「りり」わたしに呼びかけるのは元野犬の生後2〜3ヶ月の黒子犬、クラウディア。胸元だけが白く、茶色い目がなんだかいたずらっ子のような雰囲気を醸し出している。「ここどこ?たくさんの犬と動物たちの匂いがするよ。」 さっきからなんどもわたしにしている質問だ。「だから知らないよ。でもずいぶん楽しそうだなぁ。」と、放浪していたわたしたちを保護した男の人がわたしたちのケージを持ち上げた。「マーク」女の人が呼びかけた。この人、マークって言うんだ。「なんだい、ジュディアン」男の人が答えた。この女の人はジュディアンって言うんだ。「なんかこのことこのこ、仲が良いっぽいね。」「たしかにな。一緒に保護されたのもあるからなんじゃないか?」「そうね」そんな会話をして、歩いていると、別の男の人が「ここがみんなの新しく住むところ、シェルターだよ」シェルター?他のケージの中にいる犬猫たちも首をかしげている。「シェルターっていうのはね、戦争などで家族やおうちを失った動物たちにお世話をしてくれるんだ。簡単に言うと、新しいおうちってことかな。」白い犬が教えてくれた。と、茶色の長いストレートな髪を流した中年ほどの女の人と15歳ほどの女の人が出てきた。「わたしはここ、シェルターの管理人のソフィア。マテリーナの母親よ。よろしくね!」中年の女の人が言った。「わたしがマテリーナ。ここの後継ぎよ。ここで本格的に勉強し始めてまだ二年だけどよろしくね!」15歳ほどの女の人が言った。今気づいたけどその女の人は母親譲りのストレートで長い髪を持っていたが色はきれいで艶のある黒だった。まるで、里緒奈みたいだ。そう思った。里緒奈はわたしの飼い主の少女。優しくて、長い黒髪を持っていたな。クラウンだった名前を「りり」っていう新しい名前をくれたのも里緒奈だ。
🐾ケガの治療へ
「ソフィア」マークがソフィアに呼びかけた。「ん?」「このこのことなんだが、この子は首輪をしている。『りり』っていうらしい」「りり、か。いい名前だねえ。 ん?」ソフィアがわたしの左側を見た。「りり!その傷、どうしたんだい?」その傷はわたしたちが保護される前に着火されたライターに思いっきりぶつけたものだ。「これはずいぶん痛かっただろう。マーク。どうして手当をしてやらなかったんだい?」「実は救急箱のガーゼと軟膏、薬、包帯を使い切ってしまったんだ。だから今、ジュディアンに頼んで薬とかを取ってきてもらってる。」「そう。ではこの子の処置はこちらでやらせてもらうわ。」「ああ。頼んだ。ありがとう。ああ、そうそう、そこの黒い犬はりりと一緒に保護されたんだ。仲は良いよ。」「分かった。じゃあね。」「ああ」マークはそう言うともう一人の男の人と一緒に駆け足で車に乗り込んだ。「マテリーナ、清潔な包帯とガーゼ、火傷用の薬と軟膏を持ってきておくれ」ソフィアは娘のマテリーナに言いつけた。「もう持ってきてるよ。」すぐに生き生きとしたお姉さんの声がした。声は里緒奈と似てないけど。「ほんとうかい?ずいぶん立派になったねえ。この前なんか茶色いしっぷを牛の皮に間違えて持ってきてたしね。」「ちょ!それ言わないっていう約束でしょ!」「ふふ。いや。ごめんごめん」「もう」顔を赤らめながらも少し楽しそうでした。「ヒリヒリしたり染みるかもしれないけど我慢してね」ソフィアとマテリーナが優しくわたしに声をかけている。 いてててっ‥めっちゃ染みる‥!痛くて染みたけどなんとか吠えずにすんだ。「いいこだね、いいこいいこ」二人はそう褒めてくれて、犬用のデルニー(ウクライナの伝統料理のジャガイモのシンプルなパンケーキ)を一切れくれた。ふんわり、あったかくておいしかった。それを見つめてくるクラウディアの視線が気まずかったが。「さて、この子のケガも直さないとね。」そう言ってソフィアはクラウディアの方をみた。クラウディアは瞬時にわたしの後ろの隠れた。よっぽど怖いんだ。「大丈夫だよ。クラウディア」そう言っても怖がっている。「病院に連れて行く?ママ?」マテリーナが言う。「…いや、きっとこの戦争で病院も会ていないだろうし…」「そっか。んじゃ、わたしたちでやらないとか。」「そうだね。んじゃ、マテリーナ。保定を頼むよ。」「OK。承知」そう言って革手袋をはめ、クラウディアのそばにいき、わたしに食べさせたデルニーを一切れ口元に運び、誘導した。と、クラウディアを腕で包みこんだ。「大丈夫大丈夫」と声をかけながら。そのうちにソフィアはクラウディアの全身の傷を、清潔で濡れたタオルハンカチで傷口を優しく拭き、消毒液を清潔なガーゼで、優しく拭いた。そして傷薬を指にたっぷり塗って、クラウディアの傷に塗った。それから変な匂いのする軟膏も塗り、最後にひどい傷には清潔な包帯を巻いた。マテリーナが保定の手を緩めると一目散にりりの後ろに隠れました。「りりぃ。痛かったよう。痛いん?あれ?知らんよぉ」と嘆きに嘆いた。するとソフィアとマテリーナはまたあの犬用デルニーをあげた。いいなあ。クラウディア。2つももらえて。少しうらやましかった。
一緒に保護された別の犬猫たちはソフィアとマテリーナに運ばれ、別のところへ行った。わたしたちはしばらく室内の部屋の一角で暮らした。
コメント
8件
これって一次創作? クオリティーが凄い、、
異変?