💜「長かったな」
💙「うん」
翔太の手を握る。
翔太の目には再び涙が浮かんでいる。
苦節20年を超えた。
まだ何も知らなかった幼い子供時代から数えて、たくさん苦労をして、俺たちは経験を重ねてきた。
今回の公演はまた新たな挑戦になる。
今は追い風。でも当てにはならない。いつだって逆風は吹きかねない。現実の景色は当たり前じゃない。みんながそう思えていることが、俺たちの一番の強みだ。
6人時代を経て、いやその前の8人時代を経て、今夜、俺たちは9人で国立に立つ。
初日の昨日は目黒が泣き出したと同時に、みんなの涙腺が次々に崩壊した。
個人的には、阿部ちゃんが泣くのを久しぶりに見た。
俺も涙こそ流さなかったが、同じ気持ちで、霞む視界の中、頼もしい仲間たちを見ていた。今日は昨日よりもさらにブラッシュアップしたものを見せたい。立ち止まることなく、進化していくのが俺たちのモットーだから。
まばゆいライト。
打ち上げられた色とりどりの花火。
観客席からは惜しみない拍手。うねるような歓声。
その全てがただ温かく、有り難かった。
目の前のすべての人たちが愛おしい仲間たちだ。
💜「翔太」
💙「ふっか…」
俺は、翔太の頬に手をあてて、そっと唇を重ねた。言葉にしなくても伝わる想いはある。それに、お互いの熱が唇からも伝わった。
薄暗いステージの待機場所。他に人影はない。楽屋にはみんながいて、これからの準備にそれぞれ余念がないだろう。数時間後にはこの上でまたかけがえのない最高の時間を楽しむんだ。
愛しい恋人の手を引いて、俺たちはみんなのいる場所へと戻った。
おわり。
コメント
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行ってきまぁす!!!(*^▽^*)