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式場の宿泊棟にある、一日一組限定のスイートルーム。そこは、外界から切り離された小さな世界だった。披露宴や二次会の喧騒も、いまは遠い夢の名残のように静まり返っている。
「……はあ、やっと終わった……」
ネクタイを緩め、ふかふかのベッドに倒れ込む。二次会で佐藤と王子谷に散々飲まされ、心地よい疲労感とともに、少しだけ熱を帯びた頭がふわふわと浮いているようだ。
ドアが開く音がして、白石さんが入ってきた。二次会用の、白いミニ丈のワンピース姿だ。彼女は僕の隣に潜り込むと、背中からぎゅっと抱きついてきた。
「陽一さん。……今日一日お疲れ様でした。最後に一つだけ、二人っきりの『特別な儀式』しませんか?」
耳元で囁かれる甘い声だった。
「儀式……?」
「ガータートスです♡……手を使うのは禁止。陽一さんの口だけで、私のガーターを外してほしいの」
「っ! な、なんだって……!?」
一気に酔いが醒めた。
「海外では伝統的な儀式なんですよ? それとも……私のこと、愛してないからできないの?」
(絶対、盛ってるだろ……)
そう確信しながらも、潤んだ瞳でそんなことを言われては、もう抗いようがなかった。 返事をする間もなく、彼女の柔らかな体温が重なった。触れ合う唇。昼間の誓のキスとは違う、熱く、深く、僕のすべてを溶かし尽くすような口づけ。
「ん……っ」
唇が離れると、彼女はいたずらっぽく笑って、スカートの裾をゆっくりと持ち上げた。薄明かりに照らされた眩しい太腿と、白いレースのガーターベルト。彼女はそのまま、僕の視界を白と、甘い香りで埋め尽くした。
(……落ち着け。これは伝統的な『儀式』なんだ……!)
口でレースの感触を探る。
「……そこ、違いますよ?」
くすくすと笑う声が降ってくる。
「わざとですか? 意外とエッチなんですね、私の旦那様は」
「ち、違う! 暗くて位置が――」
「……あ」
僕の唇が彼女の柔らかな肌に触れたとたん、漏れた小さな吐息。それが脳に響き、僕の理性を削り取っていった。
レースを咥え、引き抜く。するりとガーターベルトが外れた瞬間――彼女の指先が、僕の髪を強く掴んだ。僕の中で何かが切れた。
(……くそっ、もう無理だ)
「次は僕の番ですよ。……白石さん」
彼女をベッドに押し倒し、奪うように唇を重ねた。
「ふふっ。結婚したから、もう『白石さん』は卒業ですよ♡……ひよりって、呼んで?」
「……ひよりさん」
「今夜はいっぱい、名前呼んでね♡」
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#独占欲