ーーティアナがいなくなった。
学院に到着したレンブラント達は、迷う事なく教員室へと向かう。その途中女子生徒等がレンブラント達を見て燥ぐ声が耳についた。
卒業してから五年程経つが、学院内は殆ど変わった様子はない。懐かしさに思いを馳せる気持ちを抑え、ティアナのクラスの担任と対面をした。
「休みですか」
ティアナは今日、学院を休んでいていなかった。しかも無断欠勤だと話していた。最近は毎日登院していたらしいが、元々は休みがちだったそうで余り気にした様子はなかった。なので、予定を変更して今度はフレミー家の屋敷へと向かう事にする。
馬車に揺られながらレンブラントは、少し複雑な思いに駆られる。
『彼女、友人もいなくて何時も一人だし、物静かで周囲からも浮いててね』
先程のティアナの担任が聞いてもいないのに、余計な話をしていたのを思い出す。ティアナの事は以前粗方調べて、最近はかなり距離も縮まった様に感じており分かったつもりになっていたが、本当は何も分かっていないのかも知れない。
「今朝も変わらず何時も通りの時間に、学院へ向かわれましたが……」
程なくして屋敷に到着する。だが彼女はいなかった。使用人のモニカが「ティアナ様がどうかされたんですか……」不安そうに話しているが、頭が真っ白になっていき言葉が上手く聞き取れない。黙り込むレンブラントの代わりにクラウディウスが返答をする。ヘンリックやテオフィルから何かを言われたが、それどころではなかった。
(学院にも、フレミー家にもいない……もしかしたら、実家に帰ったのか……)
いや、あり得ない。何か理由があって帰るにしても、学院に行くふりをする必要性が分からない。
(なら彼女は一体何処に行ったんだ⁉︎ こんな事になるなら、仕事だろうが命令だろうが放棄してでも彼女の側に居れば良かった。ずっと側にいられなくても、彼女の些細な変化に気付けたかも知れないのに)
そんな風に考えると、クラウディウスや自分自身への苛々が段々と募っていく。だが先日クラウディウスから、ティアナの事になると冷静でなくなると指摘された事が頭を過ぎり、我に返った。
「こうして居ても仕方がない。取り敢えず一旦城に戻ろう。彼女に付けていた護衛からの報告があるかも知れない。レンブラント、君もそれでいいな」
モニカや他の使用人等には、他言無用と口止めをする。ティアナの消息が分からない今、騒ぎになるのは得策ではない。レンブラントは素直にクラウディウスの指示に従い馬車に乗り込んだ。
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