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#独占欲
#ダークファンタジー
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ふと、
伊藤さんが言っていた事を思い出し
食後のカモミールティーを飲みながら
それとなくリュカに聞いてみた
「そういえば……」
「購買部って何かあったんですか?」
「ん~?……ああ、」
大して興味も無さそうに
大した事でもなさそうに
あっけらかんとリュカは答えた
「不正の嫌疑の件ね……」
「一部については明らかになりつつあるみたい。全体的にはまだ疑いの段階で継続中」
「瑠奈もコンプライアンスの研修受けただろ?」
「駄目なものは駄目でしっかりと線引きしないといけないから」
「特に購買や経理は取引やお金に直接的に係わるから重点的な監視対象になっていてね」
「以前はこの位……とか慣習的な意識で曖昧なのは無くさないと」
やはりそういう事だったんだ
伊藤さんが言っていた通りだった
「まだ俺もよくわからん。最終的な報告上がって来てないからね」
「……何かあった?」
私の目を
じっと見つめるリュカ
この目は怖い
私の思考を
まるで見透かした様な目
「い、いえ……ちょっと噂話を小耳に挟んだので」
「……ふーん、そっか」
何か言いたげな素振りだったが
それ以上リュカは突っ込んで聞いて来なかった
***
休日出勤のお昼時
社員はおらず
外部からの電話も鳴らない
何者にも追われず
何からも圧迫されない
優雅なランチを少し長めに満喫し
オフィスに戻り再び別れる
特にどうと言った話は無くとも
心の充足感は十二分に満たされた
何にも代えがたい
何よりの燃料チャージになった
十日前後で出るDNA検査の結果に怯えながら
十日間続く張り詰めた期間の長さに震える
その間は
きっと
心穏やかではないだろう
来たる鑑定結果の日は
人生の岐路
運命の分かれ道になるのは必至
それまでは
悶々とした日々を過ごし
それからは
激動の日々になると確定している
そして
それは
鬼が出るか蛇が出るか
結果がどう転ぼうとも
いばらの道だと確定している
***
「おはようございます……」
いつも元気な伊藤さんでも
月曜の朝はテンションが低い
目が開ききっておらず
目が座っている
最低限の挨拶だけ済ませ
無言でコーヒーを淹れている
私も似たようなものだが
ここ最近は体調不良が上回る
その不快さに
逆に目だけは冴える
今週は
私にとっては
運命分け目の一週間
気が気でない
それも
不快の元凶の一つだ
週頭の営業本部との定期ミーティング
伊藤さんとの営業戦略室の定期ミーティング
休日出勤を重ねた甲斐もあり
自身の体調とは裏腹に
仕事は円滑に進捗する
伊藤さんをサポートする余裕も生まれ
仕事も定時には片付いた
ここのところは
帰宅も普段より遅くなり気味だった
早めに仕事を切り上げ
久しぶりに定時退社する
自宅までの帰路にあるスーパーで
余裕をもって買い物するも
体調も優れず
どうせ食べて貰えない料理の食材選びに
気分も乗らない
早々にスーパーを後にして
さっさと料理を済ませてしまおうと
久しぶりに早い帰宅をする
ガチャッ
「……」
ドアノブを回し
ドアを開け
その違和感に気付く
(……居る)
いつも帰りが遅い夫が
こんな時間に帰宅している事など
太陽が西から昇る位あり得ない
——と、
更なる違和感に気付く
見慣れない靴がある
(……誰か居る)
夫が
自宅に誰かを招いた事など
これまで一度も無かった
こんな時間に自宅に居る夫と
夫婦以外立ち入る事も無かった自宅にある
夫婦以外の誰かの存在
そして
その見慣れない靴は
女性用のものだった
急激に鼓動が早くなる
訪れる可能性のある女性など——
私には一人しか心当たりが無かった
既に開けてしまった扉
その物音に
私が帰宅した事は解っている事だろう
ここで扉を締め
逃げ出してはあまりに不審だ
もう後戻りは出来ない
その間の数秒で
腹を決め
出来るだけ普通の素振りで
私は
違和感漂う自宅へと
足を踏み入れた