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12話:因縁と異物
「あの堅物准将のやり方には、もう愛想が尽きた。恩人を怪物呼ばわりして後ろから撃つのが『鉄の外套』の正義なら、そんな規律、こっちから願い下げだね」
背中に蒸気ボルト銃を背負い直すと、彼女は腰のサーベルに手をかけ、アランをまっすぐに見据えた。
「行き場がなくなっちまってね。小僧――アンタのその『父親殺し』の旅路に、私にも一枚噛ませてもらいに来たよ」
一瞬の静寂。ギリアムの眼光が殺気を孕んで細まり、銃口がミリ単位の狂いもなくカトリーヌの眉間へ向けられる。
かつて戦場で血を流し合った因縁が、重苦しい圧力となって船内を満たす。
「『鉄の外套』の狗が……どの面下げてここへ来た」
「おいおい元敵さん、今さら私に銃口を向けるかい? 命の恩人を追ってきたのは私だが、案内してしまったのはそっちの坊やだろ」
皮肉を返すカトリーヌとギリアムの間へ、割り込んだのはリーザだった。
「 ギリアム、今は過去を蒸し返してる場合じゃないわ! アラン、立てる!?」
問いかけに、アランは力強く頷いて見せた。直前に投与された「マザーズ・クライ」の薬効が狂乱の激痛を沈め、黒金色の右腕は完全に彼の制御下にある。
「……ああ、立てる。もう大丈夫だ」
だが、覚悟を固めた彼らに、一秒の猶予すら与えられなかった。
ギィィィィン――ッ!
それは縫い手の繊維が軋む不快な音だ。
湿った不気味な多足の足音が、ノーチラス号の船底を取り囲むように這い回り、リーザが神経を逆撫でする音に怯まずにアランに肩を貸す。
「……来たわ。『縫い手(ステッチャー)』!」
「立て籠もるのは不可能だ! 船体が破壊される前に出るぞ!」
ギリアムが叫び、制御盤の緊急バルブを力任せに叩き落とす。
「喰らいやがれ……!」
ガアッ―――ッ!!
限界まで高められたボイラーの内圧が火花を散らし、側面ノズルから超高熱のスチームが爆発的に噴射される。
白濁する視界。
スチームに焼き切られた赤黒い繊維から焦げたゴムのような異臭が漂った。
周囲に群がったステッチャーが怯んだ隙を、ギリアムの怒号が撃ち抜く。
「今だ、飛び出せ!」
ハッチを蹴り開け、真っ先に躍り出たのはアランだった。黒金色の右腕を刃のごとく硬質化させ、蒸気渦巻く甲板(デッキ)の闇を切り裂いた。
続いて、ボルト銃を構えたギリアムと、サーベルを抜き放ったカトリーヌが背中合わせの陣形で飛び出す。
かつて敵対していた二人の息は、この極限の戦場において驚くほど噛み合っていた。
コメント
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うわ、めっちゃ緊迫した展開でしたね……! ギリアムとカトリーヌ、かつて戦場で♡♡♡合った因縁の二人が背中合わせで戦う連携、熱すぎます。銃口向け合ってた数秒前とは思えない鮮やかさで、この関係性の奥行きにぐっと来ました。リーザの割って入るタイミングも絶妙で、彼女のしたたかさと冷静さが光る回でした。マザーズ・クライの薬効でアランが制御を取り戻したのも良い伏線回収。次が気になりすぎます!