テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#虐待
ruruha
226
#一次創作
りんご
277
73
きのうのお昼どき、 突然、せかいが夕暮れにこわされた。
くるしみに泣きつづけた律儀なお人形みたいな、赤、赤、赤。
いつものらりくらりとふらふら浮いていた月は、もう赤ぐろい雲のせいで見えなくなった。
きらきらと笑っていた星のかけらがたくさん落ちてくるものだから、この星の人はみんな目からたくさんのこころの破片をこぼした。
微熱のときのいやなだるさとほてりにずっとおそわれている感覚。ふしぎと絶望はかんじなかった。
それでもわたしはなんだかこわくて、耳が痛くなるくらいに風をきってこの駅にたどり着いた。それが今日のこと。
駅のなかには人はいなくて、ただただ昔の人の笑い声のあとが残っているだけ。
冷蔵庫のなかから引っ張りだしてきたサラダチキンとコンビニのおにぎりみっつがあるから、あともう少しは生きられる、って希望がわずかに光る。それを真っ青で高いそらにかざしてみたい、なんて。
そんなことを考えていると腹の虫がきゅーっとないて、1日ご飯を食べてないことを思い出した。
冷蔵庫に住んでいたなごりで冷たいままのおにぎりをひとつ取り出して、少しずつ口にいれる。
いろあせた紙の広告が冷たい壁に貼り付けてあったから、それであたたかさを感じようとした。
広告のなかではあざやかな暖色があかるく、さびしがりながらこちらを見ていて、終わらないせかいからわたしに手を伸ばす。
わたしと広告が立ちすくむ、暮れなずみつづける駅のなかだ。
おにぎりを食べ終わったあと、広い空間をさがして歩くことにした。
わたしがいまいるのは、切符を売っているばしょのそば。
昔にしてはなんだか近未来的な、みらいへの希望みたいなものとか、理想が内包されている気がする。
そのさきで星が笑っていることも、いろんなひとが地球中にこぼしたこころの破片も知らぬまま、ずっと希望をもっていて。
ずっといつかそうなってほしいって。
いままでは入口のそばだったから夕暮れがにじんでいたけど、だんだんまっくらになってくる。
携帯をあかるくして、右上を見る。
圏外、と書いてあるけど、ちいさな太陽には十分。
すぐ電気がきれないように仄あかりに設定して、画面を前にして歩いていく。
冷たいつめたいあかりが、わたしを助けてくれるように。
たどり着いたホームはぼろぼろで、あちこちが悲しい声でささやいている。
こんな場所にこんな地球じゃ、もうわたしにしかとどかないんだろうな。
もうすぐ凍てついてしまうここにいるわたしは、そのうち誰にもとどかなくなる。
なんて思っても、変わることのないみらいと命だ。
のどの渇きに気づいて、お気に入りのリュックから水筒を取りだす。
水筒といっても、500mlの少ないやつだ。
いっぱいに水道水が入っているけど、これを飲んでもながくはもたない。
たぶんここからでたらもっと危ないだろうし、水を外でさがすことはできなさそうだ。
柱の前に座りこむ。
小さくすこしずつ水を飲んだら、疲れてねむくなってきた。
携帯のひかり以外は全部が暗闇のこの場所だから、目をつぶればすぐ寝られるんだろうな。
天井を見たら、外のこと、笑っていた星のことを思い出した。
あのうさぎが飛び跳ねている星はわたしたちをゆるしてくれなかったのかな。
だって、いつもへらへらと星たちと笑いながらぽつんと浮いていた星だ、って。
雲にかくれたっていつもそこで笑い合っていたのに、終わりの雲におおわれていなくなってしまった。
そらの奥では小さい星でも、わたしからすれば大きい星。
星、星、星。
落っこちてきた星空も、うさぎの笑ったあの星も。
結局はわたしたちがこわれる要因になってしまったみたい。
しずかに目をつぶって、わたしは眠りのせかいに落ちていった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!