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「あ、まふゆだ〜」
「絵名……。酷い顔」
「まふゆには言われたくないんだけど」
自分の顔は見えていないが、多分あの時のまふゆよりも顔色は幾分かマシだと思う。
「それにしても……」
ほんと、丁度良いところに。
動物に癒やされたくなったけど、家にそんなものいないからセカイに来た。恐ろしいほど丁度良いところにいたものだ。
自撮りのアカウントで疲れたという呟きをしようとしたら、猫が流れてきて心を掴まれた。いつもなら愛おしい気持ちにはならないけど(ライバルとして見ているため)、今日はダメだったみたいだ。私の完敗。
「嫌な予感がする。帰るね」
「待って待って、帰らないで〜!」
「…………」
「座ってて!」
肩を抑えて立つのを阻止。ちょっとだけ嫌そうな顔をしたけど、気のせいだろう。私はまふゆのヘアゴムに手を伸ばす。
「……絵名?」
手を掴まれる。怪訝な目で私を見るまふゆ。それをやんわりと解いて、頭を撫でてヘアゴムに興味を無いふりをしてから、私はヘアゴムに手をかける。
「ちょ、絵名?」
「ふふ……」
「疲れてるね」
髪を解くと、縛り付けられていたものがふわりと溢れた。これだ、と思った。誰でも良かったわけでは無い。この髪の毛しかダメだ、そう思った。
私はまふゆの膝に正面から向かい合って座り、髪の毛へと手を伸ばした。
「もふもふしてる」
「そうだね」
「どうして?」
「どうしてだろうね」
「楽しい。」
「楽しいの?」
そう、いつもより違った感覚だから。でも手触りも良いし、いい匂いもするし。なんだか、まふゆが人気が出る理由も、分かった、気が、す……
***
「絵名?」
がくりと急に項垂れた絵名。倒れそうになったので、慌てて体を捕まえる。そのままにするわけにはいかないので、取り敢えず私の体に体重を預けておく。
肩に寄りかかる絵名の顔。眠ってしまったらしい。もし時間を忘れて作業をしていたとなると、絵名も私のことをあまり言えない立場なのではないか、と思った。
絵名の髪の毛に触れてみる。さらさらとしていて、引っかからない。
『楽しい。』
まあ、少しだけ、絵名の気持ちも理解できる気がした。