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行かないで。
なんて図々しいことは言わない。
忘れないで。
なんて無理なことは言いたくない。
ただ君が本当の姿で人から愛されるように
誰かを、執着じゃなくて素直に愛せるように
自分を犠牲にしてまでも、君を助ける。
…………………………………………………*
〈kiriyan side〉
kr 「多分、スマイルを助けようとすると長が何かしてくる可能性が高い」
kr 「その時はこれを割るんだ。わかったねみんな」
nk 「これなに?」
kr 「俺の力を少しこめたカプセルだよ。いわゆる煙玉みたいな役割になるかな」
sh 「逃げることを優先するってことか」
kr 「そういうこと。頼んだよ」
kr 「じゃあ、スマイルを取り戻そう」
…………………………………………………*
〈smile side〉
それはいつもよりも静かな時間だった。
雨の色を反射して冷えた教室は二人で過ごすにはあまりにも広すぎるようだった。
長 「ねぇ、スマイル」
長 「残す七不思議は一つだけど、終わったらどうするの」
sm 「なに、今更。
、、、前言った時と変わんないよ。お前を殺してみんなの元に帰る」
長 「スマイルは帰れないよ。だって君は怪異だから」
sm 「じゃあ、心中したほうがいい?」
長 「別にそういうことを言ってるんじゃないけど、さ。」
長 「ちゃんと受け止めるんだよ」
此奴がなにを言いたいのか、よくわからなかった。
だからずっと窓を眺めて、まるで二人では最期と言わんばかりの薄暗い雰囲気を気づかないふりをした。
sm 「死ぬのは怖いか?」
長 「僕は死ぬわけじゃないよ。元から死んでるしね笑」
長 「ただ、スマイルが心配なんだよ」
sm 「よくわかんない」
長 「今は難しいだろうね。でもその意味を気づいてからじゃもう遅いかもな」
sm 「じゃあはっきり言ってよ」
長 「僕の脳みそは当時で止まってるから、表現する言語能力が足りないんだ。」
長 「恨まないでくれよ」
そうやって微笑む彼はいつもよりもずっとずっと大人びていて、その瞳は父のように愛情を隠しているようで、母のように心配していて、友のように寂しがっていたように見えた。
sm 「怪異はみんな悪い奴じゃないと思う」
長 「え?」
sm 「だって元は人間だから」
雨音の間に微かに聞こえる、鼻を啜る音。
彼が少し寒いな、なんていうから俺はその背中を見つめるだけで、顔は覗かなかった。
だって怪異に寒いとか、暑いとかいう体感温度はないでしょ。
…………………………………………………*
〈nakamu side〉
足音がまばらに響く。
月明かりが差し込む廊下はまるで海のようにこの空間に波紋を広げているようだった。
でも不安じゃない。
指先には彼のぬくもりが伝わる。
nk 「ここの裏に確か梯子が、、」
nk 「、、、てか離してよ」
sh 「え?」
nk 「いや、梯子登るから危ないでしょ?」
sh 「あ、そっか」
おかしい。
離れても俺の手、熱いままだ。
心臓がくすぐったくて、少し痛い。
sh 「ぅわ、埃臭いしなんか湿ってる?」
nk 「あそこの窓付近だけ濡れてないよ」
nk 「とりあえずここで待機か」
肩がぶつかる少しの感触も、雨音に混ざる呼吸も、なぜか意識してしまう。
緊張しているけれど、居心地は悪くなくて、ずっとこのままでいたいと思うようになった。
sh 「ねぇ、なかむ」
名前を呼ばれるだけで心臓が大きく脈打つ
sh 「スマイルは戻ってくると思う?」
nk 「絶対、戻ってくるよ」
はっきりと言葉を放つけれど、他の人の名前を呼んだことに少し嫉妬したなんてことは内緒にしておく。
これが終われば、きっと素直になれると思うから
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〈kintoki side〉
今日はひどく雨が強い。
雨で溺れるようで、少し呼吸がしづらく感じた。
それでも俺が憧れるその大きな背中は、確実にそこに存在していて、どんな不安も辛抱できる気がした。
kn 「校長室が先に見えるあれだから、その奥か?」
br 「お、あったよ!きんとき」
キイィ
錆びたドアノブを捻り扉を押すと、そこには小さな和室があった。
まるで誰かがここでひっそりと暮らしていたのように、温もりを感じた。
少しの段差に気をつけながら畳に上がる。
右手には襖付きの押入れがあり、障子越しに雨の気配。
kn 「こんなとこあったならもっと早く知っとけばよかった」
br 「だね笑」
静かな時計と、少しシミのついた壁が心臓を撫で下ろす。
あとは、ここにスマイルが来るのを待つのみとなった。
、、、と言うか、そもそもスマイルはこんな場所知ってるのだろうか?
kn 「ね、ぶるーく」
br 「なに?」
kn 「スマイル、帰ってくるよね」
br 「、、、どんな形であれ帰ってくるよ」
br 「絶対に。」
いつもの柔らかい声色は、重みを増して俺を縛り付ける。
彼を信じて待ち続ける。それ以外に俺らができることはなかったから。