テラーノベル
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「お前ら、本当にもう結婚しろよおおお!!」
体育館での劇披露を終え、二人が教室の扉を開けた瞬間、そんな叫び声と共にすさまじい熱気が押し寄せてきた。教室の中は、さながら感動的な映画の上映直後のようなお祭り騒ぎになっていた。最前列で見ていた田中を筆頭に、クラスメイトの半分くらいがハンカチを片手にガチで号泣している。幕が下りた後のマイクの電源が切れておらず、蹴翔のリアルな壁ドン告白と二人の本音がスピーカーから体育館中に筒抜けになっていたあの事件。クラスの誰もが、あれを「演劇部が仕掛けた、音声だけのアフターストーリーという神演出」だと本気で信じ込んでいた。
「大橋! 穂志羅! 最後のマイクの演出マジで鳥肌立ったわ!」
「『嘘の盾で誤魔化せなくなるだろ』ってセリフ、あんなの本気じゃなきゃ言えないよぉ!」
「付き合うどころか今すぐ婚姻届出してきて!」
口々に囃し立て、拍手を送ってくるクラスメイトたち。いつもなら「何言ってんだよ!」と大げさに騒ぐところだが、本当の本物のカレカノになってしまった二人のプロの演技派は、一瞬だけお互いに視線を交わした。星蘭の顔は、朝のバカップル演技の時とは比べものにならないくらい、ガチの照れくささで耳まで赤くなっている。
(やばい、みんな本気で感動してる……。これが全部本音の自爆だったなんて、恥ずかしすぎて口が裂けても言えない……っ!)
そんな相棒の動揺を察したのか、蹴翔がフッといつものいじわるなクソガキの笑みを顔面に貼り付けた。彼は自分の机をドンと叩くと、あえて教室中に響き渡るような大声で胸を張った。
「おうおう、お前ら! そこまで言うなら、お祝いの品はきっちり受け取ってやるよ!」
「え?」
と涙を拭う田中。蹴翔はニヤリと笑い、星蘭の肩をそっと抱き寄せた。右の耳たぶはちぎれそうなくらい真っ赤だが、その声にはいつもの悪巧みなキレが戻っている。
「今朝も言っただろ! 俺たちの結婚式の祝儀は、一人一律30円のヤッターめんだ! ほら、感動した奴から順番に、当たりの金券付きのヤッターめんをここに積み上げろ!」
すかさず星蘭も『ちゃっかりしたおねだりヒロイン』のスイッチを入れた。両手を合わせて、うるうるとした瞳でクラスメイトたちを見つめる。
「みんなの涙、すっごく嬉しかったな。だから……ヤッターめん、本当に集めるからね? 嘘じゃないよ?」
「ギャハハ! 本当に集めるのかよ!」
「よし、俺の引き出しにあるやつ全部出すわ!」
二人のいつも通りの完璧なハモりと悪ノリに、さっきまで号泣していたクラスメイトたちも大爆食。
「お前ら現金じゃなくて駄菓子なのが最高にクソガキだな!」
と言いながら、男子も女子も、面白がって自分の机やカバンからヤッターめんを次々と持ってき始めた。
「ほら、これ俺の分!」
「私のは10円の金券当たってるやつだから、実質40円ね!」
二人の机の上には、みるみるうちに四角いヤッターめんのカップがうず高く積み上げられていく。結局、クラス全員分のヤッターめんがきれいに集まり、二人の机の上は小さな駄菓子屋の棚のようになってしまった。
「……大収穫じゃん、蹴翔」
星蘭は山積みのヤッターめんを見つめながら、ジト目でニヤリと笑った。
「おう、学年全員分とはいかなかったが、クラス全員分はきっちり回収したぜ。これで一ヶ月は3時のおやつに困らねえな」
蹴翔も満足げに頷く。周りの生徒から見れば、どこまでも曲がった、いつもの仲が良い「悪ノリ嘘つきコンビ」。だけど、放課後のチャイムが鳴り、二人で大量のヤッターめんをビニール袋に詰めて持ち上げる時、机の下で、ほんの少しだけ触れ合ったお互いの指先の熱さだけは。クラス中を完璧に騙した大きなお芝居の真ん中で、二人だけが知っている、100%の本当の真実だった。
「じゃあ、お兄ちゃん。このヤッターめん持って、すずめ堂のババアに自慢しに行こっか」
「だからもうお兄ちゃんじゃねえだろ! ……ほら、袋貸せ、俺が持ってやるよ」
夕暮れの赤く染まった坂道を、大量のヤッターめんを抱えた二人の影が、今度はぴったりと重なり合いながら下りていくのだった。
コメント
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あはは、第13話めちゃくちゃ良かったです! 体育館中のスピーカーに本音が筒抜けになってたって設定、笑いながらも「ああやっぱりそうなるよね」って納得しちゃいました。クラスメイトが全員「神演出」だと信じ込んでるところも、二人がプロの演技派として悪ノリでヤッターめんを集める流れも、本当に楽しそうで読んでてこっちまで顔がほころびました。 でも一番印象に残ったのは、机の下でほんの少し触れ合った指先の熱さです。あれだけで「二人だけの本当」が伝わってくる。夕暮れの坂道で影がぴったり重なるところで終わるのも、最高にロマンチックでした。