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すごく大好きです。これからが気になります。
放課後の音楽室には、誰もいない静けさと、ほんの少しの夕焼けが差し込んでいた。
遼はピアノの前に座り、目を閉じて静かに指を置く。すると、鍵盤から優しくも切ない旋律が流れ出す。
その音を聞きながら、ドアの隙間からこっそり覗いていた陽斗は、思わず足を止めた。
(…なんだ、この感じ。胸の奥が、ざわざわする)
次の日、陽斗は思い切って遼に声をかけた。
「昨日、音楽室でピアノ弾いてたよな? すげー、よかった。」
遼は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに目を逸らし、ぼそっと呟いた。
「……あんまり、見ないでくれると助かる。」
「なんで? もっと聞きたいって思っただけなのに。」
遼はそれ以上何も言わず、早足でその場を離れてしまう。
だがその日から、陽斗は毎日のように音楽室に足を運ぶようになった。
「ピアノのこと、教えてくれよ。」
「……なんで、そんなに俺に関わろうとするんだ?」
「なんでだろな……お前の音、すげー綺麗で、俺、もっとお前のこと知りたくなったんだ。」
遼は初めて、少しだけ微笑んだ。