいつは君に酷いことをした。なのに、なんで話しかけるの」
みんなが口を揃えて言うんだ。
そんな学校が嫌いで、つまんなくて。
俺は学校に行かなくなった。
それに比べて、PCやスマホの中はとても楽しかった。
沢山の人とゲームをしたり、話をしてみたり、とても、とっても楽しかった。
今は…学校。
夢か現実かわからない話について考えていた。もちろん授業中。
そういや、俺は小5らへんから小6の最後まで記憶が無い。何をしてたのか、本当に何も思い出せない。
俺は引きこもりだった?あれは夢、現実?
本当なら夢…で終わらせたい、けど。違和感があるから終わらない。
…のじゃが、居ないんだ。
珍しく部活が無い放課後。
廊下の角を曲がろうとしたら、少し背の高い金髪にぶつかった。
ごめん、の言葉より先に言葉が飛び出でる。
「ヘルスカ!」
「おお、ペニガキ!moi!」
「moi!久しぶりじゃんっ!小学生ぶり!」
「日本は慣れた?」
「はい、とても!日本…素敵な国ですね!」
そういう彼はフィンランド産の顔でにっこりと笑った。
ヘルスカは急にこう言った。
「のじゃじゃは、元気ですか?」
「…のじゃ?」
「のじゃね、最近学校来てないんだよ」
「ああ…やっぱりあの時」
「え?」
「あいや、なんでもないです」
「ねえ、あの時って?」
「いや………」
ヘルスカが急に言った“あの時”がいつの事なのか、何があったのか、のじゃに関係があるのか、色々気になったけど…何故か怖くて聞けなかった。
いつものように部活をしていた。
俺はランニングを、休憩しながらも7周目を走っている。
走っていると、ズキッ、と突然、足首からふくらはぎにかけて痛みが走った。あまりの痛みに倒れてしまう。
「いっ……!!?」
わらわらと先輩や同級生、後輩が駆け寄ってきて、大丈夫?などと声をかけてくれる。
体重をかけると痛みが走って、立てそうにもない。そんな中1人、猛スピードで走る姿が見えた。
「ペニガキくーん!?大丈夫っ!?!?」
うみにゃ先輩は目の前で、砂ぼこりを立て急ブレーキをした。
周りの人がごほごほとむせるのを無視して俺に近寄る。
「……立てる?」
「ちょっと、無理そう、です」
「そっかぁ…保健室行こっか。俺連れてくから」
「えっ、悪いですよ……」
「いいのいいの!」
そう言ってうみにゃ先輩は、俺をお姫様抱っこしようとした。
「ぅえっ?!?」
周りの先輩が驚いて止めようとしたが、うみにゃ先輩は持ちやすいから!と言う。
俺が大丈夫ですよ…と謎のフォローをして、結局お姫様抱っこで運ばれることになってしまう。
周りの陸部や女バスがキャーキャーうるさい。あと…恥ずかしい。
「てか先輩、こんなことしていいんすか」
「んー?なんで?」
「だって先輩、恋人いんじゃん」
「あー…」
「ま、バレなきゃいいw」
「だめですよ!」
そんな言い争をしながら、保健室に到着した。
先生に親を呼ばれて、そのまま病院に行った。
「あれ、ペニガキくん。久しぶりだね」
病院の先生はそんなことを言った。
?が頭に埋めつくされていく。お母さんが、先生にコソッと何かを言った。すると先生は
「あー、違う違う、ごめんね。わすれて」
そう言った。
後でお母さんに何を言ったのか聞いても、忘れたとしか言ってくれなかった。
俺はしばらく部活に行けない。疲労骨折だそうだ。とぼとぼと、ゆっくりと、ひとり家に帰る。
家ではゲームをしまくって、たまに、のじゃ…や、うみにゃ先輩の事を思い出す。
たまにLINEでうみにゃ先輩と話した。でも、のじゃとのLINEは永遠に未読だ。いっくらスタ連しても、変な文字を送ったりしてみても、永遠に未読。
俺はまた夢を見ている。登場人物は、もちろんのじゃだ。夢の内容は…
のじゃが虐められてる話。
この夢のおかげで、全て思い出せた気がする。俺のせいでのじゃがいじめられた、そうだ。
今まで見たのじゃの夢も全て思い出した、思い出させられた。
できおこの手紙の内容も、ヘルスカがなんでもないと言ったことも、お母さんが忘れたと言ってたことも、全部が全部、わかった気がした。
そう、きっとだけど
のじゃは死んだんだ。
俺が、殺した。
俺が、自慢をしたから。
俺が、みんなに言いふらしたから。
俺が、助けられなかったから。
俺が、俺が、俺が…殺した。
そう繰り返し考えると、いちいち過呼吸になってしまう。
「ごめんね」
今言っても遅い言葉を、何度も何度も繰り返す。
「のじゃ……ごめんね」
俺はひとつの結論にたどり着く。
俺は、のじゃが好きだ。
いつしか言われたのじゃからの、俺にしないかという言葉…ずっと、ずっと意識していた。
何度もごめんねと繰り返す、それだけの長い長い夢が冷めた時、見たのは真っ白な天井だった。
起き上がっても布団は真っ白。自分の服さえも真っ白で、眩しくて。
目の前には…お母さんがいる。ついでに?白い服の女の人、白い服のおじさんも。
あ、ここ病院か。と気付く。
「ペニガキくん……ずっと、辛かったのかな」
「大丈夫だよ」
急にそんなことを言われたので、何も言えずに口をだらしなく開けていた。
水滴が頬を伝った。汗かと思ったが暑くない。それと同時に鼻水が出て…俺は泣いてる、と気付く。
「……のじゃは?」
先生も、お母さんも無視した。
代わりにドアを開ける音が聞こえた。
少し息を切らして、ペニガキくん…と小さな声で言う。のじゃのお母さんがいた。
何も分からなくなってしまって、助けを求めた。
「お母さん、俺、どうしたの?」
今度は無視しなかった。
「ペニ、ずっと、ずっと…6年のあの日から……」
「ずっと、起きなかったんだよ」
いつもより少し優しい声で、そう言う。
脳で処理が追いつかなくて、頭痛がしてきた。
「……え?」
「もっと、普段から話を聞いてれば良かったね、そんな辛かったなんて、知らなかったよ」
泣きそうな声で言った。
「ペニガキっ、」
聞き覚えのある、大好きで仕方ない声が耳に入る。
「…のじゃ」
「お前、起きた……の?」
「う、ん…」
「のじゃ、こっち、来て」
のじゃは俺に駆け寄って、細い腕で俺を抱きしめた。壊れたダムのように、とめどなく涙が零れる。
「のじゃ、のじゃ…」
良かった。のじゃは死んで無くって。
生きてて。また会えて。
そういや、今はいつなんだろう。
うみにゃ先輩はいるのかな。
この姉ちゃんは綺麗になってるのかな。
本当に死んだのは、誰なのかな。
今はいつなんだろうか。
真っ白な四角い空間。よく見るとベッドはひとつ。俺のだけ。
時計も棚も窓も何も無い不思議な空間で、のじゃと抱きしめ合う。
「……好き」
彼の耳元でささやいた。
それっきり返事は無い。